第十章 オペラグラスを君に

幕間 その一

登場人物を紹介するぜー(伊藤)



☆読者のみんな、このまえ地下競艇場でドエライ目にった伊藤いとう 開智かいちだ。

 今から第十章前半に登場する主な登場人物達とこれまでの粗筋あらすじ紹介するんで、ぜひとも聞いてってくれよ。


※本項は登場人物の紹介です。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承下さい。


 本項の情報は、作中の一九二〇年四月時点のものです。



◆ 主な登場人物 ◆



◇ 宮森みやもり 遼一りょういち ◇


 伝承学者を目指していたが、恩師の罠にまり魔術結社九頭竜会くずりゅうかいに入会してしまう青年。

 皇太子 瑠璃家宮るりやのみやの命を救った功績を認められ幹部に昇進した。


 宗教儀式や古代文明に造詣ぞうけいが深く、好きな煙草の銘柄はゴールデンハット。


 御霊分みたまわけの術法で人格を切り替える事ができ、人格を切り替えた時は『うら 宮森』などと呼称される。


 邪神崇拝者達の計画を頓挫とんざさせるべく九頭竜会を探っていたが、外吮山そとすやまの闘いで死亡してしまう。

 その際、比星ひぼし 播衛門ばんえもんを名乗る〈白髪の食屍鬼グール〉から禁断の魔導書〈死霊秘法ネクロノミコン〉を肉体に据え付けらインストールされ蘇生を果たす。


☆九頭竜会に処刑されるはずだった俺を救ってくれた恩人。

 性格、見た目ともに冴えねーが、邪神がらみになると途端に鋭くなるお人だぜ。


 俺この人からスカウトされたんだけど、これからどーなっちまうのか見当もつかねーや。



◇ 伊藤いとう 開智かいち ◇


 九頭竜会に借金を返済するため土木作業員をしていた若い男性で、一九一九年七月に起きた〈食屍鬼グール〉による帝居襲撃事件での生存者。


 自堕落じだらくだが面倒見のいい性格。

 非道な義父に育てられた境遇の為か、反骨精神も旺盛おうせい


 帝居地下で行なわれた〈深き者共ディープワンズ競艇きょうていに選手として参加した際、死亡したと思われていた弟分の三好みよし 基裕もとひろと再会する。

 だが、三好は九頭竜会生物研究班の実験により〈深き者共ディープワンズ〉へと成り果てていた。


 自身をめた九頭竜会を恨んでいた事と三好を失った事が重なり、宮森のスカウトに応じる。


☆俺だ。

 あまり言いたかないが、家族のこと語っとくぜ。


 家族構成は俺、四つ違いの姉、お袋。

 あとお袋の情夫な。


 このお袋の情夫ってのがとんだクズ野郎でよ。

 まあ、ヤクザもんだ。


 呑む打つ買うは当たり前。

 しかも俺らに暴力を振るいやがる。


 だから一発のしてやった……までは良かったんだが、奴の所属する組が九頭竜会の下部組織だったんだよ。

 で、その賠償金を稼ごうとして九頭竜会の罠にはまっちまったってワケ。


 実の父親は誰だか判んねーし魔術だの邪神だのと関わっちまったし、おさき真っ暗って感じだな。



◇ 比星ひぼし 今日一郎きょういちろう ◇


 太古から邪神を崇拝しその復活を画策して来た比星 一族の末裔で、魔術結社の者達からは宮司ぐうじと呼ばれている。


 メトヘモグロビン血症に苦しむ上鳥居かみとりい 維婁馬いるまの命を永らえさせる為に生み出された別人格がその正体。


 主人格の維婁馬とは、顔色を始め雰囲気ふんいきも異なる。


 服用しているメチレンブルー(薬剤)の効果が切れると維婁馬が出現するようだ。


☆維婁馬 君を利用する為に、瑠璃家宮 達が生み出した別人格らしいぜ。


 明日二郎シショーによると、冷静に見えて本当は子供らしい気性だそう。


 シショーが幻魔だと判ってもなお、兄らしい振る舞いをする見上げた坊ちゃんだ。



◇ 比星ひぼし 明日二郎あすじろう ◇


 宮司(今日一郎)が異界から呼び込んだ異形の弟で、今日一郎の主人格である上鳥居 維婁馬に憑り付く幻魔げんまがその正体。


 今日一郎を兄として尊敬する面や食に関して並々ならぬこだわりを見せる性格は、全て維婁馬が植え付けたもの。

 維婁馬の祖父でもあり父でもある上鳥居 なおや、上鳥居 本家当主の瀬戸せと 宗磨そうまにはいいように操られてしまう。


 長らく宮森の頭の中に居候いそうろうしていたが、伊藤の頭の中に御引っ越しした。


☆言わずと知れた俺のシショー。

 今は俺に憑いて魔術の手ほどきしてくれてる。


 茶目っ気タップリで喋ってても全然飽きねー。

 ただ宮森さんによると、維婁馬 君につくられた性格らしーな。


 俺の生い立ちも散々さんざんだけど、比星 家を始めとした上級国民様達の狂いようは半端はんぱねーぜ。



◇ 寅井とらい ふじ ◇


 静岡の実家を出て帝都劇場付属技芸ぎげい学校に入学。

 同校を卒業後、劇場売店の売り子をしながら女優を目指していた。


 大昇たいしょう期を代表する舞台女優にまで成長するが、その地位は上級国民相手にまくら営業してもぎ取ったもの。


