幕間 その三

嘯吹、宿題出されちゃったぷ~ん



☆読者のみんなもそうだと思うけど、嘯吹は勉強が嫌いぷ~ん。

 今まではそれでも大丈夫だったんだけど、宮森っていう奴に痛い目にあわされちゃったぷ~ん。

 で、天芭 隊長から『宮森に後れを取りましたね。もっと勉強しないとお菓子取り上げちゃいますよ』って言われちゃったぷ~ん。

 嘯吹それは嫌ぷ~ん。

 ひとりじゃ淋しいから、みんなも一緒に覚者密教の秘術をおさらいして欲しいぷ~ん。



※本項は作中設定の紹介です。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承下さい。


 本項の情報は、作中の一九二〇年四月時点のものです。



◆ 覚者密教秘術 ◆



◇ 日光菩薩にっこうぼさつ造光法ぞうこうほう ◇


 主に可視光を生成して灯りを作る術式。

 便宜上、エックス線やマイクロ波を生成するのは別術式の範疇はんちゅうになる。


 必要な波長以外ははぶく事も可能。

 例としては、生成光を浴びた物質の温度を上昇させない為に赤外線を省く、特定の色だけを生成する、など。


 生成光には指向性を持たせる事が可能で、懐中電灯や探照灯のように特定方向への照射も出来る。


☆これ使うといろんな色が出せて楽しいぷ~ん。

 前はよく武悪ぶあくの禿げ頭に当てて遊んでたっけぷ~ん……。



◇ 月光菩薩がっこうぼさつ明光法みょうこうほう ◇


 生物発光に使われる物質、オキシルシフェリンを生成して灯りを作る術式。


 作中では面(マスク)の覗き穴周辺に付着させ光源としていた。


 視界を得るだけでなく、特定の場所に付着させ目印にする事なども可能。


 眼球の光に対する感度を上昇させている訳ではないので、明暗変化が起こった場合でも急激な明・暗順応が起きにくいのが利点。

 その為、視覚拡張術式の弱点である閃光にもある程度強い。


 発光物質を生成するので暗所では目立つ。

 外法衆はその欠点を認識阻害術式で補っていた。


 蓄光ちくこう物質や蛍光物質を生成する下位術式もあるが、その場合は勿論それぞれの特性に因む制限がある。


☆それにしても、ロボットが発進する時や気合を入れる時に目が光るのは何でだぷ~ん?

 動かしてる奴がスイッチでも押してるのかぷ~ん?



◇ 金剛力士こんごうりきし剛力法ごうりきほう ◇


 対象の赤血球を増殖させて酸素供給量を上げ、活力エナジー代謝を活発化させる術式。

 四〇パーセントほど増加させれば、容易に人体を破壊できる怪力が手に入るようだ。


 大抵の場合、酸素運搬に必要な鉄分などを生成する術式とセットで発動する。


橋姫はしひめの得意技だぷ~ん……ていうか、ほぼ橋姫しか使ってないぷ~ん。

 なぜなら、剛力を得てもそれに耐えられる身体にはならないからだぷ~ん。

 じゃあ何で橋姫は耐えられるのかだってぷ~ん?

