ザ・ランブルクリーチャー その二
一九二〇年四月 帝都 地下競艇会場
◇
〈
「
あの腐れ
益男、ちょっと行って腐れ馬尾藻を刈って参れ。
余はあの
「しかし殿下、御身体の方にもしもの事があれば……」
「あの程度の
尤も、多野 教授の
「はっ!」
君命を受けた〈
〈
[註*
有名なサルガッソー海に繁茂しているのはこの仲間]
〈
もう一つの武器である尻尾には、
一方の〈
[註*
語源通りの強力な毒を持ち、症状が重い場合は細胞壊死の他、意識障害、呼吸困難、心停止などを引き起こす]
そして止どめの機会を
攻撃方法は当然顔先の
芭蕉梶木型は同胞を成す
その御蔭か、吻は見事に〈
だが、頭に血が上っていた芭蕉梶木型は気付くのが遅れる。
そう、自身の吻が抜けない事に。
〈
腹を蹴り砕かれ、蟹味噌を四散させて事切れる潮招型。
今度は咽喉元に突き刺さる吻を手刀で折り、抜き去った吻を尻尾に絡んでいる波布海月型に突き刺す。
海月に脳や心臓は無いが、
今もって残っている臓器を掻き回され、波布海月型も行動不能となった。
ただ刺胞細胞を有する触手は千切れ、〈
只、硬い皮膚に守られ毒は通らないのだが。
残るは活きのいい芭蕉梶木型が相手。
〈
活け締めに関しては成功したが、立派な背鰭がボロボロになった事だけは惜しい。
[註*
まわしを取って強く引き付け、上からのしかかるようにして相手の膝を付かせる技。
語源は、技をかけられた力士の姿が、首を折って血抜きした鯖に似ていた事から]
〈
なんと、水面に氷が張ったのである。
その氷は第二
選手である守宮に扮した瑠璃家宮が、その元凶を見付け戦闘態勢に入る。
その元凶とは、水上の曲芸師こと吹越だった。
そして新たな三密加持に取り掛かった。
両手を軽く握り親指の爪と人差し指の爪の先端を合わせる。
左拳は伏せ、右拳の
『――オン・バサラ・サトバ・アク――』と
金剛薩埵・豪剣法は武器錬成術式だが、嘯吹は
只、凍った水面をそれは軽やかに滑り始める。
「滑るの楽しいぷ~ん。
そーれ、ぷぷんぷ~ん♪」
この滑りの秘密は嘯吹の履いている靴に有る。
嘯吹は金剛薩埵・豪剣法を用い、靴底に金属製の板を生成。
即席でスケート靴を仕立てたのだ。
更には両拳に金属製の
豪剣法ならぬ剛拳法と云った所か。
よほど楽しいのだろう。
然も
嘯吹の
これにより〈
嘯吹が仕事をしている最中、
彼らは〈
それも〈
怪しんだ瑠璃家宮は
自身の両手指を触手に変化させた。
触手先端は
作業員達が
その攻撃で守宮の正体を見抜いた彼らは、自身を体現する面を取り出し被る。
蝉丸が宮森の顔をした瑠璃家宮に契約を持ち掛ける。
「貴方、宮森さんではありませんね。
もしや……瑠璃家宮 殿下ですか?
早速ですが、僕と契約しましょう」
「契約とやらに興味は無い。
しかして蝉丸よ。
其方にはあの男の面影が在るな……」
蝉丸は目前の
彼の嫌味は無視し、好奇心旺盛な翁に釘を刺す。
「翁さん。
いつものクセ、出さないで下さいよ」
「ウ~ン、瑠璃家宮 殿下ノ体細胞ガ欲シイノハ山々デスガ……。
仕方アリマセン。
今日ノ所ハ引キ揚ゲマショウ」
再び〈
瑠璃家宮が触手を伸ばすが、〈
銃器を装備していない今、瑠璃家宮は外法衆にまで手が回らない。
⦅ここ迄の侵入を許すとはな。
瑠璃家宮は先程と同じく触手先端から墨を吐き、〈
相手に付着した墨は直ぐに固まったが、〈
それどころか、
◆
ザ・ランブルクリーチャー その二 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます