ザ・ランブルクリーチャー その五
一九二〇年四月 帝都 地下競艇会場
◆
〈
嘯吹は瑠璃家宮の動向を気にしつつ三密加持を行なった。
先ずは
水天印である。
『――ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バルナヤ・ソワカ――』と
続けて左手の人差し指、中指、小指を真っ直ぐに伸ばし、親指と薬指は曲げて先端を付ける。
右手は拳の形から人差し指のみを立て、第一関節、第二関節ともに深く曲げる形の
『ナウマク・サンマンダ・ボダナン・センダラヤ・ソワカ』との
嘯吹に挨拶する瑠璃家宮。
「この前歓談室に来た輩か。
御仲間が逃げる迄の時間稼ぎと見受ける。
来い……」
「やっぱりお前いけ好かないぷ~ん!」
言うが早いか、手甲に包まれた拳を氷上に叩き付ける嘯吹。
穴が開くと、
嘯吹はその水を操りを瑠璃家宮に浴びせると、月天・凍光法で造り出した
水は淡水と海水が混じった
体表が凍結して身動きが取れない瑠璃家宮へと、氷上を
一撃で砕こうと右拳を引き絞る。
「これが嘯吹のアッタマいい戦法ぷ~ん。
カチンコチンになった所を頂いちゃうぞぷ~ん」
嘯吹が右拳を叩き付ける寸前、瑠璃家宮の
そこから現れたのは、透き通った組織を持つ六本の触手。
完全に虚を付かれた嘯吹は、六本の触手が待ち受ける顔面に右拳を放ってしまった。
触手は嘯吹の拳を呑み込むと、瞬く間に腐食させ分解して行く。
嘯吹は勢いの余り転倒し、失った右拳を嘆いた。
「ああ~⁈
嘯吹の手が、あ、あ、あ……ある!」
どうやら、手甲を
嘯吹は無事だった右手を
「何で凍らないぷ~ん?
特に熱くはなかったはずぷ~ん!」
何故か思念で答える瑠璃家宮。
『其方に難しい事を言っても判らんだろうから簡単に説明してやろう。
余は自身の体液に
「何だか余計に解らないぷ~ん
チンプンカンプンぷ~ん⁈」
嘯吹がそう言うのでもう少し詳しく説明しよう。
水分子が規則的な三次元
これが凍結だ。
瑠璃家宮は体内で特殊な脂肪分子を合成する。
この脂肪分子には
この脂肪分子が集合、凝集する事で膜を形成する。
その膜は水分子を内包する隙間を備えているが、その隙間が余りに狭いため水分子は氷の結晶となれない。
先述の作用により、摂氏マイナス二六三度ほど迄は水分子の配置が乱れたままに保たれ、体内の水分や脂質が凍らないのだ。
瑠璃家宮がボロボロになった
ソレを視た嘯吹は絶句した。
そこにあったのは
元より口が無いので、喋れなかったのも道理だ。
流石の嘯吹も
「
再び水が舞い上がり、蛇の如くのたうって瑠璃家宮へと襲い掛かった。
嘯吹が凍気を放つと、水蛇は氷蛇に姿を変える。
右から左へ、上から下へ。
あらゆる方向から襲撃して来る氷蛇を、瑠璃家宮は巧みな
その秘密は、瑠璃家宮の頭部から生える触手に有った。
触手それぞれに黒い小点が観られるが、それらは全て
詰まり眼である。
これは
しかし嘯吹にめげる様子は無い。
何匹もの氷蛇を作り続け、氷像の展覧会を開催する。
両手の触手から硬質化した
⦅よくもまあ、ここまで立体的に術を行使したものよ。
二階の観覧席まで届いておるとは、敵ながら
それにしても、氷柱がやけに幅広で平たいのは何故だ?⦆
瑠璃家宮の問いは直ぐに答えが出る。
今度は自分の番とばかりに、墨弾の乱射を華麗な
助走を付け左足で踏み切る回転跳躍。
トリプルアクセルだ。
「
宙で回転している所へ瑠璃家宮が容赦なく墨弾を撃ち込むが、
氷蛇の背中に四つん這いで着地する嘯吹を見て、思わず感心してしまった瑠璃家宮。
「何と、一瞬で装備を切り替えたか。
逃げ足の速い奴め……」
金剛薩埵・豪剣法を用い、スケート靴底の金属板を
手甲にも術を応用し、氷を突き刺せる
それらを使って周囲に張り巡らせておいた氷蛇の背を辿り、二階の
◆
※演出の都合上デーヴァナーガリー文字を使用していますが、縦組み表示では正確な象形が表示できません。
正確な象形を確認したい方は、横組み表示にてご確認下さい。
対象のデーヴァナーガリー文字は〔
ザ・ランブルクリーチャー その五 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます