第九章 泡と水の狂漕曲

幕間 その一

登場人物紹介と粗筋でございます……(澄)



☆読者の皆様、比星ひぼし すみでございます。

 ここでは第九章前半に登場する主な登場人物達とこれまで粗筋あらすじを紹介いたしますので、是非ともおさらいして行って下さい。


※本項は登場人物の紹介と前章までの粗筋を記載しています。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承下さい。


 本項の情報は、作中の一九一九年一一月時点のものです。



◆ 主な登場人物 ◆



◇ 宮森みやもり 遼一りょういち ◇


 伝承学者を目指していたが、恩師の罠にまり魔術結社九頭竜会くずりゅうかいに入会してしまう青年。

 皇太子 瑠璃家宮るりやのみやの命を救った功績を認められ幹部に昇進した。


 宗教儀式や古代文明に造詣ぞうけいが深く、好きな煙草の銘柄はゴールデンハット。


 御霊分みたまわけの術法で人格を切り替える事ができ、人格を切り替えた時は『うら 宮森』などと呼称される。


 邪神崇拝者達の計画を頓挫とんざさせるべく九頭竜会を探っていたが、外吮山そとすやまの闘いで死亡してしまう。

 その際、比星ひぼし 播衛門ばんえもんから禁断の魔導書〈死霊秘法ネクロノミコン〉を肉体に据え付けらインストールされ蘇生を果たす。


☆わたしの息子を助けて下さった恩人です。

 この方のご厚意で、わたし達親子がどれほど救われた事でしょう。


 でも、わたしのわがままでこの方を裏切る事に……。



◇ 比星ひぼし 今日一郎きょういちろう ◇


 魔術結社の者達からは宮司ぐうじと呼ばれている。


 太古から邪神を崇拝しその復活を画策して来た比星 一族の末裔で、彼自身も邪神の落とし子だと云う(今日一郎 談)。


 転移魔術を得意とし、異界から邪神とその眷属の精神を召喚する。


 明日二郎とは双子で、今日一郎は兄に当たる(今日一郎 談)。

 

 彼の身体をむしばむ遺伝病の治療法確立を出汁だしに、九頭竜会に協力させられている。


 服用している薬が切れ顔色が蒼くなると、『上鳥居かみとりい 維婁馬いるま』と呼ばれる別人格が出現する模様もよう


☆わたしの愛する息子です。

 今日一郎は、邪神が自分の父親だと思い込んでいる……。



◇ 比星ひぼし 明日二郎あすじろう ◇


 宮司(今日一郎)が異界から呼び込んだ異形の弟。


 宮森の頭の中に居候いそうろうしていたが、大事な時に行方をくらます。

 その際は明日二郎 自身の記憶も無いらしい。


 楽筝がくそうの演奏や精神感応テレパシーの中継などもこなし結構多才。

 兄の今日一郎を尊敬しており誇り高い性格。

 食に関しては並々ならぬこだわりを見せる。

 幻夢界では数々の浮名うきなを流して来たらしいが……。


☆息子はこの異形を弟と思っているですって⁈

 わたし共は何と罪作りな事を仕出かしてしまったのでしょうか。

 悔やんでも悔やみきれません……(ここで風呂敷包ふろしきづつみの小箱を抱きしめる)。



◇ 比星ひぼし すみ ◇


 今日一郎と明日二郎の母(今日一郎 談)。


 比星 一族の奉じる邪神の子を身籠みごもり、その結果誕生したのが今日一郎と明日二郎であるという(今日一郎 談)。


 身体の障碍しょうがい白皮症はくひしょうを持つ上に病弱な体質。

 今日一郎と明日二郎を出産してから精神こころを病んでいる、と今日一郎は言っていたがそれは偽りで、精神状態は至って健全。


〈白髪の食屍鬼グール〉からはりんと呼ばれている。


☆わたしの本名は上鳥居かみとりい 琳で、母の比星 紗依さえは上鳥居 姶葉あいばといいます。


 魔術師の家系は通り名を使うことがつね

 人道にもとる魔術行使や儀式が発覚した際に逃亡し易くしたり、子供を養子に出して養子先の家系を乗っ取るなどの理由からです。


 貴方あなたの周りにも、通名を使って犯罪を繰り返していらっしゃる方がいるかも知れません。

 よくよくご注意を……。



◇ 〈白髪の食屍鬼グール〉 ◇


 今日一郎と明日二郎の祖父である、比星 播衛門ばんえもんを名乗る〈食屍鬼グール〉。


食屍鬼グール〉やその他の幻魔を率いて帝居を襲撃。

 今日一郎とその母親である比星 澄を連れ去った。


 他の〈食屍鬼グール〉とは一線を画す存在で、〈食屍鬼グール〉言語の外に人語を喋る事が出来る。

 又、本来は〈食屍鬼グール〉が使えない筈の魔術も自由自在に操る。


☆私の父で、本名は上鳥居 なお

 正真正銘の外道です。


 この男が、比星 家に起こった凶事全ての元凶といっても過言ではありません。

 この男の所業で息子は、息子達は……。



◇ 瀬戸せと 宗磨そうま ◇


 比星 家と懇意こんいにしている薬売り。

 主に、比星 家でお産がある時に重井沢おもいさわへ寄っていたようだ。


☆実は、わたしども比星 家と御縁の深い方です。

 父の逝去せいきょ後も良くして下さったのですが、結局は息子を利用する為の行為だったようです。

 もう、わたしは何も信じる事が出来ません……。



◇ 寅井とらい ふじ ◇


 帝都劇場の看板女優。


 帝都劇場付属技芸ぎげい学校卒業後、劇場売店の売り子をしながら女優を目指していた。

 現在は帝都劇場の看板女優を務めるまでに成長している。


 ひょんな事から知り合った宮森に好意を抱いているようだが……。


 看板女優の地位は、政治家連中相手にまくら営業してもぎ取ったもの。

 その事実を知った宮森は深く傷付く……。


☆宮森さんに思いを寄せていらっしゃる事も知らず、わたしがあのような事を口走ったばかりに……。

 許されざる罪を犯したわたしは、いったいどうすれば良いのでしょう。

 いっその事、宮森さんに……。



◆ 前章までの粗筋 ◆


 重井沢から帰還した瑠璃家宮 一行を待っていたのは、新たな外法衆の刺客しかく達。

 彼らを退けたのは、比星 今日一郎のもう一つの人格である上鳥居 維婁馬だった。


 そして遂にあやが出産。

 その娘は、生まれ乍らの〈異魚にんぎょ〉。

 名はてい


 一方の宮森は、瑠璃家宮の命を救った功績で幹部へと昇格。

 電磁波照射装置の試運転を皮切りに、非合法な仕事も任される立場となってしまった。


 しばし平穏な日々を送る比星 親子だったが、今日一郎が突然意識不明に。

 宮森も事態解決の為に召集され、今日一郎の精神内へとおもむく事になる。


 果たして、宮森は比星 家の呪縛を解く事が出来るのか⁈





☆遂にこの時がやって来てしまいした。

 読者の皆様には身内の恥をさらすようで忍びないのですが、比星 家の呪いが解けるよう見守っていて下さいね。


 第九章前半部分は、猟奇的、生理的嫌悪をうながす描写が多数あります。

 あらかじめご了承下さい。


 それでは、第九章前半部分の開始となります。


 聞こえるでしょう?

 わたしの犯した罪を運んでく子守歌が……。



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