第13話 魔王様と衣装合わせ
侯爵アスタロトは、少し怒ったように、
「ルーちゃんがどうしてもって言うしぃ、あの宝石見たら良いわって言うしかないじゃない!」
ここは魔王城の衣装室。
と言っても魔王城の中なのでかなり広い。
今回アスタロトはルクセルの新しいドレスの衣装合わせの為に来ている。
前回は絶対見せないと言っていたが、
「ルーちゃんにふさわしい宝石を選ぶ目があるんですもの。口出しはさせないけど、見せてあげるだけ感謝しなさい」
「ありがとうございます」
新しいドレスは、当然その宝石とルクセルが美しく見えるようデザインされたものばかりだ。
普段の仕事着は人間の騎士の様な感じに少しレースや飾りを女性向きにしただけで、動きやすさやデザインもそこまで悪くはない。
ただ、やはりドレスを着せたいアスタロトとしては、結婚するまで必要最低限しか作らず着ないルクセルを説得するのが大変ではあった。
「女の子なんだからおしゃれな服着てよ~」
子供の頃から、ルクセルはなかなかかわいい服を着たがらなかった。
どうせ戦って汚すだろうし、動きにくいのを嫌ったからだ。
父の様に強くなりたい。
おしゃれをしても見せたいのは両親だけであり、それで他のオスがまた近づいてくるのが嫌だった。
とはいえ、結婚してからは大分軟化し、特に宝石を貰ってからは魔国のメスらしく、自慢の宝石を見せるためのドレスが欲しくなる。
アスタロトにしたら喜ばしい事であり、腕が鳴る。
「そういえば、ルクセルの戦闘用の服はアスタロト公がデザインされたのですか?」
「ええ、そうよ」
「すいませんが、新しく作り直してもらえませんか?」
「何ですって!?」
「あの服、肌の露出が多いので無くして頂きたいんです」
「…そうね、既婚の子がそれはいけないわ!あんた良い意見いうじゃない」
「…アスタロト、ノリノリじゃの」
「ルーちゃんがかわいい服着てくれるのよ?良い意見は採用するけど、あんまり調子に乗って口出しはさせないわよ」
「私は服のデザインについて素人ですし、ルクセルはかわいい系の服が似合う
と思うので、ぜひアスタロト公に沢山作って頂きたいです」
「アスタロト、頼んだ!」
「もっちろんよ~♪」
「じゃ、これはOKという事で、本縫いしておくわ」
「うむ」
次は、とトルソーに着せてあった服を取り、助手のメスがルクセルの着ていたドレスを脱がせる。
「ルクセル!!」
途中から見学に来た
衣装合わせの際、ルクセルは下しか履いておらず、ほぼ裸に近かった。
「あ~ら、びっくりさせた?衣装合わせの時下着は邪魔だからいつも脱いでもらっているのよ♪」
「せめて下着ぐらい…いえ、下着姿でも着る時はフィッティングルームぐらい用意して下さい!」
職場から直接来ているので、
身長差があるのでかなり大きい分、ルクセルの下肢まで隠せれる。
「あら、あんた結構筋肉あるのね」
アスタロトは珍しく
「ルクセル、衣装合わせの時は毎回こんな姿でしているんですか?」
「う…ん、アスタロトは子供の頃からの知り合いで…毎回の事だし……」
ルクセルの頬が赤く染まってもじもじしている。
「…あんた、オスの服をメスに着せるってどういう意味か分かってないでしょ」
「これは…ありですね」
「寝室でやって頂戴!」
アスタロトはしぶしぶフィッティングルームを準備した。
結局、その後10着ほど試着し、サイズ調整や微調整とやらをやって、後は完成品を今度持ってくるという形になった。
アスタロト一行が帰った後、当然の様に説教が始まる。
といっても魔族のいなくなった衣装室で、何故か横抱きのまま膝に座らせられている。
「アスタロト公は男性ですよね?」
「そうだが、結婚しておる」
「しかし…」
「…………相手はトルソー(縫製用人形)だ」
「…あ、それで以前フィギュアに敵意を」
「トルソーにガッチガチに宝石をつけまくって、私の妻と言って見せられたのは今から50年ほど前かのぉ……あの頃はまだ幼体だったが、驚いた……人形が意志を持った魔物もおるが、あのトルソーは意思もない。スタイルが良いと言われても、他のトルソーとの違いが分からぬ」
「……心中お察しします。やはり一応男性なんですね」
「そじゃの、しゃべり方はあれだが、一応オスらしい…でもオスとは言われたくないそうだ……」
「そういえば、魔国ではオスの服をメスに着せるのはどんな意味があるんですか?」
びくっ!!
あっという間にルクセルの顔が赤くなって下を向く。耳まで赤い。
「慌てすぎて収納から取り出すという発想も浮かばず脱いでしまいましたが、一応今後の為の参考に教えて頂きたいです」
「……他の者がいる場所ではめったにやらぬ。着ていた服を着せるのはせめてコートや上着などで、それでも十分意味はあるのだが…このメスは自分の物というアピール方法で、他のオスへの威嚇でもある」
「では問題ありませんね」
「お主はぁ……」
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