 それは橋姫が巨人の子孫だからだぷ~ん。

 巨人は現代いま人間ヒトとは違う素材で出来てたって、おきなが言ってたぷ~ん。



◇ 金剛薩埵こんごうさった剛身法ごうしんほう ◇


 不思議界ふしぎかい(エーテル界)で鉱物を生成し、肉体を硬化させる術式。

 俗に硬体術こうたいじゅつとも呼ばれ、前述の金剛力士・剛力法の使用にもほぼ必須ひっす


 通常は鉄を生成するが、熟達すると金剛石ダイヤモンドを生成する事も可能。

 しかし通常の金剛石ダイヤモンドは非常に割れやすい性質の為、鉄鉱石やグラファイトなども併せて生成し、多結晶金剛石ダイヤモンドにしてから利用しなければならない。

 又、術に必要な鉄分は体内の物を利用しても問題ない。


 この術式には、生成した鉱物分の重量が加算される、鉱物を定着させた部位によっては動作が阻害されてしまう、という弱点がある。

 この弱点を克服するには、前述の金剛力士・剛力法などの併用が必要。


☆俗にいうスーパーアーマーだぷ~ん。

 大抵の攻撃ではらなくなるので、肉弾戦では負け無しになるぷ~ん。

 その代わり空を飛ぶのが難しくなったり、重くし過ぎると溺れちゃうぷ~ん。



◇ 陽神ようしん ◇


 霊力で作った分身である陽神ようしんを生成する術式で、紙人形などを使った式神の上位互換に当たる。

 物質を媒介としている場合を除き、霊感の乏しい者には視えもせず触れもしない。


 用法は殴る蹴るなどの単純破壊行為や、火炎、電撃など術使用の他、遠隔地に放っての偵察、通信など多岐にわたる。


 式神との相違点は、術者に応じた知能を持ち完全自立行動が可能である点と、術者とは独立して精密行動が可能な点。

 その為、陽神の外見と能力には術者の個性が大きく反映されるといわれる。


 術者の個性で性能が大きく変わる為、固有魔術との境が非常に曖昧あいまいである。

 又、使用できる術者も極端に少ない。


☆俗にいうスタ◯ドだぷ~ん。

 嘯吹もス◯ンド欲しいから、誰かで射ってくれぷ~ん。



◇ 閻摩天えんまてん冥約法めいやくほう ◇


 蝉丸せみまるが自身の陽神、〘エンマダイオウ〙を生成する時の術式。

 三密加持さんみつかじはあくまでもエンマダイオウを生成し易くする為のルーティーンであり、これを行なわなければ生成できない訳ではない。


 後述はエンマダイオウの能力と性質。


 エンマダイオウは〘思念書〙なる物を生成する。

 その思念書に契約内容と必要事項を記入し、各個人の霊的特質を表した霊紋れいもんと呼ばれるモノを押捺おうなつすると効果が発動する。


 契約を破った者には、何らかの罰則を科す事が可能。

 その罰則はどのような手段を用いても回避不能で、契約が無効となった際も罰則により失われた事柄は回復しない。


 術者である蝉丸が長期間意識を失った場合や死亡した場合、エンマダイオウも消滅する。

 以降の契約は停止されるものの、それまでに失われた事柄は元通りにならない。

 蝉丸が生きている場合は、新たな契約を結ぶ事で失われた事柄を取り戻す事は可能。


 エンマダイオウ自体は中立で、契約において術者である蝉丸や一方を贔屓ひいきするような事はしない。

 又、保証人の追加といった契約に類する事項も拒否できないようだ。


 見た目は、一般に膾炙かいしゃしている〖閻魔大王えんまだいおう〗の服装とは大きく違う。

 派手な青紫色の背広スーツに、名状しがたい柄の黄色いワイシャツ。

 短総髪オールバック細縁ほそぶち眼鏡と、完全に〖ミ◯ミの帝王〗のような格好。

 ガラの悪い関西弁で話し、契約が正常に履行りこうされないと明らかに気落ちする。


 霊力で生成する仮初かりそめの物体であるにもかかわらず、思念書の束である帳面や万年筆、インク、修正液などに強いこだわりを持つ。

 また修正液の作用機序を楽しむなど、化学実験を好む傾向がうかがえる。


☆エンマダイオウには蝉丸の本音が表れている、って誰か言ってたぷ~ん。

 そんなに自分を抑え付けているとしたらちょっと可哀想だから、もっと心を解放してもいいと思うぷ~ん。

 でも、あのチンピラみたいな喋り方だけは頂けないぷ~ん……。



