奇妙なアルバイト(その10)
𠮷岡家の屋敷の隣に、野放図に伸びた芝生の前庭のある、三階建ての洋館が聳えていた。
門扉には管理会社の不動産会社のプレートが掲げられていた。
恐らく相当高額な売り物件なのだろう。
ペンキの剥げた白い外壁の洋館は、腰よりやや高い白いフェンスで三方が囲われていた。
白いフェンスは𠮷岡家のフェンスと接していたが、10センチほどの隙間があった。
オンボロ車を洋館のフェンスの前に停めて目隠しにし、可不可を芝生の前庭に放った。
洋館に住人がいれば警報が鳴るのだろうが、ひとのいる気配はまるでなかった。
10分ほどすると、可不可がもどって来た。
違法駐車を咎められそうなので、可不可を助手席に乗せてすぐに発車した。
「洋館のフェンスを乗り越えてすぐの吉岡の屋敷のフェンスの地面すれすれのところにひとひとりが這って通れる穴がありました。その先は台所の勝手口です。穴の切り口は比較的新しいです」
「通りに面していない勝手口だと、簡単に開く内鍵か、下手をすると鍵そのものがないかもしれない」
ハンドルを握りながらそんなことを言うと、
「百回議論するより一回見に来い、とかいうことわざがありますね」
可不可が首をひねった。
「ああ、百聞は一見に如かず、ね」
「それそれ。物知りですね」
犬に褒められてもうれしくも何ともない。
「そのフェンスの穴から犯人が侵入した確率は?」
「100%」
「匂いは?」
「わずかに残っていました」
「これで、菱田くんが手引きしたとは言わないよね?」
「でも、百合子さんがこの犯罪に全く絡まなかったとは断言できません」
まったく、負けず嫌いの犬だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます