第15話 電子レンジ

 コンビニ弁当を電子レンジに入れ、蓋を閉じる。


 バタン

 ポチ

 ヴ——


 電子レンジの中が明るくなり、コンビニ弁当が回り出す。

 この待っている時間が好きだ。

 多分焚き火をずっと見てられるのと同じなのだろう。

 見ていると落ち着く。

 

 コンビニ弁当を食べる家庭は寂しい。。

 電子レンジで温めるものは愛がない。

 巷ではそう言われているが、僕はそう思わない。

 女手一つで育ててくれた母は、朝早くから会社に行って、夜遅くまで働いた。

 コンビニ弁当を買ってきて、一緒に食べてくれた。

 僕のために、料理を作る時間を削ってでも働いていた。

 そこに、愛がないわけがない。

 お陰で、何不自由なく大人になることができた。


 それに、家庭の味が電子レンジで温めるだけで味わえる。

 コンビニ弁当を温めるだけで、あの頃を思い出せる。

 母が亡くなっても、あの味が食べられる。

 

 チン


 ——いただきます。

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