第12話 1-3-3 「用心しろよ」

1-3-3 「用心しろよ」 耳より近く感じたい



ーー放課後


 佐藤が片山に聞く。


「成斗ー、お前帰りどうすんの?」


「兄貴に迎えに来てもらう。

 メガネも買わないとだし、このままじゃ帰れないし。

 啓太、悪いけど校門まで送って」


「了解」


 梶と音波の横を通り、じゃあねーと手を振る佐藤と片山が出ていく。



 見送った梶が、音波のほうに向き直って言う。


「片山の兄貴、見てみたくない?」


「えええ?」


「片山のお兄さんだよ?イケメンかもじゃん。

 逆に真面目だったりして」


 そう言いながら、音波と腕を組んで教室を出ていく。



 靴を履き替え、校門に向かう音波と梶。


 校門の道路を挟んだ反対側にバイクが止まる。


 片山の兄だろう、ヘルメットをしたまま、手を振って合図をしている。



「あ、あの人かな?」


 梶は音波を置いて、先に走っていく。



 片山が受け取ったヘルメットを被り、バイクの後ろにまたがる。


 一緒に待っていた佐藤に手を挙げ、バイクは出発してしまった。


 走っていった梶は、間に合わなかった。



「くぅー、見損ねたか」


 梶の呟きに、佐藤はハハーンとした顔で言う。


「なに、成斗の兄貴を拝みに来たのかよ」


「うーん、そう」


「どんだけ顔好きかよw

 …、せいぜい俺くらいにしとけば?」


「えー、…ナニそれ//」



 歩いてきた音波が二人に合流する。


「大きなバイクだったね」


 音波の言葉に、二人は目を合わせ、そして笑った。


「音波って、マイペースだよね」


「そうなのかなぁ」


 佐藤が言う


「そのうち"会える"って」



 音波は思った。


(そのうち?会っても話すことないけどな…)



ーー

 バイクを駐輪場に停めた後、片山と兄はマンションのエントランスホールに向かう。



 兄の問いに片山は答える。


「高校生活は、どうだ?大丈夫か?」


「うん、何とかやれてる」


「”状態”、落ち着いてるか?」


「あー、今んとこ大丈夫」


「そうか、なら良かった

 だけど、用心しろよ?」


「…うん、分かってる」



 エレベーターに乗り、5階のボタンを押す。



 片山はポツリと言う。


「昼に…、サンドイッチ食べた」


「?そうか」


「…ん」



(音波の手作りの…サンドイッチ

 兄さんには言わないでおこう…

 心配させるから…)



 二人はエレベーターを降りた。

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