炸裂、◯◯チ! その三
一九二〇年六月二三日 帝都中久保町 夢幻座公演会場
◇
伊藤と澄が中央広場へ辿り着くと、そこは酒池肉林の
「何であたしを食べるの⁉」
「美味しく食べてねええええェェ……」
「い、いただきマンモ……ズッ!」
ウィッカーマン内部の囚人達には、成人男性の腕ほどの太さを有する触手が巻き付いていた。
その触手の先は囚人達の肉体と癒着し、うねうねと狂おしく脈打っている。
伊藤と澄が触手の源泉を辿ると、巨大鬼胸部に収まっている大女へと行き着いた。
そのワガママボディーを拝見した伊藤が一言。
「うへー。
ボン・キュッ・ボン!
じゃなくてボン・ボン・ボン‼
じゃねーか……」
伊藤の呟きを賛辞とみなしたのか、
ちゅーちゅーと触手が波打つ度に囚人達が痩せ細るので、溶解した肉体組織が彼女へと運ばれているのが判った。
「……っぷは~。
やっぱり人間はおいしいね~。
ごくらくごくらく~」
「ちっ、まるで祝いの席みてーに人食いを楽しみやがって……」
嬉々とした表情で囚人達を
人生の大半を飢えで占領されて来た彼にとって、許されざる
一方、澄は
⦅今までの幻魔が放っていた霊質とは明らかに違う。
本当に幻魔なの?⦆
ある意味幻魔に慣れ親しんだ澄でさえ、
どうやら彼女の違和感にこそ、幻魔召喚の秘密を解き明かす鍵が含まれているらしい。
筋肉や内臓を吸い尽くされ限界まで干からびると、囚人達は絶命を迎えた。
それと同時に、見世物小屋近辺で
この場に居る伊藤と澄にその様子は視えていないが、見世物小屋の屋根上に居座っている三人には丸見えだ。
当然、橋姫の質問タイムが始まる。
「ねーセミマルー。
やられたげんまたちはなんできえちゃったのー?」
「幻魔は人間の
取り憑いている人間が死ねば、
「そっかー!
じゃあ、げんまがきえたらほんたいはしんじゃってるってことなんだねー」
「死亡時だけ消滅する訳じゃないんですけど、
一方の気狐は根本的な問題を考えている。
「なあ蝉丸、幻魔は幻夢界(二次元)からいっさい出れねーはずだ。
それが何で物質界(三次元)に出てこれる?
比星の
「幻魔召喚は比星 家の秘伝ですからね。
流石に教えては貰えませんよ。
只、痩男はこうも言っていました。
『上位次元をも飲み込む幻夢界……。だから曲馬団一座の名は、夢幻座なのだ』と……」
◇
蝉丸の講義は
生贄の肉を
今度は彼女の方から触手を通じて消化液を送り込み、遺骸内部に残っている骨を残らず融かす。
最後は、
ひとり、またひとりと囚人達が犠牲になって行く中、伊藤と澄も黙ってはいない。
ウィンチェスターM1912で射撃を試みる伊藤。
彼の得物は標準
一方の澄は、巨大鬼背部に据え付けられた階段から
彼女が装備するウィンチェスターM1912は射程の短いソードオフ
その射程を補う為なのか、
『ダン!』
ウィンチェスターM1912用の散弾は魔術師用に調合された特別製。
伊藤の放った爆裂弾で、
しかし彼女の肉体はずたずたになった直後から再生を始め、弾丸をも取り込み膨張を続けた。
「ちっ、流石にこっからじゃ仕留めきれねーか。
澄さん、頼んます!」
澄は巨大鬼背後の階段から胸部へと
何故なら
「やはりあの石を取り込んでいるようです!」
澄の発言に有るあの石とは、〈ムンバの化木人〉との会話に登場した〈ゴーツウッドのノーム〉の事。
〈ゴーツウッドのノーム〉を
澄は当初ウィンチェスターM1912ソードオフ
コルトM1911に装填されているのは、生物に対して絶大な効力を発揮する細胞融解弾だ。
「この弾丸に含まれる細胞融解素なら!」
彼女の霊力で活性化した細胞融解素が
細胞融解素の効力で一旦は細胞破壊に成功するも、
「駄目みたいね……」
伊藤と澄の攻撃をその身に受けている間にも、
彼女の体躯は巨大鬼の腹部分からもはみ出し始め、脚部や腕部、頭部にまで到達し始めた。
更には各部に裂け目が出現し、そこから熱い蒸気を大量に噴き出す。
⦅あ、熱いっ⁈⦆
生物は体積が大きくなる程に身体の表面積が小さくなり、体内で発生した熱が逃げにくくなるのだ。
⦅このまま熱気を浴び続けると装甲がもたない……。
ならば!⦆
状況を理解した澄の行動は素早い。
彼女は階段から飛び降り、伊藤の許へと戻った。
但し、置き土産としてマークI手榴弾 改を残すのも忘れない。
『バゴーーーーーーーーーッン!』
マークI手榴弾 改の爆発により、
爆風で分厚い肉の鎧を剥がされ
胴体には辛うじて
そして幾本かの触手は枝分かれし、それぞれが点滅し
まるで、生体信号を伝達する
爆発の衝撃により丸裸になった
「うへー。
グッチャグチャだなーオイ。
んでもって、食らえ!」
『ダン!』
『バチイィーーン……』
ウィンチェスターM1912標準
触手は相変わらずうねり続けているので生体組織が硬化しているのではないし、
今では
「くっそ!
やっぱ
澄さん、どうします?」
「仕方ありません。
伊藤さんは宮森さんの様子を確認して来て下さい」
「わっかりましたー」
伊藤は
◇
炸裂、◯◯チ! その三 了
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