リサ

「お久しぶりですわ。ダイナ、そしてアイリ」


 入ってきた少女はダイナとアイリに声をかけた。


「久しぶりだなリサ。元気にやっているか?」


「ええ、おかげさまで順調ですわ。この前の一件をかたづけてくれたお陰でやりやすいですわ」


 キラキラとしたオーラでダイナに親しく話しかけた。


「だ、誰です?」


 初めて見た金髪縦ロールの衝撃で戸惑ったカリナンが恐る恐る尋ねる。


「リサだ。前の戦争で、何度か一緒に戦った事がある」


「同じ部隊だったんですか?」


「いや違う部隊だったが、何故か一緒に行動する事が多くてね」


「よそよそしいですわね。私の華麗な戦いぶりを見ておられましたのに」


「後方での管制、オペレーティングが多かっただろう」


 額に手を当てて天を仰ぐ大げさな挙動をするリサにダイナは突っ込みを入れる。


「そ、それでも結構戦いましたし、私の指示は完璧でしたわよ」


「確かにな」


 図星を指されて動揺するリサは反論しダイナも認める。

 なんだかんだで、人を認めることを躊躇わないダイナであり、人物鑑定眼は短い人生経験の中で濃い経験をしたため優れている。

 しかも忖度、裏表無しに、ストレートに言うのでド直球で威力がある。


「あ、ありがとうございます……」


 それを知っている知人はダイナに褒められたことを嬉しく思う人が多い。

 アイリも、最近はカリナンも理解している。

 照れている様子からリサもダイナのことをよく理解しているようだ。


「おう、揃っているか」


 再び扉が開くと大柄の、筋肉質の男性が入ってきた。

 目つきが悪く、ヤクザと一瞬思うが、放たれる殺気は、ヤクザの比ではなく、誰もが目を逸らした。


「ここだと目立つな。予約した部屋に行こう」


 と言って男は自分の事を棚に上げて、店の奥の個室へ我が物顔で行く。

 その様子を見てダイナは呆れる。


「これだから田代は」


「上官に敬意がないな」


「元だろ。それに人付き合いを押しつけて」


「上手く行っただろう」


「自分が嫌なのを押しつけて生まれた偶然だろう」


「自業自得と言うんだ。悪い事でも良い結果を生み出すことがある」


「自分が悪いって自覚があるのかよ」


 田代の言動にダイナは呆れながらも付いて行き、他の少女三人も付いていく。

 オタクにヤクザと美女三人。

 どういうグループなのか店内の人々の好奇心を駆り立てたが、同時に危険を感じたため、それ以上の詮索はしなかった。


「うん、美味いな」


 部屋に運ばれてきた料理、分厚いステーキを口に入れて田代は言う。


「お口に合う料理を選ばして貰いましたわ」


「確かに美味い」


 ダイナもハンバーグを食べながら不本意だが同意した。

 好みの味、ハッキリと旨味が分かる肉汁。それが良い。

 アイリも、黙ったままパスタを食べている所を見ると文句はないようだ。


「お口に合いませんでしたか?」


「いいえ、美味しいです」


 話しかけられてカリナンは慌てて答える。


「そう、良かったわ。初めてお会いしましたからお口に合うかどうか不安で」


 リサはカリナンに話しかける。

 だが、その視線にカリナンは怯えた。

 観察しているのが気遣いからではなく、値踏み、カリナンのことを暴こうとするような、心の奥まで覗き込もうとするような視線。

 底が深淵のような目を向けられ、カリナンは、小さくなってしまう。

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