復活のB! その四
一九二〇年六月二三日 帝都中久保町 夢幻座公演会場
◇
〈ブアク〉産蜘蛛糸に対し、宮森は先程と同じく
今度の〈ブアク〉産蜘蛛糸は球状。
ぶつかった衝撃で潰れ、宮森の張った
『シャッ!』
彼は刃物による切傷だと断定した。
⦅くそっ、生体装甲を剥いだ所に斬り付けている。
それに、接近時に足音がしなかったのは何故だ……⦆
一方の〈ブアク〉も、宮森の軽傷に納得がいかない様子。
「思うように斬れねえ……。
服に秘密があんのか?」
〈ブアク〉の感想は正しい。
宮森はこれからの闘いを想定し、次世代戦闘服の開発にも労力を
宮森は〈ミ゠ゴ〉の機能で生成した蜘蛛糸を加工し、下着として仕立てたのである。
その際は歩く
製作された蜘蛛糸下着は柔軟で頑丈。
初速の低い銃撃は
高い防弾、防刃性を備えてい乍ら、肌触りは絹に似て滑らか。
高温多湿での不快感を大いに軽減してくれる。
〈ブアク〉の
流石にこれを蜘蛛糸下着で防ぐ訳にもいかず、宮森は躱すよりない。
そこへ容赦なく追撃を仕掛ける〈ブアク〉。
宮森が
宮森は土手っ腹の
「なんと!
電磁波で周囲の空間を共鳴させ滑空するとはね。
然もその電磁波を使い、〈鎧食屍鬼〉の胴体を操っていると云う訳か」
『ブーゥン……ブン、ブーーーーーーーーーーゥン』
次なる
音量はかなりの大きさで、周囲の小さな音は
宮森は口頭で見解を披露し、胸中では先を見越した分析を忘れない。
⦅蜘蛛糸を使っての
こちらの分が悪い空中を主戦場にすべきじゃない……⦆
『シュッ!』
御返しとばかりに、今度は宮森が
両腕の
肝心の
宮森の攻撃を躱し切った〈ブアク〉は、勝利宣言と同等の文句を言い放つ。
「グヘヘヘヘッ。
もうオレの滑空能力を見破るとはなあ。
渋いねえ、全くアンタ渋いぜ。
それにこんな隠し玉まで持ってたとは。
オレのアタマん中の武悪が感心してるぜぇ……ゲッ!
プゥゥ……」
下品に
「こんな時に何を言うかと思うかも知れねえが、オレはキノコが大好物なんだよ。
詰まり〈ミ゠ゴ〉も大好物なワケよ。
それによお、オレの本体は武悪……正しくは武悪の脳味噌なんだぜ。
武悪は〈ミ゠ゴ幻魔〉研究の第一人者。
取り込んだ遺伝情報を利用するなんざあ……朝飯前だ!」
体表の大部分を周囲の風景と同化させて行く〈ブアク〉を観て、宮森は
〈ブアク〉は宮森の
そしてあろう事か、自身の能力として取り込み使用にまで
蜘蛛糸の再現には既に成功。
そして今日の為に宮森が考案した切り札……
覚えたばかりの光学迷彩を操る〈ブアク〉は、宮森の平常心も言葉で齧り取る。
「へえ、〈ミ゠ゴ〉の鎧(
蜘蛛糸の方は材料が要るから乱発できねえが、こっちはもう少し使えるぜ!」
周囲との同化、と云っても完全な透明になれる訳ではない。
眼球や
当然、光学迷彩の機能が及ばない手持ち武器などはどこかに隠さなくてはならない。
しかし、それらの欠点を差し引いても光学迷彩は大きな武器になり得る。
敵を単純に混乱させる事は勿論、
ほぼ透明化した対象を素早く感知するには多大な労力を要する他、別術式が必要になる場合も有るだろう。
その事からも、光学迷彩は
周囲の映像が体表に馴染むと、御得意の電磁滑空で強襲する〈ブアク〉。
何らかの感覚拡張を使わないと、眼球の切れ端が飛び回っているようにしか視えないだろう。
対する宮森は視界を
凌げていなかった。
〈ブアク〉は〈
バルディッシュでの一撃は必殺の威力。
致命傷を避ける為、
その後はバルディッシュを躱す事しか出来なかった。
その瞬間を見逃す〈ブアク〉ではない。
『ブーゥン……シャクゥゥッ!』
選択肢を狭められ特定の動作をするよりなかった宮森の虚を突き、見事に彼の頭部装甲を齧り取って行く。
⦅頭部装甲を持って行かれたか。
奴の持っている匕首で位置が判ると思っていたけど、透明化した尻尾の中に隠されると判別できない。
それに、これからは障壁で腹と頭を守らなくてはいけないんだけど、そんな事を続けていたら霊力切れでいずれ
何かいい作戦はないものか……」
ここで、彼らの闘いには似つかわしくない
◇
復活のB! その四 了
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