◇ 文殊菩薩もんじゅぼさつ模算法もざんほう ◇


 情報処理能力を飛躍的に向上させ、洞察力を極限まで高める術法。


 状況分析や戦術立案など、戦闘中も大いに効果を発揮する。


 術式の特性上、戦闘中には思考と感覚の高速化クロックアップをセットで発動する事が多い。


☆記憶力を良くする虚空蔵菩薩こくうぞうぼさつ求聞持法ぐもんじほうとこれさえ使えれば、勉強なんてほとんどしなくてもいいぷ~ん。

 なんで嘯吹は使えないんだぷぷんだぷ~~~~ん‼



◇ 阿修羅王あしゅらおう結心法けっしんほう ◇


 対象の感覚や思考、術式さえも共有する術式。

 自身では使えない術式も使用可能になる為、普段とはけた違いの能力を手に入れる事が出来る。


 強力だが、術式調整が非常に難しく持続時間は短い。

 又、使える術者も限られる。


 作中では三人で行なっていたが、ふたりでも可能。

 四人以上での使用も理論上は可能だが、人数が増えると調整難度が劇的に上がるため現実的ではない。


 敵対感情を持っている者同士が対象だったり、理念や目的が掛け離れている者同士では術式自体が成功しない。

 その為、ほぼ仲間内での使用となる。


 思念も共有しているので、術式効果中は使用言語や言い回しがごちゃ混ぜになる。

 又、詳しい理由は不明だが自信過剰になるらしい。


三位一体さんみいったいで行く術式だぷ~ん。


 嘯吹は求聞持法と模算法使えないけど、使える奴と共有すれば使えるようになるぷ~ん。

 よ~し、さっそく蝉丸に頼むんだぷ~ん♪(スキップして退室)

(暫くして帰って来る)蝉丸、翁の研究所行ってて居ないぷ~ん……。



◇ 日天にってん焦光法しょうこうほう封熱活ふうねつかつ ◇


 日天・焦光法で対象を加熱し続ける術式。


 後述は作中での用法。


 先ず風天・自在法を用い、対象周囲の空気から酸素、二酸化炭素、窒素ちっそその他を締め出しアルゴンガスだけにする。

 その後は対象を障壁バリアで覆い、障壁バリア空間内を高圧化。

 そして日天・焦光法で加熱し続ける。


 当然、加熱に耐えられる物質にしか使用できない。

 作中では、気狐きこが単結晶ダイヤモンドを媒体として使用している。


☆とにかく見た目が超カッコイイぷ~ん。

 気狐がこの技にこだわるのも解る気がするんだぷ~ん。



◇ 韋駄天いだてん神行法しんこうほう瞬断殺しゅんだんさつ ◇


 前述の日天・焦光法・封熱活で高温に達した武器を、韋駄天・神行法を用いて振るう術式。


 神行法を使用している為、同じ神行法を使用せずにこの攻撃を躱す事はまず不可能。

 又、作中では摂氏三〇〇〇度まで剣の温度が上昇していた。

 これは多くの金属の融点を越えている為、金属での防御も得策ではない。


 神行法を使用しての攻撃の為、基本的には耐熱装備が必須。

 それに加え、露出部と可動部も障壁バリアで覆っていないと術者自身が負傷してしまう。


☆簡単にいうと、ガン◯ムのビーム◯ーベルとザ◯のヒー◯ホークの中間だぷ~ん。

 それをちょっぱやで振って来るんだから、避けられるはず無いぷ~ん。

 早い話がガード不能技だぷ~ん。

 気狐は霊力の尽きかけた時に使ったもんだから、自分までガード不能になっちゃったぷ~ん。

『これが、若さか……』って、ク◯トロ・バジ◯ナ大尉が言ってたぷ~ん。





☆読者のみんなも勉強できたかぷ~ん。

 嘯吹にはさっぱりだったぷ~ん。


 次章は催し物で勝負だぷ~ん。

 嘯吹も曲馬団きょくばだん(サーカス団)の一員として出演するぷ~ん。

 外法衆による曲芸や、色んな幻魔げんまを迎えての見世物(フリークショー)など盛り沢山だぷ~ん。

 ラスプーチンこと大悪尉おおあくじょうも、ひげ団長として大暴れの予感だぷ~ん。


 しかも、帝都劇場に謎の怪人が現れるそうだぷ~ん。

 聞いてないよ~、だぷ~ん。


 んじゃ、【第十章 オペラグラスを君に】を楽しみに待っててくれぷ~ん!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る