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第23話 暴れん坊カイザー
アイシラ、タカキ、そしてベラドンナ。
三人が追いついた時、大（おお）立（た）ち回（まわ）りはすでに始まっていた。
カール二世陛下が舞台に選んだのは、屋敷の玄関ホール。
この国の頂点に立つ皇帝を前にしながら、ゴロツキたちは粗末（そまつ）な刃物（ナイフ）をむけて二重三重に取り囲んでいた。
豪華なシャンデリアが皇帝の剣を輝かせる。
キラッとまぶしく光ったかと思った瞬間、彼の剣技が炸裂した。
《みねうち》！
ビシィッ！
サムライソードを前後ひっくり返した一撃が、一人のゴロツキを打ちのめした。
打たれたゴロツキはうめき声をあげながらその場で気絶する。消滅しないということは、ちゃんと生きているということだ。
上様……もとい皇帝陛下は休まず次の敵に接敵する。
やはり一撃のもとにゴロツキは倒される。
《みねうち》！《みねうち》！《みねうち》！
皇帝のいきおいは止まらない。
またたく間に五人。全員戦闘不能ながら生存している。
とてつもない実力差がないとできない芸当（げいとう）だ。
「や、野郎！」
今度はゴロツキたちが先に行動する。
だがしかし。
《カウンター》！
バシッ！
むかってくる男よりも速く、脳天（のうてん）への一撃が決まる。
敵のターンなのに一人倒してしまった。
「ひ、ひるむなお前たち、かかれ、かかれえ！」
悪の親玉・エドムンが大声でわめき散らし、男たちは一斉におそいかかる。
だが全員仲良く悲惨（ひさん）なことになった。
《みねうち》！《みねうち》！《カウンター》！《みねうち》！《カウンター》！《みねうち》！《みねうち》！《みねうち》！《カウンター》！《みねうち》！
《カウンター》！《カウンター》！《みねうち》！《みねうち》！《カウンター》！
四方八方からおそいかかった男たちは、まったく同じように四方八方へとブッ飛ばされていく。
皇帝の身にはかすり傷のひとつすらない。
「うわあ……」
入り口に立っていたタカキは将軍……ではなく皇帝の暴れん坊ぶりを見て、ぼう然とつぶやいた。
むかって行った男たちは一人残らず失神（しっしん）している。
死んでいれば死屍（しし）累々（るいるい）という印象だが、全員生きているこの状況はなんと表現するべきなのか。
同じくぼう然としていたベラドンナはアイシラを軽く横（よこ）肘（ひじ）でつっついた。
「ねえ、あれ助ける必要ある……？」
「ないわね……。まあご褒美（ほうび）もらうためだから……」
アイシラはそう言うと買ったばかりの槍を上下逆に構（かま）え、後ろから敵集団に忍びよる。
「ええーい☆」
しらじらしいかけ声を出しながら柄（え）の部分で敵の後頭部をブッ叩く。
せっかくだから皇帝陛下の『不殺（ころさず）の流儀（りゅうぎ）』にあわせてみようと思う。
さいわいザコ敵なのでアイシラでも可能なようだ。
「はー。なんだかなもう」
タカキも姉の気持ちを察（さっ）してくれたようで、ボデイブローやローキックといった死なない技を使って男たちを制圧していく。
皇帝一人でさえ手に負えないというのにさらに相手が三人増えて、いよいよ敵は数を減らしていった。
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