復活のB! その五
一九二〇年六月二三日 帝都中久保町 夢幻座公演会場
◇
屋根上から宮森と〈ブアク〉の闘いを見守っていた橋姫は、場違いな
「あ!
にゃんこだー。
しろいにゃんこだー♪」
橋姫が嬉しがるその隣では、蝉丸が
「何だ蝉丸、あの猫が気になんのか?」
「ええ。
おかしいとは思いませんか気狐。
今はこの会場はおろか、帝都のほぼ全域に〈ザイトル・クァエ〉の花粉が満ちているのですよ。
その花粉は
魔術的調教を施された個体ならいざ知らず、普通の猫が出歩ける筈は無いのですが……」
「たまたま花粉吸ってねーんだろ。
まあ、監視だけなら戦闘介入には当たらねー。
瑠璃家宮 派の調教した個体の線もありか」
「……」
気狐の発言に沈黙で返した蝉丸を知ってか知らずか、
橋姫は「にゃんこがこっち向いてくれたー」と相変わらずの猫好きっぷり。
気狐は気にもしていない。
しかし蝉丸は、その禽獣に得体の知れない
◇
白猫の登場で宮森は浮足立っている。
⦅下宿周辺をうろちょろしてる白猫じゃないか⁈
戦闘に巻き込んで死なせでもしたら、後で明日二郎が
早いとこどっか行ってくれ……⦆
一方の〈ブアク〉は、白猫の登場に
「ちっくしょう……。
猫を見ると無性に腹が立つと同時に、言いようのねえ屈辱感に
翁によると、〈ズーグ〉に刻み込まれた本能がそうさせてるらしいがな!」
言うが早いか、〈ブアク〉は右手の匕首を白猫目掛け投げ付ける。
〈ブアク〉は光学迷彩で周囲の景色と同化している為、白猫には匕首が独りでに飛来したように視える筈だ。
しかし白猫は怯える様子もなく、華麗な
だが完全に隠れた訳ではなく、時折り半身を覗かせ
余裕ある白猫の様子を観た宮森は、何とか
⦅あんな暗闇でも眼だけは光っている。
まるで、透明化の術式を使っている〈ブアク〉みたいだ……。
ん?
眼だけ……眼だけだとっ⁈
流石は
但し眼球にまで映像を投映する訳にも行かず、眼球前面が宙に浮いている格好だ。
目を
宮森の透明化を意に介していないのか、調子に乗って攻撃と口撃を繰り返す〈ブアク〉。
「なんだ、今さら透明化ってか。
でもムダムダ。
〈ズーグ〉は元来森に住んでんだ。
目がいいんだよ。
アンタの目ん
グヘヘヘヘッ。
なんか
それよかやけに弱腰じゃねえか。
アンタらしくねえぞ!」
〈ブアク〉の言う通り宮森の回避動作は
これでは弱腰と
宮森は両腕から
但し狙いは〈
動きを捉え切れない〈ブアク〉よりも、〈
ただ肝心の
攻撃に失敗したのが不服だったのか、宮森は
〈
役目を全う出来なかっただろう
次なる打開策を探る為の時間稼ぎなのか、そこら中を走り回る宮森。
断続的に
「グヘヘヘヘッ。
宮森さんよお、流石のアンタもそろそろ
それと言い忘れてたが、オレの本体である武悪の脳を移植した猿公を探しても無駄だぜ。
今頃は他の
「なるほどね。
先に本体を
十中八九、瀬戸 宗磨か播衛門さんの転移術だろ?」
「いつでもどこでも行ったり来たり、転移術ってのは便利なもんだぜ。
それは
あんたが時間稼ぎしてる、ってなあ!」
「……」
先程の挑発は
彼は〈
大盥に張ってある液体は
〈
大量の
⦅何だ⁈
視界が見る見るうちに冷色に覆われて……。
まずい、〈ブアク〉を見失った!⦆
宮森が驚くのも無理はない。
直ぐに通常の光学視界に切り替えるも〈ブアク〉は見当たらず、代りに入って来たのは〈ブアク〉産蜘蛛糸だった。
「くそっ……」
〈ブアク〉産蜘蛛糸自体は
しかし
宮森は今、腹と頭の装甲を剥ぎ取られた状態。
加えて、身を守る
腹か頭にきつい一撃を貰うと確実に致命傷となる。
ここで泣きっ
後方からは、匕首を構え電磁滑空して来る〈ブアク〉。
『ブワァン……。
ブギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーァァン!』
〈ブアク〉の飛膜が作り出す振動が辺りに鳴り響く。
それはまさに、天から地上に終末を宣告する、【
◇
復活のB! その五 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます