第563話 誕生日

 誕生日を祝う理由がわからなかった。


 歳をとるだけで、それの何が祝われるに値するのか。


 ましてや、365日などと、キリの悪い日数なのに。


 誕生日を意識していなかったから、自分の誕生日なんて覚えていない。


 誕生日なんて意味がないと思っていた。


 彼女ができるまでは——。


 彼女ができて、彼女が生まれて、今まで生きていてくれてありがとうと、思えるようになった。


 その感謝を伝える区切りとして誕生日を意識するようになった。


 自分の誕生日は覚えていないけれど、生まれ直した気がした、付き合った日を誕生日のように扱う。

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