炸裂、◯◯チ! その七
一九二〇年六月二三日 帝都中久保町 夢幻座公演会場
◇
大
そして人間大砲を押し歩いているふたりを
『ラa六らA6ラa六らA6ラa六らA6』
『A6ラa六らA6ラa六らA6ラa六ら』
今は音波攻撃が炸裂している最中だ。
これ以上 澄に近付くと伊藤と宮森にもその効果が及んでしまう為、自分達の身を案じとある術式を発動する宮森。
「伊藤 君。
澄さんが音波兵装を使っているので、こっちが被害を
後、肉声での会話は出来なくなるから思念で頼むよ」
『はいはい。
おー、周りの音が聞こえなくなった……』
『……良し。
これで澄さんに近付ける』
『それにしてもなんて振動だ。
宮森さんに音響
自身と伊藤の肉体を守る為に宮森が施した術式。
それは
澄が放つ周波数とは
この術式は、
過去の経験を今に活かす。
これが彼の強さを支える
伊藤と宮森は、人間大砲を
『お待たせしました澄さん、これで仕上げです。
伊藤 君、準備を!』
『わっかりましたー。
……んしょっと。
やっぱ肩装甲が邪魔だな……』
伊藤が砲身へ入った事を確認した澄は、
『ラa六らA6ラa六らA6ラa六らA6!』
『A6ラa六らA6ラa六らA6ラa六ら!』
衝撃波と呼んでも
それどころか、二・四ギガヘルツの周波数が細胞の水分子を沸騰させ爆裂させようとしている。
いま澄が放っているのは
別名マイクロ波と呼ばれるものだ。
そう、澄の
宮森は昨年、電磁波照射装置の試作実験を指揮した。
その効果を目の当たりにした彼は、
その手段として目を付けたのが〈
宮森は〈
その簡易版とも云える音波兵装を見事に再現した
実現に漕ぎ着けたのは、宮森による機転の
それとも、彼に
それはきっと、彼に〈
◇
澄による
「あ、熱いぃ!
あづ……ベバァッ⁈」
〈巨大
巨大な歯が勢い良く飛散する。
マイクロ波が彼女を
辛うじて
派手に点滅を繰り返す触手は、
通常の動物とほぼ同じ材質である〈巨大
澄が放射している二・四ギガヘルツの周波数では、共振現象を起こせず破壊は不可能。
砲身内へと入った伊藤に宮森が最終確認を取る。
『いま大女の本体が露出した。
伊藤 君、準備はいいかい?』
『宮森さん、こっちは準備完了っす』
『では澄さん、自分が合図したら音波攻撃を止めて障壁を張って下さい。
自分は全力で砲台を固定します』
『解りました』
宮森は
『澄さん、音波増幅器を停止させ障壁を張って下さい!』
『はいっ!』
澄が
この再生が終わる迄にけりを付けなくてはならない。
『伊藤 君、今だっ!』
⦅少し前に残飯屋やってみて心底わかった。
この国には……いや、この国だけじゃねえ。
世界には満足に飯も食えねえ奴らが大勢いる。
それなのにあの大女。
食糧だけじゃ飽き足らず、
そんなに食う事が好きならよお、俺の拳を進呈してやるぜ。
おとこ伊藤、
気合を入れた伊藤は、前もって足元に据え付けて置いたマークI手榴弾 改の安全
マークI手榴弾 改は爆発方向の指定が可能なので、それを
『バゴーーーーーーーーーッン!』
マークI手榴弾 改が撃発し、伊藤は凄まじい速度で砲身から射出される。
ほぼ同時にマークI手榴弾 改に詰められていた鉄片も飛び出るが、
自らを射出した伊藤は、切り離した肩部装甲……
〈ザイクロトルの怪物〉をのした際は
間近に迫る死に
「……オまエを、ガあァっ⁈
食ベてヤるゥーーーーーーーーーーーっ!」
右拳を〈巨大
だが、伊藤は諦めてはいなかった。
彼は自身の足元方向に
下方で待つ仲間へ呼び掛ける伊藤。
『宮森さん、あざっす。
澄さんも頼むぜ!』
伊藤の合図で、澄の
彼
『……ブガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!』
マイクロ波ではなかった。
詰まり、衝撃波である。
音と風は空気の振動と云う点では同じ。
その振動は伊藤の足元に展開された
『ブガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!』
『フィーーーーーン!』『フィーーーーーン!』
澄は両肩部の
澄が
そう、宮森が展開した
帆で風を受けた
そして遂に、
「腹ガ……。
あタしノはラが、ヤぶレ……るゥーーーーーーーーーーッ!」
『バッ……ゴオォーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!』
伊藤は右拳を
残飯屋の意地とも云える
それは最早、〘
「モっト……もッとタべ、タかッ、た……」
〈巨大
『ダン……』
右拳を地面に打ち付ける姿勢で着地した伊藤は、拳を
「ふ~っ、流石に拳が
あ、宮森さん。
度を越さない事を表す言葉、なんつーんでしたっけ?」
「節制の事かい?」
最後まで醜い食い意地から逃れられなかった
「
もし生まれ変われたんなら、次こそは節制に励むんだな……」
◇
炸裂、◯◯チ! その七 了
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