第4話『リスちゃんっすよ!』


「俺は種族魔物の、スライムです」


「了解しました。……私は偏見はありませんが、なるべく種族は表に出さない方がよろしいかと」


「あっはい」


イチカが選択したのは魔物、それもスライムである。種族特徴は大きく分けて三つ。


一つは『ダメージ軽減』。スライムの体には斬撃も打撃も効きにくい。

一つは『形状変化』。普段は人間だが、スライムのように液体になれる。

一つは『再生能力』。回復アイテムいらずだが、死ぬときは死ぬ。


中々強い魔物であるが、デメリットも多少なりともある。大きく分けると二つ。


一つは『氷雷弱点:強』。氷、雷系の魔法、攻撃に異常に弱くなる。

一つは『一部装備不可』。液体の体には、付けられない装備がある。


これが大きなデメリットである。そして何より、NPCからかなり冷たい態度を取られる。取られるだけならまだしも、実害もあるのでお勧めされていない。


「魔物相手に売る装備なんかねぇよ!帰れ!」


「うーん……。追い出されてしまった」


とにかくNPCがひたすら嫌悪感を出して、かなりひどい対応をしてくるのだ。とは言え、一部NPCはさほど嫌悪感は無いようだが。先ほどの神父や、あの何でも教えてくれるおっさんなどは偏見が無いため普通に接してくれる。


「とは言え装備が買えないのはなぁ」


しかし普通のNPCからは嫌われているので、まともにアイテムも装備も買えないのだ。これはかなりの痛手である。さてどうするかと考えていると、考えているとイチカに話しかけてくるプレイヤーが一人。


「どうしたんっすかそんなシケた面なんかして!ってなんかヌメってしたっすね今」


「うおっなんだ!?」


「あー。もしかして初手魔物選んじゃった初心者っすか?……ちょいお高めっすけど、こっちで工面するっすよ?」


「えっ何?誰?どういう事?」


「あ、自己紹介忘れてたっすね!ウチは『リナ』っすよ!商人やってるっす!まぁよろしくっすよ!」


このプレイヤーの名前は『リナ』。種族リスの獣人で、現在商人をやっている。初心者などが多いこの町で主に商いをしており、ちょっとぼったくりしたり色々している。


「まーと言っても?お金持ってないっすよねぶっちゃけ」


「……はい」


「っすよねぇ!と言う訳でウチと共に素材を集めに行くっすよ!そしたらタダっすタダ」


「うーん、確かに俺からすれば願ったり叶ったりだが……」


少し考え、まともな装備が無ければ、どうしようもないと判断したイチカ。仕方なしにともに素材を集めに行く事になった。今回集めに行く場所は『ヒトトツモリ』、森らしく植物系の魔物が多い場所である。


「ちな自分バッグはデカいんで、いくら倒しても大丈夫っすよ?」


「そ、そうか……。武器は?」


「スライムっすよね?大体分かると思うっすよ自分の武器が」


哲学かな?と考えながら、イチカとリナの二人はヒトトツモリへ向かう。道中でスライムと言う種族がどういう奴なのかを教えてもらいながら、何とかかんとか頑張っていた。


「成程、全身武器か」


「っす!スライムは自分で刃のように体を変形させることが出来るんすで、ぶっちゃけ武器はいらないっすよ。防具はともかく」


「確かに。使いこなせれば凄い強い種族だな。……ところでそのデカいバッグは何?」


スライムの体を利用し、自分の体を刃の形に変形し固定することで、どこからでも武器を作り攻撃が可能と言う事なのだ。……ただし、固定している場所は壊れやすく、壊れるとしばらくHPそのものが減る。


「一応自分の体を弾丸にしてぶっ放す攻撃も考えたんだけど……。どう思う?」


「いいんじゃないっすか?そういうのは自由っすよ自由!考えようっす!」


「だな!よーしヒトトツモリまでもうすぐだ!」


そんな訳で、元気よく歩を進める二人。だが二人は知らなかった。この時期ヒトトツモリにはクソ厄介なレイドボスが出現していることを。

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