炸裂、◯◯チ! その五
一九二〇年六月二三日 帝都中久保町 夢幻座公演会場
◇
蝉丸 達の会話中にも、〈ザイトル・クァエ〉の花粉霞とその身から放出する蒸気を纏い歩みを進める〈巨大
彼女は
「ベエェェーーーッ!」
何かを吐き出した。
あからさまな
「あっつい上にきったね⁈
あのデカブツオバン、こっちに痰ぶっかけて来やがって!」
伊藤の
周囲の気温と湿度が急上昇する中、
「伊藤 君、澄さん。
奴の
恐らくは触手が川に繋がっていて、そこから吸い出した水で体内を冷却しているのでしょう。
そして冷却水が熱湯と呼べる程に温まったら、細胞の老廃物と共に吐き出しているようです」
「うへー、排熱と排泄行動がそのまま攻撃になってやがんのかよ!」
「ベエェェーーーッ!」
宮森 達の会話など御構いなしに飛んで来る熱痰。
彼らは仕方なく思念での会話に切り替える。
『ちっくしょー!
お熱いのバンバン吐き出しやがって……。
これじゃ手が付けられねーぜ』
『宮森さん、あの大女は排熱が不可欠な様子。
なら、わたしの兵装が有効なのではありませんか?』
『後の闘いの為に取って置きたかったんですけどね。
仕方ありません、澄さんの特殊兵装を使いましょう』
冷却水と老廃物を熱痰として吐き出す〈巨大
その姿勢はまさに【
熱痰攻撃を躱しつつ、澄と伊藤は〈巨大
宮森は思案の後、ふたりに問うた。
『自分は手榴弾を使い切っているのですが、伊藤 君と澄さんはどうです?』
『俺は一発残ってますけど』
『わたしも残り一発ですね』
状況を把握した宮森が伊藤に指示を出す。
その際は思念で具体的な
『では伊藤 君。
君は天幕の中に入り、人間大砲の砲台を持って来てくれ』
『人間大砲?
ああ、曲馬に使う仕掛けっすね』
『ふじ さんの話だと天幕の中に在る筈だ。
外法衆は手を出さないだろうけど、他の幻魔が居るかも知れない。
くれぐれも気を付けて』
『わっかりましたー』
伊藤が大
『澄さんは特殊兵装の準備を。
自分が大女の足止めを試みます』
『はい』
澄はスプリングフィールドM1903を宮森に返すと、どこかへと走り去った。
ふたりの離脱と〈巨大
『バスーーーーン!』
素早い
『バスーーーーン!』
弾丸は二つとも〈巨大
「肉体組織は修復できても、籠細工の方はどうかな?」
宮森の質問に対する回答は直ぐに出る。
〈巨大
『ドスーーーーーーーーン……』
地響きと共に倒れた〈巨大
いま彼女周囲の気温は摂氏一〇〇度を超えており、周囲には
「だ……だでないイイイイイイィィ~」
〈巨大
先ず、カーボンナノチューブ製の内骨格は
また自身の肉体組織で補おうにも、宮森に撃ち込まれた細胞融解素の効果が上回りそれを許さないからだ。
宮森がウィンチェスターM1912ではなくスプリングフィールドM1903を使ったのは、細胞融解素の効果で再生を阻害する為だったのである。
立ち上がれない〈巨大
只、前に投げ出した格好の両脚は曲がり背筋も立っていない。
詰まり赤ちゃん座りである。
巨大な赤ん坊に変化が有った。
頸筋から伸びている給水触手群が一気に縮み始めたのである。
給水触手群が〈巨大
今までは退場門方向を向いていたが、今度は大
〈巨大
巨大赤ちゃんがでんぐり返しをする度、『ドズゥーーーーン……』と地響きが鳴り振動が地面を伝わる。
◇
炸裂、◯◯チ! その五 了
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