第六節 ザ・ランブルクリーチャー
ザ・ランブルクリーチャー その一
一九二〇年四月 帝都 地下競艇会場
◇
伊藤が競技水面から揚がった時、会場は
競技場底部に植え付けられた〈
その触手で艇や〈
艇に興味は無いのか、触手で握り潰した後は水中にばら撒く〈
しかし運悪く捕まった四号艇の選手は、触手が生い茂る〈
そこで彼は植物由来とは思えない口腔を眺め、辞世の句を
「白い歯って、いい……ニャバッ⁈」
〈
彼らが身に付けている
その姿はまるで、知性と直感であらゆるものを
〈
競艇会場の地上部で、デカい蜥蜴頭こと〈
〈
背面は
筋骨隆々で身長の半分に達する尻尾を備え、
一般普及前のこの品を所持する九頭竜会に最早驚きは無いだろうが、この品は重量が一二五ポンド(約五六・七キログラム)も有る。
詰まりふたり用なのだ。
そう、ふたり用の
その〈
〈
甲殻類型の厚い装甲も
その対決
◇
一九二〇年四月 帝都 地下競艇会場 観覧席
◇
今回の競艇開催は〈
貴賓達にはこの騒動が、瑠璃家宮 派と大昇帝 派の売り込みに映っているのである。
自らに危険が及ばないと判ると、貴賓達は
「矢張り、〈深き者共〉は陸上では使いにくいか?」
「あの海藻お化けは通商破壊にでも使えそうだ」
「あの鰐人間つえー!」
然も、売り込みは大昇帝 派に軍配が上がりそうな気配。
目頭を押さえ
常に尊大な姿勢を崩さない瑠璃家宮にしては弱気な対応だったが、その理由は直ぐに判明した。
瑠璃家宮は首の下に手を入れると、思いっ切り腕を上方に伸ばし顔の皮を剥ぐ。
彼は手に握った
◆
昨日の夜、瑠璃家宮から
入室すると、瑠璃家宮は備え付けのバーカウンターの前に座り酒を注いでいた。
小振りなグラスに
ウヰスキーなどの洋酒だろう。
宮森は興味をそそられたが、主君への挨拶を優先した。
宮森は最敬礼し、瑠璃家宮に呼び出しの意図を問う。
「殿下、何か御用で?」
「うむ。
実はな、先ほど僅か乍ら空間振動を感じた。
何かが転移して来た可能性が有る」
「大昇帝 派の手の者……。
外法衆でしょうか?」
「そうかも知れん。
それとな、益男や頼子からの報告によると、東京湾方面に何かが集結しているらしい。
ここ数日断続的に続いているとの内容だったので、注意が必要かと思ってな」
掴み所の無い話に、宮森も不安を隠し切れない。
「情報が少な過ぎて良く判りませんが、空間振動の方は万全の警戒態勢を敷いた方が良いと存じます。
で、益男さんと頼子さんの報告に裏付けは有るのでしょうか?」
「それがな、調査させると反応が消えるらしい。
どうも、こちらの動きが察知されているようだ。
それ
「では、今から調査しても何も出て来ないでしょう。
最悪の場合、
「うむ。
それで宮森よ、余の考えを聞いてくれ。
もし大昇帝 派が仕掛けて来た場合に備え裏をかきたい。
そこでだ、明日の競技には余が守宮となって出場する。
其方はこれを被り、余に成り代わって貴賓達の相手をしてくれ。
もし貴賓達に
そうだ、余は明日の競技に備え飲酒を控えねばならん。
宮森、良かったら呑んでくれ」
礼服を宮森に手渡した瑠璃家宮は、
それを観た宮森は、多野 教授から後に発せられるだろう苦言を覚悟し、深い溜息をついた……。
◆
ザ・ランブルクリーチャー その一 了
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