第12話


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「誰?あんた」

肩を掴まれた圭介さんが振り返り、呟いた。

『おまえが誰だよ』

庵司は圭介さんの胸ぐらを掴んで席を立たせた。慌てた俺は自分も勢いよく椅子から立ち上がってしまう。

「ちょっ!庵司っ!!やめてよっ!」

『雪乃…俺が居ないとほんっとダメだな。ネコは散歩になんか出ないんだぜ』

「なぁんだ…お前が雪乃くんの?そんなに心配なら首輪でも付けとくんだったなぁ?」

圭介さんも庵司の胸ぐらを掴み返した。

一触即発ってこういう時に使うんだろう。

焦った俺は二人の掴み合う手を引き離そうと必死になる。

二人の力は俺なんかじゃビクともしない。

『ふぅん…で?俺のネコの味はどうだった?フェラなんか俺がしっかり仕込んだから、その辺の女より上手かっただろ?』

「庵司っ!!」

俺の短い叫びに圭介さんが庵司の手をバッと振り解いた。

「雪乃くん…コレ。あと、悪い事は言わない。別れた方が良い」

「圭介さん…」

コレと言って胸元に手渡されたのは居酒屋のクーポン券だった。

ここで働いてるって言いたかったんだろう。

俺はただ困ったように名前を呟くしか出来なかった。

「じゃあね!あぁ…庵司くんだっけ?早く別れてあげな。君に雪乃くんは勿体ないよ。それじゃ」

『ハッ…好き勝手言ってんじゃねぇ』

圭介さんは振り返らず支払いを二人分済ませて店を出て行った。

残された俺と庵司。

機嫌悪そうに向かいの席にドサッと腰を下ろす。

出て行く圭介さんの後ろ姿を見て、頬杖をつくと庵司が言った。

『雪乃…あぁいうのが好きなの?…優男って感じだな。SEXは?他の雄はどんな味だった?』

店の大きな窓から圭介さんが遠ざかるのが見える。

「や、やめろよ…そういう言い方…」

手の中のクーポン券をクシャッと握りしめた。

『雪乃ぉ…た、だ、い、ま』

庵司はニッコリ微笑んだ。



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