閑話休題 ダイナの冒険初心者レクチャー ハラスメントじゃないよ
冒険者レクチャー
これはカリナンが冒険者になると決め、ギルドに迎えられた数日後の話だ。
「これから冒険者のレクチャーを始めるね」
「はい! 宜しくお願いします!」
放課後、冒険者ギルド、ミスリルバレットに呼び出されたカリナンは緊張した面持ちでダイナの話を聞こうとする。
「本当はアイリにやってもらいたいんだけれど一緒に潜るんだからダイナの方がいいでしょうってことで僕が教える事になったんだよね」
「よろしくお願いします」
カリナンはそれで良かった。
迷宮に入ることが多いのはおそらくダイナの方だろう。アイリのこともカリナンは信用しているが、自衛隊に居り、予定が合わない事が多いと思う。
だから、一緒に組んではいる事が多いダイナからレクチャーを受けたいと思っていた。
だがダイナは生暖かい笑みを浮かべて困惑していた。
話そうか話すまいかと悩んでいる。
「?」
その意味が分からずカリナンは小首を傾げる。
その仕草を見たダイナは、可愛らしく思うと共に迷っている場合では無いな、と思い話し始める。
「それじゃまず装備の話からしようか」
「はい!」
カリナンは背筋を伸ばし、一言も聞き逃すまいと傾聴する。
「それで一つ答えて欲しいことがあるんだけど」
「何でしょう?」
するとダイナから予想外の質問が出てきた。
「カリナンの体重は何キロ?」
尋ねられて香里奈は目を白黒させる。
「……なっ! なんていうこと聞くんですか!」
質問の内容を理解すると香里奈は大声を上げて抗議する。
「どうして僕の、たっ、体重が必要なんですか」
カリナンも年頃の娘であり体重の話は非常にデリケートだ。
面と向かって聞くなどデリカシーがない。
だが、ダイナは冷静に説明する。
「何を装備するか決めるのに、重要なんだよ」
「どうして体重の話になってくるんですか!」
「装備する小銃は体重の7%から8%程度の重量が一番いいんだよ。もちろん 軽い方がいいけれど軽すぎると銃の反動で照準がブレて命中しない」
「本当ですか?」
「信じないのなら、下の射撃場で体験しようか」
ギルドは地下にあるが、バーの下に更に倉庫と武器庫と射撃場がある。
流石に一〇メートル程度の距離しかないが試し打ちするには十分だ。
ダイナは武器庫から武器を借りたL85を渡した。
「どう?」
「重いです」
「四キロ近くあるからね」
英国面の銃とか、銃剣の柄とか、大英帝国の棍棒とか、白兵戦の王者とか、勲章製造機とか、色々言われている銃だが、今回は5.56ミリ弾を使う中で一番重いので選んだ。
色々と追加パーツが加わっているので更に重い。
「じゃあ、一寸撃ってみて」
「は、はい」
カリナンは言われたとおり撃った。
「どう?」
「重くて腕で保持するのが難しいです」
「だろうね、じゃあ次いこうか」
そういってダイナはM4カービンを渡す。
「凄く軽い銃ですね」
「重量が三キロを切るからね」
弾倉を小さめの十発にしていることもあるが、元から2.5キロ位の重量しかない。
現代の自動小銃の中で一番軽いと思われる。
「じゃあ撃ってみて」
「はい」
カリナンは再び銃を構えて撃った。
「うっ」
だが、撃った瞬間カリナンは顔をしかめた。
「大丈夫?」
「肩が、凄く痛いです」
「軽いから銃の重量が弾の反動を吸収しきれず肩を強く叩くんだ」
違う銃だが同じ5.56ミリNATO弾を使っているので発砲の反動はほぼ同じだ。
多少銃身の長さに違いはあるが、一番大きい違いは重量だ。
「移動時は軽い方が良いけど、撃つときは重い方が良い。この辺は好みになるけど、銃の重量が体重の何パーセントになるかは選ぶ基準の一つになるから。これで痛いようなら少し重い銃を選べば良いし、腕が疲れるなら軽いのにすれば良い」
「分かりました。けど、軽い方でも銃が安定しないような」
「そういう時は脇と胸の間にストックを挟んで 安定させるんだ。安定するよ」
「うっ」
自分の右脇を指すダイナを見てカリナンは顔を赤くする。
男子から視点を集めまくっている自分の胸にコンプレックスを抱いている ガリナンは胸を使えると言われて嫌な気分になる。
ダイナとしては、熊打の女猟師の話を元に解決策を提示してあげたのだが、アイリと同じような反応、視線を逸らされてしまいショックだ。
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