ギルドに迎えられたカリナンと麻衣
「たっだいまーっ」
カリナンの元気な声がギルド・ミスリルバレットの中に響いた。
「おう、二人とも無事に回収できたようだな」
明るい声でマスターのエイブルが迎える。
「うん! 回収所の人が、こんなに沢山回収したな、って褒めてくれていたよ」
嬉しそうに戦果をカリナンは報告した。
ダンジョンのドロップ品、特にモンスターの部位などは戦果報告の意味も在り行政に持っていく必要がある。
しかし、都心部に持ち込むのは、人が多すぎるため苦情が行きやすく、郊外に回収所がありそこで引き取って貰う。
最近は冒険者の活動が増えて都心部のダンジョンは大分減ったが、郊外は多く、回収所は盛況だ。幾人もの冒険者がドロップ品を置いていくのだが、たった二人で大量に持ち込むことは少なく驚かれたようだ。
「回収所の人に驚かれるとは大量のモンスターがいたようだな。よく倒したな」
「えへへ、クレイモアで一網打尽だったし、ダイナが漫画みたいに手榴弾を投げ飛ばしてストーンゴーレムを吹き飛ばしたのが凄かったよ。僕感動しちゃった」
カリナンが興奮気味にその日の探索の様子をエイブルに伝える。
最初は胸の大きいだけの僕っ子かと思ったが、活動的で明るく元気で、すぐにギルドにも打ち解けた。
人なつっこい性格もあってギルドのメンバーにもすぐに打ち解けている。
危険なダンジョンに入るギルドのメンバーはどうしても緊張で顔がごつくなったり、引きつったりして人相が悪くなる。
だがそんな連中に対してもカリナンは臆せず話しかけていった。
普段、明るい女の子と話す機会が無いメンバーは最初こそ驚き緊張したが、ダンジョンへの入り方のコツとか武勇伝をカリナンに聞かれ、気前よく話し始めた。
元々、閉鎖された空間へ入っていくため、人との交流が少ないこともあり、少し大げさにリアクションをするカリナンと話すのは一種の清涼剤となり、すぐに打ち解けた。
「中々良い子だな」
ギルドメンバーと話すカリナンを見てエイブルはダイナに言う。
最初はダイナが弟子をとる、というので驚いたが、ダイナより若い素人の現役女子高生でびっくりした。
あれほど他人との関わり合いを持ちたくなさそうだったのに、心境の変化を見てエイブルはダイナの成長を感じた。
戦時中から一緒にいただけにしかも少年のため心配していたのだが、無事に成長してくれたようで安堵した。
「ああ、言うことを聞いてくれて安堵しているよ」
最初こそ危険だと思って遠ざけようとしていたが、決めたら退かない無鉄砲なところがカリナンにはあり、危なっかしいので連れて行くことにした。
ただ、素直な性格で物覚えも良いため、どんどんダンジョン攻略のノウハウを吸収していき、ダイナの本気の動きにも付いて行けるまでになっていた。
「良い冒険者になれるんじゃないか」
「そうだと良いんだけど」
話していると、ギルドのドアが開いた。
「ヤッホー、ダイナ」
入ってきたのは麻衣だった。
ダンジョンに連れて行けと五月蠅いので時折、ギルドで射撃演習やらテクニックやらを教えている。
「あたしの情報は確かだったでしょう」
「ああ、危なかったよ」
だが、一番の理由は、ご近所の情報網を使ったダンジョンの発見だった。
冒険者とはいえダンジョンを発見できなければ、潜ることは出来ない。
町中を散歩がてら見回るが、中々発見できない。
しかし、麻衣は、陽キャなギャルらしく高いコミュニケーション能力で保護者を中心に情報を聞き取り、モンスターの発見場所や異常を精査してダンジョンの位置を推測して伝えていた。
その精度はダイナがコツを教えるごとに高まってゆき、今では百発百中だ。
ギルドでもダンジョンの位置を教えてくれる麻衣は貴重な情報源でありギルドに入る事を今では許している。
「ねえねえ、今回のダンジョンはどうだった」
麻衣はダイナに近づいてぐいぐい聞いてきた。
「ああ、危うくモンスターで溢れるところだった」
ただダンジョンの外から見るだけで内部の情報はさすがに手にできない。
かつて不用意に同級生とダンジョンに潜って仲間を失っているだけに、ダンジョンの危険を良く知っている。それでもダンジョンを減らしたいという思いは強く、こうやってダンジョン攻略を手伝っていた。
「それで、どうしてここに来たんだ?」
「私が呼んだのよ」
ダイナの疑問に答えたのは再び開いたドアから入ってきたアイリだった。
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