第14話 魔王様と静かに動く悪意
「魔王様に申し上げます」
そういって、先日高橋家の実家に置いてきたケットシーの使者の妖精が訪ねに来たのは春も終わりがけの暑い日の事。
魔王城ではなく王都にある高橋家に現れた。
「何かあったのか?」
「はい。最近高橋家の領内に入ろうとする魔族の数が増えました。そのほとんどが人の皮をかぶった魔族です」
「ふむ…王都には結界を張ってあるが、王国となると準備が必要だな。その魔族はどうした?」
「領外にいる妖精たちとも協力して消滅させておりますが、強い魔族がこれば歯が立ちません」
「で、あろうな。
妖精は恭しくおじぎをする。
「高橋家の者は息災か」
「大奥様が療養中です。屋敷を離れて別荘におられますが、護衛とメイドがついており、そちらもお守りすべく森の動物達と警護に当たらせております」
「そうか……わかった」
「大規模結界となると、魔塔に要請しなくてはいけませんね」
「いや、それより魔石を使った方が楽だ。魔法使い複数人で結界を張るより、私が魔石を介して張れば、国内にいる魔物達に許可印を押すだけでゴルデンの許可された魔物は滞在できる。魂への印となるから、皮をはぎ取っても無意味だしの。問題は魔石の設置だが、デンエンの各領主の家で見張れんだろうか?問題が起きれば魔石の色が変わったり、ひびが入る。魔物が侵入しようとしたらすぐ分かるしな」
「分かりました。明日朝一で連絡を付けます」
「私も朝には準備できているよう用意をさせてある。昼までには全て終わるだろう」
各領主への設置の仕方の説明のため、やはり魔塔の魔法使いを数人呼ぶ事になった。全てを高橋達2人でやるには周る領地が多いからでもある。
最初に設置の仕方を魔法使いに指導し、それを手分けした領主たちの家でも説明させる。
魔王が最初に訪れたのは、王都に隣接する領地だった。
「魔王陛下、宰相様、いらっしゃいませ」
領主夫妻が出迎える。
「ん?…そなた、確かダルキアス・リリーと言ったな」
「は、はい。セーブル・リリーの妻、ダルキアスです。お久しぶりでございます」
王女のお茶会に参加していた取り巻きの一人だ。
「ふむ。これだけ王都に近いならお茶会に参加しやすいな。でも
「私の実家の場合、領地の管理や維持で忙しいのでお茶会はめったに開かないと思いますよ。王都に近い領地は商業が活発で収入元が多く、主な仕事は財源の管理です。その分女性からの人気が高くて側室を持つことが多く、夫人も愛人を持つことが多かったので、家からなるべく出さず愛人を作れない様な文化になってきただけです。その点魔国の様な
「浮気防止という事か。夫側は側室作れる分不平等だな」
「私は側室などもちません!」
セーブルが慌てて否定する。
「確かに側室を持つ方もいますが、夫婦の仲が悪いけど政略的に離婚できなくて持つ者や、後継者がなかなか産まれず、仕方なく夫人の了承を得て側室を持ち、生まれた子供は正室の子として育てる、という方もいます」
「誠実な者もおるという事か。まぁよい。今
国内の領主の家に魔石を設置し終わり、既に出入りしている許可された魔物達に印を押し、大規模結界を張り終わったのは予測通りお昼前だった。
これでデンエン王国内に悪意ある魔族は入ってこれなくなった。
もう国民がいつの間にか殺されて中身が入れ替わっているという恐怖は無くなったのだ。
何も知らない国民がのんびり過ごす夜。
高橋夫妻ものんびりした夜ではあったが
「ルクセル…私達はまだ結婚して1年経ったばかりです」
「…だが、私は魔族でお主は人間。子供は…」
珍しく、
「まだ分かりませんよ。それに私は側室を持ちたくないんですよ。あなたが子供が欲しいから、と魔族の愛人を持つのも嫌なんです。お茶会の時王女へは直接苦情を言いましたが、取り巻きの方々については何も言えてなくて少々意地の悪い事を言った結果、反論で余計な事を言われるとは考えれませんでした。私もまだまだです…」
「確か…女同士の戦いに口を挟むべからず、じゃな」
「魔国のことわざですか?」
「うむ。なんにせよ、急いたところで仕方のないことだしな…まずは開花がこねば無理じゃろうし開花しても駄目ならそれから考える。側室や愛人は候補から外しておこう」
「はい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます