第5話『※警告:レイドボス~ヘビー・アンカー~』
「虫なんかは切りつければ余裕だな」
「この残骸売れるっすねぇこりゃ!もっと倒していいっすよ!」
「とは言え自爆してくる奴いるんだよなぁ、お前だよ死ねクソ蝿!」
ヒトトツモリに入った二人は、押し寄せる虫の応酬を片っ端から切り殺していた。と言ってもほぼイチカが切っているのだが。ドロップ品はリナがバッグに詰め込み、イチカは切りまくる。
「うーんこりゃ楽しいね」
「ちなみにスライムの装備はコアを改造する事で色々変えられるっすよ」
「へー。ちなみにそのアイテムは」
「ほらあっちいっぱい魔物いるっすよ!」
装備に関して色々聞きたかったが、すべて無視されすっとぼけられる。そして奥へ奥へと進んでいくが、ここでリナはあることに気が付く。
「……なんか、プレイヤーいないっすね」
「どういうことだ?」
「いや、普段は他のプレイヤーに出会うことが多いんすけど……。なんか一人もいないんすよね」
「はぁ。それは……どういうことだ?」
と、そういった瞬間。二人のメニュー画面に、けたたましい音と共に警告メッセージが書き記されていく。互いにメニュー画面を出し、一体何がどうなっているのかを確認する。
『:レイドボス襲来:レイドボス襲来:参加メンバー8人』
「なっ、レイドボス……!?嘘っすよね!?こんなところにいる訳無いっすよね!?」
「レイドボス?なんだそりゃ?」
「あー、一言で言うなら……クソヤバいっす」
二人が顔を見合わせた瞬間、木々をなぎ倒しながら巨大なカマキリの化け物が突っ込んでくる。既に三人程プレイヤーがゴミクズのようにポリゴン化しており、明らかにヤバいと一目で理解できる。
「逃げるっすよぉ!」
「よし抱きかかえるからな!」
流石にここで戦うのは不利、と言うか勝ち目が無いと判断したのか、イチカはリナを抱きかかえ全速力で逃走する。逃走しながら一応名前とレベルを確認。
『ヘビー・アンカー:レベル80』
「……」
ちなみに、現在イチカのレベルは20、リナのレベルは15である。
「食らえカマキリ!」
と、ここで一人のプレイヤーがヘビー・アンカーに攻撃を仕掛ける。だがその攻撃は宙を切り、胴を噛み千切られる。何をしたかと言われれば、頭を少し下げそのまま嚙みついただけ。
だが。それだけでも理解できる。このレイドボスがどれだけヤバいのかは。何せ避ける瞬間も、嚙みついた瞬間も見えなかったのだから。
「あー駄目だこれ」
「このまま逃げ切れば大丈夫……っすよね?」
と、二人が町まで逃げるか考えたところで、嫌な表示が出現する。
『レイドボス撃破報酬:ヘビー・アンカーレベル3装備獲得。
レイドボス死亡ペナルティ:レベル10ダウン』
「……おいなんか出てきたぞ」
レイドボス。それは強制的に戦闘をさせた挙句、撃破出来なければペナルティがあると言うふざけた物。その分報酬は旨いのだが。今回のペナルティはリナに対してあまりにも大きなペナルティである。
「う、ウチがレベル10下がるのは……非常に不味いっす」
「なんでだ?」
「今背負ってるバッグ……。これにはレベル制限があるっす。……今のレベルでギリギリ、レベリングも商人は厳しいんっす」
「成程」
それを聞いた瞬間、リナを逃がしつつイチカは立ち止まる。あくまで無差別にプレイヤーを襲っているのだろうが、目の前に立ち止まった奴がいればそれを狙うだろう。
「走れ!」
「いや、イチカは」
「俺か?……何とかしてみるさ」
イチカはファインディングポーズをとる。そんなイチカのファインディングポーズを真似るように、ヘビー・アンカーもまた、ファインディングポーズをとるのであった。
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