第八話 エピローグ

「何とか終わったな」


 学校の教室でダイナは呟いた。

 昨日、会談が終わりエリザベート警護の任務が終わり、解放された。

 色々あったが、エリザベートは無事だし、スケジュールが遅れたとはいえ、会談は無事に成功。

 エリザベートの叔父を殺うことになったが黒幕だったので致し方ないし、エリザベート本人も理解している。

 事は報告したし、アイリの証言もあり、上層部に事情は着実に伝わったので大事にはならなかった。

 会談は無事に終了。

 人間にも吸血鬼にもメリットのある内容の協定を結ぶことが出来たため、双方とも満足だ。

 会談が終わると後任者に引き継ぎを行いダイナ達は報酬を貰って去った。

 懐かれていた、カリナンは別れる時、さみしそうだったが、仕事では仕方の無いことだ。

 一方のダイナは厄介なことが終わった事に安堵した。

 だがそれはつかの間のことだった。


「おーい、皆お知らせだ。転校生が来るぞ」


 担任の知らせにダイナは嫌な予感がした。

 新しい町である新門市は転入が多く、突然の親の転勤で、転校生が入ってくることが多い。

 しかし、凄く嫌な予感がした。


「しかも、特別な人だ。仲良くな」


 嫌な予感は確信に変わる。

 ドアが開くと、そこには学校の制服を身につけた、昨日別れたばかりのエリザベートがいた。


「異世界からの留学生のエリザベートさんだ。交換留学でやって来た。仲良くするんだぞ」

「エリザベートです。皆さんよろしくお願いします」


 丁寧な挨拶をするエリザベートを見てダイナは驚きで白目を剥いた。


「席は、木戸の隣が空いているな。そこに座ってくれ」

「はい」


 担任が指定してエリザベートはダイナに近づく。


「よろしくね。木戸さん」

「どういうこと?」


 ダイナは引きつった顔で尋ねる。

 タダの留学ではないし、自分の暮らすにやって来たのだから絶対に何か裏がある。


「今後、門を通じた交流が盛んになるでしょう。一般の企業などと取引することや、新門市に住むこともあるでしょう」

「確かに」

「その時、どのような事が起きるか確かめておく必要があるのです。テストケースとして私が留学することになりました」

「テストケースって、トラブルが起きたら……」


 そこまで言ってダイナは気がついた。

 前例のない事をするときはトラブルが起きる。その解決をする人間が近くに必要。

 このクラスで一番異世界を知っているのはダイナであり、トラブルを解決する事になってしまう


「という訳で、これからよろしくお願いします」

「大人しくして欲しいんだが」

「あれ? ダイナ、転校生と知り合い?」


 麻衣が話しかけてきた。

 調査を依頼したが、トラブルを避けるため、麻衣が標的にならないよう顔を合わせては居なかった。


「ねえねえ、紹介してよ。異世界の人と会うの初めてなんだ。あたし、麻衣よ。よろしく~」

「よろしく、麻衣さん。今日からお世話になります」

「うわあ、メッチャ肌綺麗。化粧とかしている?」

「いいえ、していませんよ」

「地でこれ! 色々やったらもっと綺麗になりそうじゃん! ネイルとかする?」

「是非してみたいわ」

「エリザベートが転校してきたって本当!」


 突然教室のドアが開き、カリナンが駆け込んできた。


「カリナン」

「エリザベート」


 互いに名を呼び合うと二人は駆け寄り抱きしめ合った。


「会いたかったよ」

「私も会いたかったわ」


 まるで長年の友人、いや姉妹のように熱烈なハグをしている。

 学校一の巨乳一年生と異世界から来た美少女吸血鬼にクラスの全員が注目する。


「そういうわけだから、よろしくねダイナ」


 そして気軽に声をかけられたダイナに注目が集まった。

 穏やかに静かに学校では過ごしたいというダイナの願いはここに打ち砕かれた。


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