第14話 檸檬

「お、檸檬売ってる」

 近くの八百屋を通った時、とても綺麗な檸檬が店頭に陳列してあるのに気付いた。

「レモンエロウの絵の具を固めた、か。確かに、この色はそう感じるよなぁ」

 高校の国語の授業を思い出し、呟く。

「これが爆発するのか。いや、ただの妄想だったけど」

 檸檬を一つ、取ってみる。

「冷た。この檸檬独特の匂いもいいよなぁ」

 夏は終わったとは言え、まだ暑さが残るこの季節に、冷えた檸檬はたまらない。

「スカッシュ……、シャーベットもいいよなぁ。2、3個買っていくか」

 もう2個ほど、檸檬を取るために手を伸ばす。

「あ……、ごめんなさい」

 もう一人、同じタイミングで檸檬を取ろうとした人が、いたようだ。手が当たる。その手も、冷たかった。

 レモンの匂い。

 香水をつけているのだろうか。この檸檬とは違う、レモンの匂いがした。

「こちらこそ、ごめんなさい」

 甘く、透き通った声。

 顔を上げると、キラキラと輝く白い肌。


 ——爆発した。

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