第5話 1-1-4 「なんで知ってるの?」
1-1-4 「なんで知ってるの?」 耳より近く感じたい
高校生活一週間が過ぎて、クラスの女子たちとは大体話すようになった音波だが、男子とは、まだあまり話せていない…
今日最後の授業は担任、科目は総合。
内容は決まっていない。
「えー、お前たちが入学して一週間が過ぎた。
仲良しグループもチラホラ出来てきたんじゃないかとは思うが、まだ話したことない奴もいるだろう。
そこで、男女で話すゲームをする」
「えーっ何それー」
「今から配る紙に、氏名、好きな科目、好きなもの、の3つを書いて、話すときに相手と交換する。
女子はそのままで男子が移動する。
話す時間は一人3分。
さー書け」
音波は焦った。
18人の男子と一気に話すことになるとは思いもしなかったからだ。
(先生を恨んでやる)
とりあえず名前と科目と好きなものを書いて…横線で消して犬と書いた。
ぎこちないながらもなんとか男子と会話していく。
殆どがお互いの名前のことで時間切れになる。
だが一人3分は、音波にとっては長すぎる。
音波の前に、後ろの髪の毛が跳ねている、あのメガネ男子が座った。
ぶっきらぼうに自分の紙を音波に差し出す。
音波も慌てて紙を差し出す。
(…
「よーし、じゃ計るぞーはじめ」
「…オトハ?」
「!」
今まで話した男子は、「名字をなんと読むのか」しか言わなかったが、片山には名前のほうを呼ばれたので驚いた。
「音のウェーブ、…良い名前」
パァーッと笑顔になる音波。
「ありがとう///」
父親が名付けた名前を初めてまともに会話する相手に褒められて、嬉しいのと恥ずかしいので、音波の顔が赤くなる。
「…、男と話すの苦手?」
「えっ?何で?」
「入学式ん時に変な声で返事してたから」
(あー、あの時確かに裏返った声で返事したかも…)
「あ、そそんなことないよ」
「…、あっそ。
俺は“女…苦手”」
…暫しの沈黙
音波の頭の中は、早く3分終わって欲しい気持ちで俯いてしまった。
「ふーん、コアなやつ聴くんだ」
突然片山が放った言葉にドキリとする。
ガバッと頭をあげ片山を見つめる。
「どうして分かったの?消したのに。
ていうか、何で知ってるの?」
音波は、驚きながらも同類をやっと見つけたかもしれないという淡い期待で、無意識に笑顔になり、片山を見つめる。
一方、
片山のほうはというと、自分に向けられる音波のキラキラした瞳にドキリとしながらも、違和感を覚えた。
「!」
(なんだろう、なんか知ってるこの目、懐かしい?思い出せない…
何処かで会ったことあるのか?)
片山は頭を左右に振る。
この仕草を見た音波は、自分が一気にまくしたてたせいで、片山にドン引きされてしまったと思った。
「ごごめんねいきなり話して。
あ、そうだ片山くん好きなもの塗りつぶしてるけど何て書いてたの?」
意識が教室に戻ってきた片山は答える。
「あー、もう時間」
片山が席を立ちながら、自分の紙を音波の手からぶっきらぼうに奪い取る。
そして身をかがめ、音波の耳元でボソリと言う。
「気負わなければ普通に話せてる」
「あ…///」
「別に焦んなくていいんじゃない?」
ここで時間切れ。
ーコアなやつ聴くんだー
(って、片山くんは言ってたけど…。
DOSE.(ドース)のこと知ってるんだ。
片山くんも聴くのかな?
…もう少し話したかったな…)
そう音波は思った。
この日から、音波にとって片山は、少し気になる存在になった。
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