パクリか? 魂の現界顕現だ
「よく言ったなアイリ!」
路地裏からダイナの響くと共によってたかっていた、グールが吹き飛ばされ、路地に転がってくる。
先ほどとは違い、グールが苦しみながらもがいていた。
あとからずぶ濡れになったダイナが現れ、苦しむグールにトドメを刺す。
「聞いたかカリナン。鼻血を垂れ流しながら、雲霞の如きグールを相手に、かかってこい? 相手になってやる? これこそ、これこそ冒険者だ。そんな冒険者を倒させはしない」
「いい気になるな人間」
「喧しいぞ吸血鬼!」
叫ぶブラドにダイナは吠える。
そして、左手に持った銃身の太い銃を振りかざし先端から泡を勢いよく放出する。
「くっ」
ブラドは避けたが、アイリを囲んでいたグールは避けられず泡を食らう。
「ぎゃああああっっっ」
泡に触れたグールは悲鳴を上げる。
振り払おうとするが泡が身体にこびりつき、振り払うことが出来ない。
「携行型消化器を改造し聖水を含んだ水を泡にして放出する小型銃だ。少量の聖水でも泡となってこびりつくから、大勢のグール相手でも効くぞ」
そう言ってグールに近づき、苦しむグールに埋め込まれた核を撃ち抜き始末する。
「警護の使命の前に立ち塞がるなど、依頼達成を阻もうとするなど、許しておけるか! お前らは豚のような悲鳴を上げるのではなく、藁のように倒れるのだ。さあ来いよ吸血鬼。相手になってやるよ」
ダイナは再び銃を構え発砲する。
ブラドに命中するが、、ブラドは構わず接近し、ダイナに迫る。
一方のダイナモ銀製の鉈刀を取り出し、迎え撃ち、両者は切り結ぶ。
「御伽草子にかぶれただけの弱っちい人間が、芝居がかった動きだけでそんなことで勝てると思ってるのか」
「ああ確かにあの作品の影響を受けてるよ。だが、それがどうした」
「何?」
「あの作品の台詞、動き、ポーズには確かに影響を受けている。だが俺たちを突き動かし戦わせているのは俺たちの意志だ」
ブラドを睨み付けながらダイナは言う。
「ゲートが開く前から何事にも抑圧されて惨めな思いをしてきた俺たちは戦う力を得た時、明確な敵がお前達吸血鬼が出てきた時、あの作品を思い出して、キャラのように立ち上がり同じように戦った。俺たちの意思が魂があの先に共感し共鳴し突き動かしているんだ」
ダイナは語り続けた。
「あの作品を媒介として、あのシーンが銃身を作り、台詞が炸薬となり、動きがハンマーとなって飛び出した。だが、引き金を引いたのは俺たちの魂、戦意だ」
そこで深く呼吸してダイナは一気にまくし立てる。
「俺たちの魂が意思が現実世界に召喚され突き動かしているんだよ。傍目から見てパクリに見えるだろう。だが俺たちの意志が、魂が、お前たちと戦おうとしてるのは事実だ。言動が作品のパクリだとしても俺たちの戦意までパクリだということにはならない。作品に共鳴したとはいえ、俺たちの戦意が紛いものであることはない」
「口ではどうとでも言える」
「その通りだ。口先でごまかすつもりはない。俺たちの戦意がどういうものか、戦って教えてやるよ。さあ来いよ化け物ども。俺が、人間が、戦ってやるよ」
ダイナが一歩前へ踏み出すとヴラドは後方へ飛び退いた。
「!」
「どうした吸血鬼」
後ろに飛び退いたブラドを見てダイナは尋ねた。
「人間が強いのか。前への進み方を、戦い方を、忘れたのか」
「喧しい人間! 八つ裂きにしてくれるわ!」
ダイナに徴発されたブラドは襲いかかる。
激しく戦うダイナとブラド。
人間と吸血鬼では身体能力があきらかに違う。
しかしダイナは一歩も退かなかった。
自らの能力経験技術ひらめきを駆使してブラドと互角以上に戦う。
全身に聖水を含んだ泡を纏わせブラドの攻撃を防ぎ、銃で応戦する。
銃を撃とうと構えるとブラドは銃口から身体を避け、ダイナの懐へ向かう。
聖水に焼かれようと、一発殴って刈り取ろうとした
しかし銃を構えたのはフェイントだった。
懐に入ってくると、鉈刀を取り出しブラドに切りつける。
だが、寸前で気がつきブラドが後ろに退いたため、致命傷には至らなかった。
更に、ダイナも、退くときに一撃を食らい、ダメージを受ける。
「ぐはっ」
「ぐおっ」
両者とも吹き飛び、重傷を負う。
「傷ついているようだな。もうお終いのようだが人間」
「黙れ吸血鬼っ!」
空気が抜ける音を奏でつつもダイナは叫ぶ。
「あばらが、いかれただけだ! さあかかってこい吸血鬼相手になってやるよ。それとも怖いのか! ハリー……ハリハッ! ハリハリハリーッ! ああ、怖いのか、一人で戦えず、身内を生け贄に策を弄する程だからな」
「こ、この人間風情がっ!」
ダイナの挑発にブラドは前に進み激突しようとした。
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