幕間 その三

蝉丸の魔術百人一首



☆読者の皆さん、蝉丸です。

 作中に登場する固有魔術や覚者密教の秘術をご紹介しますので、ぜひ楽しんで行って下さいね。


 ここできちんと勉強しておかないと、契約の時に苦労するかも知れませんよ……。


※本項は作中設定の紹介です。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承下さい。


 本項の情報は、作中の一九一九年七月時点のものです。



◆ 覚者密教秘術 ◆



◇ 火天かてん自在法じざいほう ◇


 発火・消火・火力調整を行なう術法で、攻撃魔術の代表格。


 静電気で点火源を生成し発火させる方法と、不思議界(エーテル界)で火炎そのものを生成する方法がある。


 熟達すると、燃焼反応の起きにくい雨天でも火炎を生成することが可能。


 術式の特性上、風天・自在法と併用する場合が殆どで、活用次第では火炎の形状を変化させる事も出来る。


支燃物しねんぶつとして大気中の酸素を利用する場合が多いのですが、可燃性物資があれば酸素を使わなくとも行けます。

 代表的な物質としては、酸素を放出する酸化性固体(第1類危険物)や、酸化性液体(第6類危険物)がありますね。


 火気厳禁に混ぜるな危険。

 火の取り扱いにはくれぐれもご注意を……。



◇ 准胝観音じゅんていかんのん母宮法ぼきゅうほう ◇


 死体や人造生物に邪霊を憑依させ、人工生命体を操る術法。


 大昇帝 派では、人工生命体の事を雑仏ざつぶつと呼称している。

 術者の力量により操れる雑仏の数は増減し、行動精度は幅が出る。


 人間ヒトの死骸以外でも操れるが、昆虫や節足動物の死骸は操作が難しく、植物や菌類に至っては操れた術者の記録はない。

 但し、〈ミ゠ゴ〉が他の生物の死骸に寄生した〈ミ゠ゴ幻魔〉は例外。


 魂魄こんぱくが抜け出た死骸はまず操れる為、集団戦ではかなり有用。


☆武悪さんが得意とする秘術ですね。


 今作には、『死霊術・屍術』と呼ばれる所謂ネクロマンシーは基本的には存在できません(一部例外あり)。

 何故なら、邪霊と生霊いきりょう以外の霊は物質界に存在出来ないからです。

 少なくとも人間ヒトの霊は死亡後すぐにこんはくに分かれ、魂は幽界(五次元)に、魄は魔空界(一次元)に飛ばされます。


 では、物質界にとどまるとされる守護霊や先祖霊とは何なのか。

 当然、邪神や邪神眷属の霊となります。

 騙されないようご注意を……。



◇ 金剛薩埵こんごうさった豪剣法ごうけんほう ◇


 不思議界(エーテル界)で鉱物を生成する術法で、主に武器錬成術式として使用される。


 武器として錬成する代表的な鉱物は鉄。

 熟達した術者はダイヤモンドなども錬成可能。


 中将や気狐は、武器素材としては適性の低いダイヤモンドの組成を変化させ、多結晶ダイヤモンドとして用いていた。


☆不思議界(エーテル界)で鉱物を生成せずとも、土地や生物から鉱物を取り出し利用する事も出来ます。

 橋姫がよく煮干しを食べているのはその為ですね。



◇ 日天にってん焦光法しょうこうほう ◇


 電磁波を照射して対象を加熱する術法。

 原理は電子レンジと同じで、極超短波きょくちょうたんぱ(マイクロ波)を使う。


 二・四五ギガヘルツで水を加熱するのが主な使用法だが、風天・自在法と併用しての急速乾燥、周波数を変化させての通信電波攪乱かくらん、紫外線での殺菌など応用の幅が広い。


☆周波数を変化させると物体を透視できたりするのですが、便宜上別術式となります。


 それにしても、電磁波で台風を造ったり地震を起こせるなんて、未来の技術は凄いですね。

 そっちの世界線ではHAARPハープって呼ぶらしいんですけど、ご存知ですか?



