第4話
…………よし。片付けは………した…。一応。
…………足を怪我するようなものは下に落ちてないし………見られて困るようなものも、見えるところにはないし…………文句言われないくらいには掃除した、はず…。
てかどうして
僕は窓の外を見る。ポツポツと静かに降る雨。昨日の夜から止まずに降り続いている。今日、っていうのはもしかしたらちょうどよかったのかもしれない。どうせ雨じゃ外で遊んだりできないしね。
僕はふと思い立ち、窓を開ける。蒸し暑い熱気が部屋の中に流れ込んでくる。
この前、雨は落ち着くから晴れよりは好きって言ったけど……やっぱり雨はいい。雨が落ちる音は癒されるし、厚い雲が太陽を隠してくれるから痛くもない。それに……全て飲み込んで隠して、消してくれそうだから。音も視界も感覚も何もかも、さ。
…………それにしても
玄関の方を見た僕の目に投げ出された黄色の傘が………。
僕は駆け出していた。嫌な予感がした。ただ、一直線に玄関を目指して。
「大丈っ………。」
扉を開けた僕は言葉を失う。黒髪の君がそこに倒れていた。
「ごめんごめん。驚かせちゃった。言っておけばよかったんだけど……。今日に限って雨だとは思わなかったや。」
僕のベットの上に座る
「曇りが嫌いって言ってたけど…偏頭痛持ち、とか…?」
「そんなんじゃないって。別にどこも痛くも痒くもないから。」
「それならどうして…!」
自分でもどうしてこんな必死になるのかわからない。でも……もう自分の前で誰かが倒れるのは………
「……私達が初めて出会った日も、こんな雨の日だったよね。」
………?
「やっぱり覚えてないかぁ。て言ったってこの姿でわかられても怖いけどね。」
「……私ね、人間じゃないんだよ。」
「え………?」
「妖狐って言って伝わる?優には無理か。私は狐の妖怪なの。…………流石に妖怪はわかるよね…?」
俯く僕の顔を覗き込む
「え、で、でも
「人間の姿に化けるなんて簡単だよぉ。だって私狐だよ?狐に化かされるなんて言葉があるくらいの狐だよ?優は今、私に化かされてますっ。」
僕の反応を見て
「優は覚えてるかなぁ。優が小学生の頃にね、私、一回優に助けられてるの。」
助ける……?僕、人間は……
「だぁかぁらっ!私、人間じゃないって言ってるでっしょ!」
いやでもどう見ても人間で……………あ、早めの厨二病?それなら夢壊さないように話合わせた方がいいかな…?え、でもそれならそれで僕、すっごい迷惑なんだけど……。でもそうだとしたら…早過ぎません?見た目からして六歳。君には六、七年は早いかなぁ〜。あ、でもそれならあれ……えっとぉ………自宅警備員とか、陰キャ、コミュ症。そこらへんの単語知っててもなんら不思議はないわ。………あれ…?ちょっと待てよ…。こいつ、僕の名前最初から知ってたよな…?…………え、ストーカー…?
僕が頭を回転させてたどり着いた
「さっきから……勝手に………言わせておけばぁ…………。」
僕は肝が冷える感覚がする。………あぁ…ここ、暑いのに寒いなぁなんて……。なんでだろ…。。
「私はっ!厨二病でもっ!ストーカーでもっ!六歳でもありませんんっっ!!」
………耳痛………。
「本当の本当に妖狐なのに、どうやって説明しろって言うのよ?!!勝手に厨二病扱い?終いにはストーカー扱いですか!?!やめてくれません!??私そんなに落ちぶれてませんけど?!?」
「あぁ……はいはい…。君はこういう……白い薬、お兄さんかお姉さんにもらって」
「薬中でもありませんんっっ!!」
………まあ薬中の人は
「丸も綺麗に描けますけど?!!いい加減変な疑いかけるのやめてもらっても??!」
だめだ……話に………話……?あ、あれ………?僕…………
「優はしゃべってないよ。」
もう呆れ気味になった
…………僕は話してないのに、
「超能りょ」
「妖狐だってっ!!!」
…………だめだ……。拉致が
「拉致が開かないはこっちだよっ!この頑固頭!!」
「あぁわかったわかった。優は見ないと気が済まないタイプなんだね?そんなに見たいなら見せますよぉ〜。私、優と違って大人なんでね?大人の余裕ってのがあるんですよ。」
それを
「大人の余裕があるんで裸体を見せろって言われたってできるんですぅ〜っ!」
………………は…?ろ、露出きょ
「はいっ!これが私ですっ!優くんがどうしてもって言うから仕方なく見せたんだからねっ?いい加減信じてもらえません?」
僕は見せろなんて一言も。そう反論する余裕はもうなかった。ただ、目の前の光景に呆然とすることしかできなかった。だって……
「狐がしゃ、しゃべ…ばあ、」
「だから言ってるじゃん。私は妖狐だって。………ねえもう戻ってもいい?」
僕はただ何度も首を縦に振る。口は開閉するだけで言葉は出てこない。
「あぁもう…無駄な妖力使わさせられたぁ…。」
その言葉と共に、服の上を陣取って座っていた狐は消え、
「あっ…。」
僕は思わず声を漏らす。さっきの狐、もしかして………
「こんちゃん…?」
その懐かしい名前を呼ぶと
「覚えてるのっ!?」
「な、なんとなく…。もっと毛並みが汚れてた気がするけど…。」
「そりゃああの日から何年経ってると思いでぇ〜。」
……こんちゃん。僕がそう呼んでいたのは小学校からの帰宅路。雨の日のいつもの道に見つけた知らない小道。そこにいた薄汚れた狐のことだ。コーンって鳴いてたからそれでなんの動物かわかる。そう思ったのに親はそう鳴くのは狐しか思いつかないけど、こんなところに狐がいるわけない。の一点張り。そんなわけわからない動物を飼う許可なんてもらえるわけなく…。
「優がくれた黄色の傘、私今も持ってるよ。あの時はほんとありがとね。」
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