エピローグ
エピローグ ――隣のUMA――
連休が明けて登校して、一番にしたことがある。それは――。
「はい、受理しました。これで入部完了ね」
「よろしくお願いします、森山先生」
それは、正式にUМA部へ入部することだ。
もう宇宙人のミューピコはいない。本物のUМAに会うことなんてないかもしれない。けれどここなら俺はいつも全力全開でいけそうだ。だいたいUМAはれっきとして存在する隣人みたいなやつらだ。もしかしたらまた出会えるかもしれない。
「うん、千賀院くんも喜ぶと思うわ。私はこの前の日曜日の活動も、道に迷って行けなかったし。それに、これで部員も三人に増えたしね」
「え……、三人?」
職員室を出た俺は、ダッシュで教室へと向かう。
そこには登校したばかりの葵がいた。
「葵! お前もUМA部に入部したのか!?」
そう、森山先生が言うには、あの今宮葵がUМA部に入ったというのだ。
「そうよ悪い? というか叫ぶな。耳がキーンってするし、恥ずいわ!」
「あ、すまん……。けれどお前、部活には入らないって」
確か動画制作が忙しいからどうのって言っていた。どういう心境の変化だ?
「あのゆるい部活ならプライベートの時間も確保できるでしょ? それに……」
「それに?」
「ミューピコちゃんは私たちの事をUМA部の仲間だと思っているんだから、勝手に抜けたらかわいそうじゃない」
「葵……!」
「わーっ! 叫ばないでよ駿! 恥ずかしんだから! 絶対叫ぶなっ!」
……叫びまくって注目を集めているのは、葵の方なんだが。
☆☆☆☆☆
「はあ、部室が遠いのは最大の難点ね……」
「そう言うなよ」
放課後、俺たちはそろってUМA部の部室である理科準備室へと向かう。
俺たちの教室とは正反対にある、遠い部室だ。
「やあ君たち、よくぞ来た! きっと正式入部してくれると思っていたよ。さすがは僕の見込んだ二人だ!」
扉を開けると迎えてくれるのは、最都中きっての天才にして変人の、今日も元気な千賀院丈先輩。今日もなにやら怪しげな機械を並べて、早くも実験中みたいだ。
「ジョー先輩、その機械はなんですか?」
「ああ! これはケルピー発見器さ!」
「ケルピー? ……それって確か、スコットランドの湖とかに住むって言う、馬の精霊みたいなやつですよね。ヨーロッパ版河童みたいな」
俺がそう言うと、二人はぎょっと目を見開いた。
「……駿、なんであんたがそんなこと知ってんの?」
「連休中図書館で色々調べたんだよ。少しは知っとこうと思ってさ」
何度も言うけれど、未知の生物とか伝説上の生物とかが、まるで隣人のように本当に身近に存在するというのはこの一週間でずいぶん思い知ったことだ。だから少しずつでも知ろうと思った。それが異文化コミュニケーションだからだ。
「駿が図書館……。今度こそ世界の終わりじゃないかしら……」
と、絶望の表情を浮かべる葵。失礼な。
「でもケルピーがいるのはスコットランドですよね? なんでここで準備しているんですか?」
「それはだね……。あ、先にもう一人の新入部員を紹介しよう。我が二年二組に本日転入してきた生徒が、さっそく入部を希望してね」
もう一人の新入部員? しかも転入生の先輩。
それがいきなりこんな怪しい部活を選ぶか? どんな人だろう?
「さあ、入って来たまえ」
先輩がそう言うと、理科実験室側の扉ががちゃりと開いた。隣部屋に待機していたのか。
それは女子生徒だった。制服を着て、銀色の髪の毛で、チョコレート色の肌をしていて……というかあれは――!
「ミューピコ!」
「ミューピコちゃん!」
俺と葵が同時に叫ぶ。ミューピコは照れたように笑った。
「転入生の
「さあ、メンバーもそろったことだし、早速UМA部の活動を始めよう! 我らUМA部は、未確認生物を発見し、調査し、研究し、そして友好を築く部活だ!」
俺たち人間が思うよりもずっと、宇宙人や妖怪、その他の不思議生物たちは当たり前みたいに存在しているのかもしれない。それこそそう、まるで隣人のように。
だから俺たちは全力でそんな隣の
突撃!隣のU・M・A! 青木のう @itoutigou
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