◇ 聖観音しょうかんのん連壁法れんぺきほう ◇


 障壁バリアを複数展開する術法。


☆ここでは、障壁バリアに関しての疑問にお答えしたいと思います。


Q:障壁バリアで身体の周りを完全に囲むと呼吸が出来ないのではないか?


A:通常は可能だが、生成する障壁バリアの種類によっては不可能。


障壁バリアとは、丈夫な網を作る事にたとえられます。

 その為、網目の細かさも調整できるんですよ。

 通常は、水などの液体は通さないけど大気などの気体は通すサイズの網目を作ります。

 この場合、毒液を防ぐ事は出来ますが毒ガスは防げません。

 もし毒ガスを防ぎたければ、網目を細かくして気体を遮断しなければならないでしょう。

 当然、通常の呼吸は出来ませんね。


 網目の粗い障壁バリアにも利点はあります。

 網目を粗くする事によって、霊力の節約が見込めるのです。

 主な使用状況は固体との接触防止。

 要は、物理攻撃に対する防御ですね。



◇ 宝生如来ほうしょうにょらい宝珠法ほうじゅほう ◇


 霊力で宝珠を生成し、使用者の術を遠隔展開する術法。

 大抵の術法は術者のそばでしか使用できないが、宝珠を飛ばす事で射程増長が見込める。


 宝珠の制御方法は術者が直接誘導したり対象を自動追尾させるなどで、一定のパターンをプログラムさせる事も可能。


 当然、複数個の使用や精密動作には高度な空間認識能力が必要となる。


☆要は、『グラ◯ィウスのオプシ◯ン』とか『ガン◯ムのフ◯ンネル』みたいなものです。


 それにしても、宝珠四個を同時に操る天芭 隊長はすご過ぎますね。

 こう云うの、『ガ◯ダム』では『ニュー◯イプ』って云うんでしょ?



◇ 地天じてん造床法ぞうしょうほう ◇


 障壁術の発展形で、防御壁としてではなく足場としての機能に特化させたもの。


 接触時の衝撃を吸収して溜め込み、直後の跳躍時に反発力として開放する機能なども付加可能。


 主な使用法は、空中に展開して足場にする事など。

 造床に弾力性を付与し、その開放に指向性を与え物体を反射させるなども出来る。


☆外法衆の訓練では、巨大な造床を縦に設置して空間を囲い、その内部で組手くみてをします。

 詰まり、皆さんの世界線にある格闘ゲームで云う所の画面端ですね。

 橋姫との組手で画面端に追い詰められようものなら、コマ投げ食らって終わりですよ。



◇ 薬師如来やくしにょらい平癒法へいゆほう ◇


 病気や怪我の治療に特化した術法。


 細胞分裂を活性化させるため、使い過ぎれば細胞の老化を招く。

 細胞老化が進むと、最終的には治癒そのものが出来なくなる。

 また、遺伝病や魔術が原因の疾病には効果が薄い。


☆外法衆正隊員はほぼ全員が使用できますが、戦闘中での使用に止どめ、戦闘後には通常治療を行なう事が多いです。

 何故なら、急激な細胞増殖は細胞寿命を縮め、場合によっては後遺症が残るからです。



◇ 帝釈天たいしゃくてん雷撃法らいげきほう ◇


 電撃を放つ術法。


 大気中の塵埃じんあいなどを利用し静電気を生成する方法と、不思議界(エーテル界)で静電気そのものを生成する方法がある。


 熟達すると、静電気が発生しにくい乾燥状態でも電撃を生成する事が可能。


 術式の特性上、水天・自在法と併用する場合が殆どで、活用次第で電撃の形状を変化させる事も出来る。


おきなさんが中心となって進めている計画がありまして、その名を『最後の大軍団計画ラストバタリオンプロジェクト』と云うんですが、【序幕 & 第一幕 第七節 仙境にて その三】でこっそり言及されてるんですよ。

 どうやら、不死の兵士の量産に電気を使うみたいですね。

 実は〖フランケンシュタインの怪物〗と云う作品、小説のていで発表された、邪神崇拝者達のデモンストレーションだったのです!



