13 家

 目を開けると木の幹にもたれながら座っていた。いや寝ていたのか?


「んん…」


 起きあがろうとしたが、うまく力が入らない


「なんか、重い…」


 下を見ると、白い猫……うちの飼い猫のミルクが気持ちよさそうに腹と膝の上で座っていた。

 散歩中に俺を見つけて一緒に寝ていたのだろうか


「お前も寝てたのか」


 そう言いながら優しくミルクを撫でるとゴロゴロと喉を鳴らした。




 どうやら悪い夢でも見ていたようだ。




 俺が暗い顔でミルクを撫でてると、遠くから母さんの声が聞こえてきた。


「夕立…?」


 みると、母さんが少し遠くで立ち止まっていた。両手には重そうな買い物袋を持っている。


「あんた、こんなところで何やってんの?」

「いや……寝、てた…多分…」


 俺がそう返すと呆れた顔で母が言った。


「こんなところで寝ないでよね、危ないでしょ」

「そうだね」

「買い物袋持つの手伝って」


「はい…」と返事をしながら、ゆっくりミルクを持ち上げ、起き上がる。

 そしてミルクを地面に下ろし、大きなバックとバットを背負い、ミルクに「ご飯だよ」と呼びかけながら母親の元に行き買い物袋を一つ持った。


「今日の夜ご飯は餃子です」

「おお……たくさん食べたいからたくさん餃子作って」

「はいはい」


 そうして、無事家に帰り、ミルクと遊んで、母さんの作った大好きな餃子を沢山食べた。

 そんな夜を過ごすだけで、悲しかったことも、苦しかったことも、悪い夢のことも、いつもすぐに忘れられた。

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