外法衆侵入! その六
一九一九年七月 帝居地下 神殿区画
◆
気狐を誘導するべく瑠璃家宮 像を離れた〈
〈
〈
自身の有利を理解しているのか、
漢字表記を伝えたいのか、自身の呼び名だけ
「オレは『気狐』。
外吮山であんたらと闘った中将の弟子だ。
師匠をいたぶってくれてあんがとよ。
確か瑠璃家宮と神力を共有……だっけか、した上でみてえだけど。
はっきし言って、オレは師匠より
でもまあ、今のあんたらに負ける気はしねえな。
で、ちゃっちゃと
本調子じゃねえからって……手加減はしねえぜ!」
赤狐は吼え終わるや否やふたりに急接近。
〈
迎え撃つ〈
続く気狐の左斬り上げ。
基本的な動作ではあるが、体勢を崩した〈
そこへ割って入る〈
左甲殻椀で左斬り上げを
右手の
対する気狐は直ぐにでも〈
『ちっ……』と舌打ちし乍らも、思念で橋姫を叱った。
左甲殻腕では位置的に防御がしにくいので
気狐は
一見〈
逆に気狐はその敏捷性と勢いを充分に活かせている。
中将は双剣を使った手数重視の
彼の放つ一撃は重く、水分を無駄使い出来ない〈
何度か応酬を繰り返すも、気狐に押されるがまま後退する〈
もう
間合いを取った気狐が呟く。
「……あんたらの力の程はだいたい解ったぜ。
オレは蝉丸と違って、小難しい化かし合いとか
一気に
覚悟しな!」
「
高言した気狐は、金剛薩埵の
[註*
〖
既に成立している術法を強化したり、状態を変化させる際にも用いる。
三密加持の簡易版として捉えて良い(作中での設定)]
当然〈
気狐が施した術式は金剛薩埵・豪剣法。
もう既に三鈷剣を生成しているが、その真意はいかに。
思うように攻撃が通らない〈
〈
「でやああああああああぁっ!」
水を利用した
防御不能になる瞬間を捉えた一撃が、気狐の土手っ腹をぶち貫いた。
ぶち貫けなかった。
三鈷剣が伸長している握り柄の反対側からも両刃が現れ、
『何だと!』
〈
これ
気狐の操る双頭三鈷剣が縦回転。
〈
〈
双頭三鈷剣は流れるように縦回転。
左踵の
〈
「
双頭三鈷剣は縦回転を止め静かに横たわっていた。
「がはっ⁈」
気狐が裏拳を屈んで躱した際、双頭三鈷剣は既に突きの動作に入っていたのである。
背後を視もせず〈
彼女の
〈
その真意は直ぐに判明する。
〈
その中には当然銃器も在る。
「ハッ、いまさら銃に頼ろうとしても
橋姫に踏んづけられてまともなの残ってねえだろうしよ」
〈
弾丸である。
瑠璃家宮 陣営が外吮山で使った弾薬は、細胞
銃器が無くとも、弾丸自体を破壊する事で効果を得られる。
[註*細胞融解弾・爆裂弾=瑠璃家宮 派が魔術師用に開発した弾薬。
詳細は【第六章 大昇〈食屍鬼(グール)〉前篇 第三節 食屍鬼襲来! その三】を参照されたし]
外吮山での闘いの模様を伝送されていた気狐は、魔術弾薬の効果を
当然それを阻止するべく動く。
動けなかった。
〈
〈
押しても引いても動かない双頭三鈷剣に
剣を捨てたのだろうか……いや、捨てていない。
気狐は双頭三鈷剣を分離させていたのだ。
〈ハイドラ〉を貫いている刃部分はそのまま残し、元の長剣の形にして自由を得る。
そのまま前方へと跳躍する気狐。
長剣形態に戻った三鈷剣を〈
当然彼は躱し、三鈷剣は床に突き立った。
その所為で弾薬集めを一時中断するよりなかった〈
得物を捨てた気狐の考えは読めないが、元より自身の考えを押し通す事しか出来ない。
その
〈
一定距離を進んだ所で
「読めてんだよ!」
爆炎が気狐を包んだかに思われたが、彼は弾薬に含まれている火薬を風天・自在法で吹き飛ばし一気に鎮火させた。
このような消火方法を、爆風消火と云う。
爆炎の中から現れた〈
彼の手には、先ほど気狐が投擲した三鈷剣が握られていた。
その刀身が濡れている。
それは細胞融解弾を潰して塗布された、細胞融解素。
爆炎に隠れ、塗装作業に従事していた〈
製作が終わり実用に入る。
「おおおおおおおぉぉーーーーーーーーーーーっ!」
〈
三鈷剣の刀身は多結晶
攻撃を一点に集中させれば、いかに
防御不能と悟った気狐は、身を
翻せなかった。
「あなた……私に構わず!」
〈
このままでは三鈷剣で串刺しにされてしまい、塗布された細胞融解素の餌食になってしまう。
「おおおおぉぉーーーーーーっ!
え⁈」
「うそ……」
気狐の張った
策が上手く嵌まり上機嫌なのか、
「刀身の主な素材は炭素なんだぜ。
その炭素を始めとした鉱物を自在に操んのが、金剛薩埵・豪剣法だ。
金剛石にするもボロ炭にするも術者次第。
ちと、お勉強が足りなかったな!」
気狐は呆けている〈
蹴ったばかりの左足を戻し、背後で羽交い絞めしている〈
「ぐっ……」
今度は右前蹴りを〈
「うぶっ……」
蹴った右足を戻し、〈
〈
今度は両手を頭の後ろに回し、五指で〈
「ぐあああぁっ……」
いくら〈
両腕を引き剥がされた〈
先ほど上空へ蹴り上げられた三鈷杵が、気狐の手元へと戻る。
「わざわざ持って来てくれてあんがとよ……」
そう言い放つと、〈
彼は〈
結合三鈷剣を逆手右斬り上げの要領で引き抜く。
「あああああぁ……」
右脇腹から血と
「頼子オオオオオオォォーーーーーーーーーーーーッ‼」
冷静さを失った〈
首を
「だから
気狐はその場で後方伸身宙返りをきめ、両
跳躍の頂点に達し天地が逆様になる。
結合三鈷剣が直線を描く。
〈
◆
※演出の都合上デーヴァナーガリー文字を使用していますが、縦組み表示では正確な象形が表示できません。
正確な象形を確認したい方は、横組み表示にてご確認下さい。
対象のデーヴァナーガリー文字は〔
外法衆侵入! その六 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます