第2話 数の暴力で倒せ!!

「うぃっす、アニキ。何かやることあるッスか?」


 成体のバニモンが話しかけてきた。


 やけになれなれしいな。


 こいつは敵じゃないのか?


 ちょっと質問してみよう。


「なんで俺がアニキなんだ?」


「アニキはアニキッス。理由はよく分からないッス」


 なんだそれは!?

 意味が分からんな!


 まあ、あっちも分かっていないようだけどな。


「ニンジヤ、これはどういうことなんだ?」


「拙者にも分からないでゴザル」


「アニキ~、何かやることないッスか? 暇ッスよ!」


「ええと、そうだなぁ……」


 こいつはどうすれば良いんだろう?


「ウメノ! 周辺のバニモンの幼体たちが生まれそうでゴザル!?」


「な、なんだって!?」


 バニモンたちがいっせいに土の中から出て来た。


 最初のバニモンと同じ姿のヤツが三人。


 身長一四〇センチくらい、赤いジャージの上下を着ている、釘バットを二刀流している金髪の美女が七人。


 身長一三〇センチくらい、ボサボサの長い黒髪、眼鏡に白衣を身に着けた博士みたいな美女がひとりいる。


 マズい!?

 バニモンたちに囲まれてしまったぞ!?


 どうやら俺の人生はここまでみたいだな。


 ああ、来世は良い人生を送りたいなぁ。


 神様お願いしますよ!

 期待してますからね!!


「アニキ、暇ッス!」

「アニキ、何か命令してくだせぇ!」

「アニキ、命令~」


 力士とジャージのヤツらが、いっせいに指示を仰いできた。


 どうやら俺に攻撃する気はないようだ。


 命拾いしたみたいだな。

 あ~、良かった。


「アニキ、アニキ、早くしてくだせぇよ!」


「そんなことを言われても、どうすれば良いんだよ!?」


 こいつらは指示待ち人間なのか!?


 いや、バニモンだから指示待ちバニモンか!


 主体性に欠けるなぁ。

 そういうのは良くないぞ!



「お困りのようですね!」


 博士のようなバニモンが話しかけてきた。


「ああ、確かにお困りだな」


「ここは私におまかせください! ちょっと失礼! ふむ、なるほど……」


 博士のようなバニモンが俺をジロジロと見てきた。


 こいつは何をしているのだろうか?


「どうやらアニキには特殊な能力がふたつあるようですね!」


「えっ!? それはどういうことなんだ!?」


「私には『他者が持っている特殊な能力が分かる能力』があるのです!」


「そいつはすごいな! それで俺にはどんな能力があるんだ!?」


「ひとつ目は通訳能力ですね!」


「それはどんな能力なんだ?」


「アニキの周辺にいるだけで、どの言語であろうと自動的に通訳され、言葉が通じるようになります」


「ナニソレ!? 便利すぎる!?」


 これのおかげでニンジヤと会話できていたのか。


「さらに文字の翻訳もできます」


「すごすぎぃっ!!」


「ただ、この能力で通訳されると、おかしな語尾が付きます」


「ええっ!? なんだそれは!?」


 あっ、そういえば、ニンジヤに『ゴザル』という語尾が付いていたな。


 あれは能力のせいだったのか!?


 まあ、どうでもいいことだな!


 実害はまったくないし。



「ふたつ目は『首から下の部分が土に埋まっていると、周辺で栽培されているバニモンが生まれた後に味方になってくれる能力』です!」


「なんじゃそりゃぁっ!? 訳が分からなさすぎるだろ!?」


「この能力は名前通りですね! 私たちが味方になったのは、この能力のおかげです!」


「そうだったのか」


 こいつらは味方だったのか。


 そいつはうれしいな!



「ウメノ、その能力があればエントゥリィ・シィトゥを倒せるかもしれないでゴザル!」


「えっ!? そんなことができるのか!?」


「味方を大量に増やせば、数の暴力で押し切れるでゴザル!!」


「ひどいやり方だな!?」


「これは戦争でゴザル! 甘い考えは捨てた方が良いでゴザル!!」


「そうだな! よし、俺も覚悟を決めよう!! それでまずは何をすれば良いんだ?」


「バニモンを生み出す種があるでゴザル。まずはそれを手に入れるでゴザル!」


「なるほど、それで味方を増やすんだな!」


「そうでゴザル!」


「よし、やるぞ!! では、みんな種を探してくるんだ……」


「アニキ、ちょっと待ってください!」


 博士のようなバニモンに止められた。


「どうしたんだ?」


「アニキのふたつ目の能力には、まだ続きがあるんです。バニモンの幼体はアニキの近くに植えられているほど強力に育つんです」


「な、なんだって!?」


 それだとジャージより、力士の方が強いということになるのか。


「ですから、アニキか幼体を移動させると良いですよ」


「なるほど、それなら穴を掘る道具や人員があった方が良いな。それらも用意しないとな」



「それとアニキには食料が必要なのではないですか?」


「確かに必要だ。そちらにも人手を割く必要があるな。バニモンにも必要なのではないか?」


「必要ですね」


「なら、なんとか用意しないとな」


「そうですね。それとアニキの防衛も必要ですよ」


「確かにそうだな」


 土に埋まっていると戦えないからな。


 戦いたくもないしな。



「ウメノ、拙者も手伝うでゴザル! といっても、偵察くらいしかできないでゴザルが……」


「いや、それだけでも助かるよ。そういえば、他の幽霊はいないのか?」


「いるかもしれないでゴザル。もし、見つけたら勧誘してくるでゴザル」


「あ、ああ、頼むよ」


 ちょっと怖いけどな……


「それから、今思い出したことがあるでゴザル」


「えっ? 何を?」


「成体のバニモンに黄色い液体を飲ませた後、もう一度土に埋めると、より強力なバニモンに進化するでゴワス」


「な、なんだそれは!? そんなものがあるのか!?」


「その液体も探した方が良いでゴザル」


「そうだな。探してみよう!」



「アニキ~、ずっと土に埋まったままだと、体がなまるんじゃないッスか?」


 力士のバニモンに指摘された。


「確かにその通りだな」


「適度に運動した方が良いッスよ」


「ああ、分かったよ」



 それにしても、やることが多くなってきたな。


 ちょっと混乱してきたぞ。


 いったん整理するとしようか。



 俺たちの目的は、敵の親玉エントゥリィ・シィトゥを倒すこと。


 そのためにやるべきことは……


 周辺探索をして、バニモンの種、黄色い液体、食料、その他役に立ちそうな道具を探して持ち帰る。


 敵のバニモンを見つけた場合はどうしようか?


 戦うなり、避けるなり、臨機応変に対応すれば良いか。


 拠点もあった方が良いよな。


 安全な場所を見つけて、そこに作ろう。


 拠点で、バニモンや食料の畑を作ったり、道具を作ったりしないとな。


 後は防衛用の戦力も必要だな。


 ニンジヤに偵察と幽霊勧誘も頼まないとな。


 俺自身も土に埋まったり、運動不足を解消したりしないといけないな。


 こんな感じかな?


 忙しくなりそうだ。


 やっていけるのか?


 いや、弱気になっていかんな!!


 必ずやり遂げてみせるぞ!!!

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