第564話 ピアノ

 学校の奥の方に、ピアノが置いてある。


 奥の方、と言うからには普段誰も通らない。


 そこにたまたま用事があった。


 近くに行くにつれて、ピアノの音が聞こえてくる。


 誰もいないと思っていたから、びっくりする。


 そもそもそこにピアノがあることを今知った。


 音色からは、美人な人なのだろうと想像するほど綺麗な音色が聞こえてくる。


 覗いてみると、クラスで1、2を争うほど、地味な子が弾いていた。


 まあ、奏者の顔と音色に何も関係はないか、と邪魔しないようにそっと美しい音色に耳を傾けていた。


 しばらくすると、興が乗ってきたのか、だんだんと力強い音色になる。


 それと同時に、彼女がかっこよく見えてきた。


 思い返してみれば、最初の綺麗な音色の時も普段の地味な印象よりは、美人に見えたのだ。


 ピアノの音色の印象が乗り移ったのだろうか。


 テンポが速くなるにつれて、鼓動も速くなる。


 演奏が終わるころには、僕は彼女に惚れていた。


 

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