第2話 道端のシマウマ


 僕は道端を歩いていた。

 家に帰る途中だ。でも、ここからだと家は遠い。

 それに、道順も自信がない。遠い場所まで来てしまったから。


 沢山の人間がいる。


 でも、どうしてだろう?

 僕が歩くと、皆が避けるんだ。いつもは近づいてくるのに。


 だから、一番近くの人の方に駆け足で行って、鼻を近づけて質問をしてみる。


「どうして逃げるんですか? ちょっと道順を訊きたくて」


 僕が訊いた人は腰を抜かして、驚いた表情で口を震わせている。


 どうした驚くの?

 僕はこの人の驚く理由が全く分からない。


「ねぇ――」


 と言い掛けた時、大きな笛がピーッと鳴った。


「動物園から逃げたシマウマだ! 人を襲ってるぞ。捕まえろー!」


 青服の人たちが網を持って走ってくる。

 怖い顔をしてるから、僕は怖くなって勢い良く走り出した。


 僕は速い。

 青服の人が小さくなる。

 でも、僕はパカパカと足を鳴らせてまだ走る。


 今から家に帰るんだ。

 早くあの草原を走りたい。

 ここは地面が熱いし固くて嫌になる。

 それに、僕の生活を人間たちがずっと見ていて気持ちが悪い。

 家に帰ったら、人間がいないから、仲間と一緒に沢山走るんだ。

 だって、僕はシマウマだから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る