幕間 その四
麗(うらら)の献立(クリーチャー紹介 その四)
◆
☆読者のみんな、ここまで読んでくれてあんがとね。
大女の
「お前もう死んでるだろ」なんて
ここはこれまでに登場したクリーチャーを解説するコーナーだよ。
今から言う内容をぜ~んぶ憶えたら、立派なクリーチャー博士になれるんじゃないかい?
じゃ、あたしのお仲間紹介するからよ~く聞いとくれ。
※本項は作中設定の紹介です。
若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承ください。
本項で説明しているのは主に本作独自の設定です。
一般に
本項の情報は、作中の一九二〇年八月時点のものです。
◇ 〈幻魔のでき損ない〉 ◇
邪霊定着率が極僅かで活動が困難な幻魔。
非常に不安定な状態なので、戦力としては役立たず。
後述は第十章に登場した個体で詳細は不明。
熊女は〈ノフ゠ケー〉。
猿男は〈ヴーアミ族〉。
犬女は〈
象男は〈チャウグナー・フォーンの兄弟〉
蛇女は〈
鼠男は〈
☆あたしから言わせりゃ、ワルになり切れないヘタレどもだね。
見かけはトンデモだから、見世物としては上出来なんじゃないかい?
こんなヤツらは数多いからね。
あたしも食うには困らなかったよ。
◇ 〈ゴーツウッドのノーム〉 ◇
鉱物型の幻魔。
第十章では五歳児ほどの大きさをした
本来は夜間に行動できるらしいが、第十章に登場した個体は物理的活動を行なわなかった。
但し悲鳴らしきものを上げているので、全く動けない訳でもないらしい。
後述の〈ムンバの化木人〉とはマブダチの間柄だと判明し、幻魔同士であろうとも友情を
☆
まあ、あたしがミネラル補給にと食べちゃったんだけどさ。
ポテチチップスの焦げたトコみたいな味でそこそこ美味しかったんだけど、実はデトックス作用もあるみたいね。
なんでも、炭を食べるお猿さん(ザンジバルアカコロブス)ってのがいるらしいわ。
研究者が調べてみると、体内に溜まった毒素が炭に吸着されてる事が判ったんだって。
そんでそっちの世界線の話なんだけどさ。
〘焦げた物を食べると
この話ってホントなのかしらね?
もし炭が体内の毒素を吸着してくれて逆に癌が防げるとしたら……。
仮に癌という
いい機会だから読者のみんなも病院、製薬会社、保険会社、各国政府の癒着を調べてみるのも面白いんじゃないかしら。
例えば最近(二〇二〇年代)
うふふふふ……。
◇ 〈ムンバの
植物型の幻魔で、
幻魔として顕現した直後は
次第に移動、発声、その他行動も不可能になるが、
具体的な攻撃方法などは不明だが、移動や直接攻撃が不可能な事から魔術を扱う可能性が高い。
魔術結社の所持する
身体が樹木に変容する過程で精神も狂気に染まって行くが、本章で登場した個体はそこまで至っていない。
又、〈ゴーツウッドのノーム〉と心を通わせているなど悪に堕ち切れていない節も見受けられた。
作中で澄が〘なりかけ〙と呼んでいる事からも、前述の〈幻魔のでき損ない〉と同様の存在だろう。
親交のある〈ゴーツウッドのノーム〉を捕食した
先の事から、魔術師の仕組んだ儀式で幻魔と成り果てても、全ての者が従う訳ではないと証明した。
☆ムンバだかムバワだか知らないけどさ~、あたしの身体の仕組みをチクりやがって恨めしいったらありゃしない。
きっと、自分からアクションを起こせない奴が行動に難儀する幻魔に憑かれるんだろうよ。
じゃあ夜だけまともに動ける〈ゴーツウッドのノーム〉は、夜だけ元気な奴って事になるね。
読者のみんなも、暗い場所でこんな小説読むのはやめときな。
ネクラでボンクラな
◇ 〈
〈ショゴス〉との融合に成功した個体だが、〈ショゴス〉の能力の一部しか使用できない。
第十章に登場する
人間達を捕食する際に大幅な身体変容を行なったが、その状態で本格的な戦闘活動は無理らしい。
生体組織拡充にはそれ相応の材料が要るらしく、第十章では
巨大化の際に自重で潰れる事を防ぐ為、カーボンナノチューブ製の
炭素補給の為に〈ゴーツウッドのノーム〉を捕食しているが、物質界の存在ではない幻魔をどうやって栄養としているのかは解明されていない。
巨大化に際しては身体の冷却が必須。
そこで〈巨大
そうする事により、体内の熱を放出していたのである。
☆
「どこが節制してるんだ」なんて、身も
巨大化する為のご
実は、ご馳走の心持ちで味が違うんだよ。
気が動転してるやつは酸っぱい味。
悲しんでるやつはしょっぱい味。
絶望に浸ってるやつは甘い味。
怒り狂ってるやつは辛い味。
後悔してるやつは苦い味。
読者のみんなもお試しよ。
きっと新しい世界が開けるからさ……。
◆
☆あたしはこれからあの世に旅立つみたいだから、ひとつ
あたしの生まれ育った村は寒村でね。
だから、村に食い物が無くなった時は山に入って探したのさ。
でね、ある日食い物探しに山に入ったら、居たのさ。
不思議な生き物が。
それはどろどろしてて、姿形を常に変えてた。
眼だの鼻だの臓物だのに、絶えず変わってたんだ。
もちろん最初はびっくりしたさ。
けど、どろどろの様子を観ているうちに⦅とってもおいしそうだ⦆って思えてきたのよ。
姿形をどんなに変えようと肉には変わりないんだしね。
で、当然⦅食べよう⦆って事になった。
あん時は腹が空いてて餓死寸前だっからね。
我慢できずどろどろに向かってったよ。
すると面白い事が起こったんだ。
走るあたしに気付いたのか、どろどろが逃げたんだよ。
いいかい、鳥でも獣でも虫でも無い
興奮したね~。
必死でどろどろに追いつくと、無我夢中で
美味しかったね~。
甘くて辛くて苦くて酸っぱくて。
しょっぱい味もしたけど、それはきっとどろどろの目玉が流した涙だね。
で、完食したら村に戻ったんだ。
そして村のみんなを食った。
「なぜ村民を食ったのか」だって?
そりゃあ、腹が空いてたからに決まってるじゃないか。
腹が減って仕方がない――。
食えども食えども満たされぬ――。
その気持ちがわかるかい?
わかんないだろうね。
そのうち隣村のやつらに気付かれたみたいで、若い駐在(警官)がやって来た。
やった事を正直に白状すると、若い駐在はたいそう驚いてあたしを引っ張って行ったよ。
その後あたしは留置所っていうのかい?
ようはブタ箱さ。
そこに入れられたんだ。
⦅これであたしも死刑台行きか……⦆って思ったんだけど、なんでか釈放されて富士のお山にある建物に連れてかれたよ。
ご想像どおり、外法衆の研究所さね。
あたしは散々身体をいじくり回された
自分らの仲間になれ、って誘われたよ。
「食事ハ用意シマス。好キナダケ食ベテ下サイ」って言われたら、乗るしかないだろ?
そっからは夢幻座に入って食べ放題さ。
ま、伊藤ってやつにやっつけられたんだけどね。
死んじまった今となっては、もう少し節制しときゃよかった……なんて思うわきゃない。
きっと、あたしみたいに食い意地の張ったやつが
読者のみんなは、あたしみたいに暴飲暴食するんじゃないよ。
でないと、餓鬼地獄であたしと一緒にひもじい思いをする事になるからさ……。
◆
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