◇ 烏枢沙摩明王うすさまみょうおう浄火法じょうかほう焚焼殺ふんしょうさつ ◇


 従来の烏枢沙摩明王・浄化法に、火天・自在法を組み合わせた合体技。


 燃焼に充分な酸素が得られなくとも、酸素欠乏や一酸化炭素中毒を引き起こせる。

 また閉所で充分な量の水があるならば、水蒸気爆発を起こすことも可能。


☆ナパーム燃料が含まれている為、少量の水では消せません。

 殲滅せんめつ戦にはもってこいの秘術ですね。


 ナパームに関しましては、十数年後に予定されている世界大戦で現有兵器としてデビュー予定です。


 結局魔術が先にあり、科学技術を小出しにして軍需産業が儲けを得る仕組みなのですね。



◇ 如意輪観音にょいりんかんのん戦輪法せんりんほう穿孔殺せんこうさつ ◇


 如意輪観音・戦輪法の術式構成を組み替え、円筒形の掘削機シールドマシンとして再構成した術法。


 鉱物や金属の破壊に適しており、円筒シリンダー先端部に設置された細かいいぼ状の錐片ドリルビットが更に穿孔力せんこうりょくを高めている。


☆戦闘中に新たな必殺秘術を考案してしまうあたり、天芭 隊長の非凡さがうかがえますね。

 それにしても、殺意あふれるフォルムは天芭 隊長らしいです。



◇ 月天がってん凍光法とうこうほう ◇


 対象の分子運動を抑制し凍らせる術法。


 物体を凍らせるだけでなく気温も下げられる。


 性質上、水天・自在法や風天・自在法との相性が特に良い。


☆まだ登場していない秘術に〘水月菩薩すいげつぼさつ造水法ぞうすいほう〙というものがあるのですが、凍光法との組み合わせで多大な力を発揮します。


 初代、二代目の隊長達は、今頃どうしておられるのでしょう……。



◇ 薬師如来やくしにょらい平癒法へいゆほう瞬療活しゅんりょうかつ ◇


 薬師如来・平癒法、韋駄天・神行法、月天・凍光法の合体技。


 神行法で対象の細胞増殖を極限まで高速化させ、凍光法で細胞が破壊されないりの温度を保ち増殖させる。

 その為、肉体的な損傷ならば極短時間での全回復が可能。


 弱点は平癒法と同じで、細胞分裂の回数を使い切ってしまえばそれ以上の回復は不可能。


 遺伝病や魔術が原因の疾病に効果が薄いのも平癒法と同じ。

 場合によるが、対症療法的な処置は一応可能。


☆今の所この秘術を使えるのはおうなさんだけですね。


 また媼さんの固有術式に、水などを媒介として回復術の効果を貯蔵すると云うものがあります。

 この時は水を用意せずとも、瓶などの器が突然に満たされるのです。

 確か、盟治めいじの御代に活躍した女性霊能者が同じ事を出来たとか。

 媼さん、若しやあなたは……。





☆読者の皆さん、覚者密教の秘術を存分に楽しんで頂けたでしょうか?

 今章で僕らが使った秘術は、また別の機会にでも紹介しますね。


 井高上いたかうえ 大佐がシベリアに釘付けになり、天芭 隊長も大怪我されてしまいましたので、先代の隊長がロシアから戻るそうです。

 ロマノフ王朝を滅亡に導いたその手腕、是非とも日本で発揮して頂きたいものですね。


 あ、ロシアでは暗殺された事になっているんですけど勿論ウソです。

 暗殺後に男根を切り取られてどこかに保管された……なんて噂もあるようですけど、真偽のほどは判りません。


 そちらの世界線では、ロシアのエ◯チカミュージアムで『ホルマリン漬けの男根』が展示されたようですね。

 因みに、通常二八センチメートルで勃起時三三センチメートルだったそうです。

『33』とは又、邪神の好む数字ですね……。


 では、【第九章 泡と水の狂漕曲きょうそうきょく】をお楽しみに!



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