* とろけるくも *

とけ落ちる雲。

とけ落ちる雲の波間にのぞく人々の家。

地上に残るその跡は次第に彼等を包囲していく。

誰も気付かず 物音もせず 見渡す限りは灰に染まる。

たった一つ

輝く庭と家とその主とだけを残し 見渡す限りは灰に染まる。

主は雲のきまぐれに ほんの一歩の自由もない。

庭には一つの銀色の 馬に跨がる騎士の像。

窓から見える小さな騎士の像だけが、主の一つの希望だった。

窓辺に佇む微笑みだけが、騎士の一つの希望だった。

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