 ひょんな事から知り合った宮森に好意を抱く。


 すでに亡くなっていた比星 すみの息子をよみがえらせる為、波邇夜須壺はにやすのつぼと呼ばれる祭器を瑠璃家宮に埋め込まれた。

 加えて大昇帝 派の毒牙にも掛かってしまい……。


☆読者さん方はとっくに知ってるだろーけど、宮森さんが思いを寄せてる人だ。

 宮森さんがこの人の話する時は、熱が入って仕方ねーのなんの。

 こっちが火傷しちまうぜ。


 俺も一度はこの人の舞台観たかったんだがなあ……。



◇ 武藤むとう 大志だいし ◇


 瑠璃家宮 派に所属する医師であり魔術師。

 専門は整形外科。

 透視術イントロスコピーを使用しての外科手術で、帝室ていしつ御用達ごようたしの魔術医とう地位を築く。


 常識外れではないが、医療従事者としての倫理観は皆無。

 外科医としての腕だけでなく、カネ儲けの手腕にも長けているようだ。


 著名人や犯罪者達の整形手術も担当しており、護謨覆面ゴムマスク作りには定評がある。


☆整形手術で要人達の影武者つくってる医者。

 医師としての風上にも置けねー人格だが、腕は確かだぜ。


 今章は俺の変装名人っぷりも見どころの一つだな。



◇ チンドン屋の三人組 ◇


 正体は外法衆正隊員の気狐きこ蝉丸せみまる橋姫はしひめ


 チンドン屋としての姿は、帝都に突如とつじょ現れた曲馬サーカス団である夢幻座むげんざのビラ配り活動時のもの。


 講演会場では、蝉丸が入場係、気狐が赤鼻道化レッドクラウン、橋姫が紫鼻道化パープルクラウンを演じている。


☆外法衆正隊員の若手ホープ三人組。


食屍鬼しょくしき〉に襲われ怪我した俺が帝居地下の医療施設で寝てた頃、大胆にも帝居に強襲かけたらしーじゃねーか。

 強襲自体は失敗したみてーだけど、ベラボーにつえーのは間違いねー。


 将来こんな奴らと戦う破目になるなんて、俺ってとことんツイてねーぜ。

 これじゃーしちまうってなもんよ……。



◇ 夢幻座の道化クラウン達 ◇


 緑鼻道化グリーンクラウン中将ちゅうじょう黄鼻道化イエロークラウン嘯吹うそふき


 青鼻道化ブルークラウンの正体は不明ながら、外法衆正隊員と思われる。


☆外法衆の奴らって普段は興行してやがんのかよ。


 もし痩男やせおとこの転移術で全国巡業してやがったら、交通費はほぼタダか。

 うらやましいぜ……。



◇ 万媚まんび ◇


 外法衆正隊員を名乗る、万媚面まんびめんを着けた黒い留袖とめそで姿の女性。

 帝劇近辺で目撃された為、ちまたでは『帝劇の怪人』と呼ばれている。


 不自然なほど纏まっている黒い長髪で獲物を捕縛ほばくしたり、鋭利な鉤爪かぎづめを伸ばすなど、人体の制限を超えた攻撃を放つ。


 真意は不明だが、宮森に執着しゅうちゃくする素振そぶりを見せる。


☆見れば見るほどいい女だから、俺は『留袖ねえさん』って名づけたぜ。


 留袖姐さんって、帝劇の女優を買ってたオヤジばっか誘拐してんだよなー。

 何でその場で殺さねーんだろ?



◇ 下宿の女将 ◇


 本名は名礼緒なれお ふく


 宮森が以前寝起きしていた下宿の大家で、宮森の部屋は現在 伊藤が居住している。


 九頭竜会傘下の宗教団体会員で常に宮森を監視していたが、その対象を伊藤へと移す。


 普通に気のいいおばちゃんだが、七年前に夫を亡くしている事もあり欲求不満らしい……。


☆基本的には善人なんだけど、めっちゃ騙されやすいんだよな。

 でもなんか気になんだよ。

 断っとくが、恋愛絡みじゃねーかんな……。



◆ 前章までの粗筋 ◆


死霊秘法ネクロノミコン〉を据え付けらインストールされ蘇生を果たした宮森は、大昇帝 派による地下競艇場襲撃を辛くも切り抜ける。

 その際、〈深き者共ディープワンズ〉であり乍ら九頭竜会と敵対する〈ラニクア・ルアフアン〉らと同盟を結ぶ事に成功。

 宮森は更なる戦力増強の為、地下競艇場襲撃事件で生き残った伊藤を仲間に引き入れる。


 一方、帝都には正体不明の曲馬サーカス団が来訪。

 ほぼ時を同じくして、帝劇近辺に跋扈ばっこする謎の怪人。


 異変を察知した皇太子 瑠璃家宮るりやのみや 玖須人くすひと 親王しんのうは、宮森にその調査を命じる。


 淡い想いを寄せる寅井 ふじ とのひと時に、束の間の安らぎを覚えた宮森。

 だが無情にも、曲馬サーカス団の魔の手が彼女に忍び寄る……。





☆俺、今章じゃ変装に変身にと大活躍だ。

 生体装甲バイオアーマーまとっての戦闘バトルにも要注目だぜ!


 じゃあ、あおり文句はこんぐらいにして第十章前半部開始と行きますか。



 あなたの町へとやって来る。

 夢のサーカスやって来る。

 悪い子さらいにやって来る。


 あの子の街へもやって来る。

 まぼろし見せにやって来る。

 良い子を喰らいに、やって来る……。



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