第2話 渡る世間は鬼畜ばかり
「……っていうわけでさ~、マジひどくなーい?」
愛は自分の部屋でレトロRPGゲームのプレイ実況配信をしていた。
ちなみに
いわゆる「支援」をもらったことは一度もない。
初めのころこそ
こんなんだったら配信をする意味など無いようなものだがそこはそれ。
引きこもりにとって貴重なコミュニケーションの場なのである。
ゲーム配信というのは良くも悪くも配信者が主役だ。
愛にとって自分が主役になれる世界でたった一つの場なのである。
「たった一ヵ月で家出るとか出来るわけないじゃんねー?
金どうすんの!
世間知らずの愛は、家賃だけ払えばアパートに住めると思いこんでいる。
実際には数倍の初期費用がかかるのだが。
「みなさんちょっと意見くださぁい!
ウチの家族ひどくないですかぁ!?」
ピロン。
視聴者様たちからありがたいチャットが送られてきた。
――ざまあwww
――バッドエンド乙wwwwwwwwww
――卒業おめでとう!
――出て行けと言われてからが本番。まだ甘い。
――↑上級者さんこんばんわ
――8050問題までまだ半分、ファイト!
――……働けば解決する問題ですよね?(真顔)
「あ”あ”あ”あ”ッ!
ちょっとくらい味方してよぉぉ!」
――
「行かないよ! さらっと自○すすめんなし!」
――www
――アイちゃんの悲鳴いつ聞いても
「いやああああここ鬼畜しかいねえええっ!!」
愛がギャーギャー
視聴者からの反応がもらえて実はうれしいので、愛はさらに騒ぐ。
結果として常連になったのが今ここにいる視聴者たちだ。
鬼畜しかいないと言うが、鬼畜を育てたのは配信者本人だった。
「ううう……現実がクソゲーすぎる……」
愛は文句を言いながらゲームをやり続けていた。
超有名RPGのシリーズ第一作だ。
ポチポチボタンを押すとキャラが勝手に動いて武器を振り、バサバサとザコ敵を消滅させていく。
なんて簡単な。
現実もこれくらい簡単だったらいいのに。
どうして人生にはリセットボタンが無いのだ。
電源ボタンはあるのに。
「あー、ゲーム世界に転生したい。
アホみたいなこと言うけどさー、今のあたしには現実
しょうもないことを言っていると、
ピロン。
――かわいそう。
――ねえ本当にゲーム世界に逃避したい?
「えっ、したいしたい。マジでしたい!」
――いいよ。ただしゲームオーバーになったら終わりね。
「え、なになにそれどういう……」
セリフを言い終えるよりもはやく、愛は意識を失った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
テテテテテテテテ、テテテテテテテテ♪
パーパーパーパーパー、パーパー、パーパーパーパーパーア♪
デーデデデデーデーデッデデー♪
古臭いゲーム音楽が聞こえる。
配信していたレトロゲームのオープニング曲だ。
――アイちゃんだから、アイシラでいいよね?
そんな声を聞いたような気がした。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「あ……、あたし……?」
愛が意識を取り戻す。
彼女はなぜか木の上で目覚めた。
根っからの引きこもりである愛が、木の上で昼寝?
そんなバカな。
奇妙にもほどがある状況だったが、それが事実だった。
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