セーフハウス
「完全に情報漏ね。外務省が、交渉を優位に進めるために贈り物攻勢を行ったせいよ」
万が一襲撃されたときのために逃げ込むよう設置しておいたセーフハウス、タワマンの一室へダイナ達は逃げ込んだ。
セキュリティが完備しており、人の出入りは住人のみなのでホテルより安全だと判断して逃げ込んだ。
部屋に突くとアイリは本部へ報告し情報収集を行い、襲撃された原因を突き止めた。
不機嫌なエリザベートの機嫌を取るために外務省が接待漬け、贈り物攻めを行ったが、不用意に住所を教えたために洩れたようだ。
「それで、今日も会談がある予定だろ?」
隣の寝室で寝ているエリザベートの予定を尋ねた。
襲撃されたのがショックだったのか、セーフハウスにたどり着くなり寝込み、翌朝まで眠ったままだった。
「中止よ。万が一、会談場所が襲撃されたら手のうちようがないし、危険だから」
「確かに」
吸血鬼の身体能力ならある程度、対応出来るだろうが、人間である日本側交渉者や護衛を守るのは難しい。
「じゃあ、今日は一日休むことになるのかい」
「ええ、そうね。そこに出ても危険だろうし」
「対象もあんなことがあったら今日は一日じっとしているだろう」
襲われて意気消沈しているようだったので、今日一日は休みだとダイナは考えた。
だが、突然エリザベートの寝室の扉が開いた。
「どうしました?」
ネグリジェ姿のエリザベート姿を見せないようダイナの目を覆いながらアイリは尋ねた。
「……今日の会談が中止になったのなら、休みね。買い物に行くわ」
「危険です。また襲撃される危険が」
「その時は……またあなたたちが守ってくれるんでしょう」
三人を睨み付けるように目に力を入れながらエリザベートは言う。
「しかし、予定には」
「空き時間とかで日本の街を見る予定でしょう」
吸血鬼と交流を図るため、視察名目で買い物に出ることが予定されていた。
「ですが」
「行きたいの。それとも行動を制限するつもり?」
警護は対象の求め、行動を可能な限り制限しないように行うのが原則だ。
買い物でも一応大丈夫なはずだ。
「しかし襲撃の後で大丈夫ですか?」
襲撃の後寝込んでしまったエリザベートをアイリが気遣って言う。
体調が万全でないのに、街を歩いて再び悪化したら、今後の会談に差し支えがある。
「平気と言っているでしょう。準備をして」
「……分かりました」
強気のエリザベートにアイリは渋々、承諾した。
「ですがその前にお着替えを」
「え?」
アイリに言われて、エリザベートは自分の姿を見てようやくネグリジェ姿である事に気がついた。
「分かったわ。すぐに着替えるから。あなた、ええと」
「カリナンです」
「そうね。カリナン、着替えを手伝って」
「は、はい」
戸惑いながらもカリナンはエリザベートの着替えを手伝いに寝室に向かって行く。
「あたしが着替えたらすぐに出発よ」
「分かりました」
アイリは恭しく頭を下げた。
「けど、大丈夫なの?」
「ご心配なく、出かける準備は整っています」
元々買い物や街の視察を予定していたため、具体的なプランは用意されている。
移動手段についても、この後の会談を想定して、最悪、この部屋が襲撃された時の逃走手段として、車を確保しており問題は無かった。
「なら、大丈夫ね。けど、大丈夫なの?」
「何がですか?」
「あなたが抱えている男、死にかけているけど」
「え?」
エリザベートに言われてアイリが自分の胸元を見るといつの間にかダイナを両腕で抱え込みヘッドロックをかけており、青白くなっていた。
「うあっダイナ」
アイリは慌ててソファーにダイナを寝かせて介抱する。
「着替えが終わるまでに準備を整えてね」
そう言ってエリザベートは寝室へ戻っていった。
カリナンはダイナの事が心配だったが護衛対象であるエリザベートを優先するため後ろ髪を引かれる思いで、背を向け、手伝うために寝室に入りドアを閉めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます