8 港
夜を迎えつつある港には何十もの船が停泊していた。
岸壁にはさまざまな人がいるが、
中でも派手なのは化粧を施した女性の一団だ。
通り過ぎる男達を誘うように流し目で声をかける。
そして引っかかった男を彼女らの店へと導くのだ。
ペリはそれを遠目で見る。
声をかけられそうになるとすぐに逃げた。
ペリはふと岸壁下の水面を見た、
何かが浮いている。
一つ二つではない。
沢山の丸くて小さなものが浮いているのだ。
それは赤ん坊の頭だった。
大きさは様々だ。
みな水面から目から上を出して見上げている。
そのうちの一つがペリと目が合った。
「ねえ、お母さんはどこにいるか知ってる?」
可愛らしい声で赤ん坊は聞く。
「いや、分からないね。」
彼らは純粋だ。
純粋なものほど関わると後が怖い。
ペリはそこから離れようとした。
「お母さんに伝えて、ここにいるからって。」
彼は返事をしなかった。
ペリは嬌声を上げながらじゃれている女性の集団と
それを見てにやつく男性の集団を見た。
彼らには水面の赤ん坊は見えない。
今までどれほどの赤子が流れて来たのだろうか。
母の胎内に似た、
だが冷たい海の中で彼らはずっと待っているのだろう。
だが、ペリには関係は無い話だ。
彼は踵を返し帰路についた。
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