ザ・ランブルクリーチャー その六
一九二〇年四月 帝都 地下競艇会場 観覧席
◆
宮森が競艇会場を見下ろすと、そこはまさに混乱の
賓客達の避難は完了したものの、選手達はおろか職員までも自由勝手に逃げ惑うので収拾が付かない。
ここまで何とか平静を保って来た宮森だったが、脳中の
『おいミヤモリ!
海側からなんか近付いて来てんぞ。
それも結構な数だ』
『瑠璃家宮が昨日言っていた奴か。
明日二郎、特定は出来るかい?』
『もうやってる。
〈深き者共〉も居るけど少数だな。
大半はクジラやイルカだと思う。
それと……どっちつかずの変なヤツも混じってるな』
『〈深き者共〉の長である益男の
後、どっちつかずとは何だ?』
いま宮森が会話している明日二郎は、去年 今日一郎が倒れた際に維婁馬の精神世界に現れたモノではない。
維婁馬が大昇帝 派に連れ去られた後、暫くして生成された新しい明日二郎である。
幻魔である事に変わりは無いが、維婁馬により記憶と感情の調整がなされているので今の所は無害だ。
階下では瑠璃家宮が戦闘中。
宮森の顔を模した
瑠璃家宮の状況によって着脱できるよう、宮森は再度 瑠璃家宮
その後は思考と感覚の
サベージM1907を構え、海側放水路へと向かう。
◇
一九二〇年四月 帝都 地下競艇会場 海側放水路
◇
海側放水路は御多分に漏れず巨大な施設だ。
帝都地下施設からの排水が主な用途だが、発電に利用されているとの噂も有る。
宮森が海側放水路へと続く通路に入ると、複数の〈
宮森は沈黙を貫き、そのまま競艇会場へと素通りさせる。
そして、〈
⦅鯨に
どの個体も、音波で状況を把握したり仲間と連絡を取っている。
益男が探知したと云うのはこれだな……⦆
ここで、明日二郎から音波測定の結果が報告される。
『ミヤモリ、あいつら会話音の他にも音だしてるみてーよ。
何が目的なのかは解らんが、とにかく耳障りだ。
多分、マスオが〈深き者共〉に対して放射してる支配音波をカクランする為じゃねーかな?』
『なるほどね。
で、さっき言ってた「どっちつかず」とは何だい?』
『特定の邪霊が
だからあくまでも
で、「どっちつかず」さんはどうも
詳しくは本人に訊くしかねーな。
今んとこ近くには誰もいねー。
チャンスだぞ!』
〈
もしそれが本当なら、いざ九頭竜会を相手取る際の切り札になる。
宮森は賭けに出た。
『この通信は聞こえているか?
もし聞こえているのなら、君達と交信したい。
君達が〈深き者共〉の長の支配を受けていないのは解っている』
ややあって、例の『どっちつかず』から返答が有った。
『誰だ?
同胞達の侵入を
『自分は宮森と云う。
九頭竜会の人間だが、奴らのやり方には反感を覚えている。
良ければ君と話をしたい。
名前を教えて貰えると助かるんだけど……』
『今のところ信用できないので控えさせて貰う。
もし信用を得たければ、ボクの言う通りにしろ。
それが出来ないのならこの話は無しだ』
『解った。
出来得る限り言う通りにしよう』
『今からボク達は競艇会場に押し入り仲間達を救出する。
その邪魔をするな。
お前は九頭竜会の人間らしいので、こちらを阻止する振りぐらいは許す。
だけど、本気で邪魔をしたとボクが判断した時点で、敵性目標と認識するからその積もりで。
では、ボク達は行動に移る……』
〈
『ミヤモリ、誰か来るぞ!
しかもふたり!
一階からは、準決勝に出てたイトウって奴だ。
何故か〈
恐らく鰐人間にやられたんだろうな。
もうひとりは二階の観覧席に居るぜ。
競艇会場に氷張った外法衆の奴だ!』
外法衆の接近を知った宮森は、戦闘準備を整え迎撃に向かう。
◇
ザ・ランブルクリーチャー その六 了
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