第八話 ボディーガード

ダイナとカリナン

「やっぱりモンスターハウスかよ」


 ファイバースコープで物陰からダンジョンの一室を探っていたダイナは、ウンザリしたように言う。

 中は多種多様なモンスターが蠢き、唸っている。

 普段ならひきかえす、あるいは依頼された時点で断っているような案件だ。

 だが、断れない事情があった。


「その分、大量にゲットできますね」


 ウキウキしながら両手を握りしめ元から大きい胸を弾ませて小神香理楠が言う。

 両親をモンスターに襲われ亡くしたため、家を維持する為に金がいるので張り切っている。

 モンスターを退治すると補助金や、部位によっては買い取り価格が高くなるため、非常に実入りが良いのだ。


「そうだね」


 元々ソロで活動していたため、モンスターが多いと回収できず放置する事も多い。

 だが、二人に増えたので出来ない事はない。


「やるか」


 ダイナは、掃討を決めると準備を始めた。

 小銃に付けたグレネードに弾を装填する。

 カリナンも同じように小銃の弾を確認し手榴弾の安全バーを握りピンを抜いて準備を行う。


「始めるよ」

「はい」


 先ずはダイナは動き出した。

 グレネードを部屋に放ちモンスターを少しでも減らしていく。

 ダイナの攻撃に気がついた。モンスター達が入り口に殺到してくる。


「手榴弾!」

「はい!」


 ダイナが小銃で援護する中、カリナンが手榴弾を投げた。

 モンスターの真ん中で爆発し数を減らしていく。


「後退!」


 モンスターが怯んだところで後ろに向かって走っていく。狭い通路を駆け抜け曲がり角へ入り込む。


「援護します!」

「おう!」


 カリナンが小銃を突き出し、モンスターに牽制攻撃を行う。

 その間にダイナは、彼女の後ろで準備を行っている。

 モンスター達はカリナンの小銃攻撃に怯まず数を頼みに突進を続けてくる。


「終わった! 離れろ!」


 ダイナの声でカリナンは小銃を引っ込めダイナの後ろに隠れる。

 同時にダイナはレバーを三、四回握り、点火する。

 クレイモア――指向性対人地雷が炸裂し、モンスター達にボールベアリングの雨を浴びせる。


「やったか」


 ダイナは通路の中を見る。

 正面のモンスターはあらかた吹き飛んでいたが後ろのモンスターは無傷だった。


「ストーンゴーレムか」


 石で出来たゴーレムで以外と堅く小銃弾でも効きにくい。

 大量に撃ち込めば何とかなるが、カリナンと二人で持ってきた弾薬を足し合わせても足りない。


「仕方ない。援護してくれ」

「は、はい!」


 カリナンはマガジン交換を終えた小銃を構えた。言われなくても出来るだけ自分で交換するようダイナに教わっていた。

 ストーンゴーレムとその背後のモンスターに牽制射撃を行う。だがスト-んゴーレムは小銃弾にびくともせず、やってくる。

 その後ろから多数のモンスターが迫ってくるのを感じていた。


「よし、終わり」


 ダイナは自分の爆パックからお目当てのものを見つけ出し準備を整えた。


「下がれ!」


 カリナンを下がらせると、取り出した品物から伸びる布を掴み振り回し始める。

 十分に回転を与えると、ゴーレムに向かって布を離して投げ付ける。

 物体は一直線に飛び出し、ゴーレムの額に命中。大爆発を起こした。

 次の瞬間にはゴーレムの身体が大きく抉られ、バラバラになって倒れた。


「よし」

「あの、爆薬はあまり意味がないと僕は教わったんですけど」


 カリナンの言っていることは本当だ。

 表面が堅いものに爆薬を貼り付けても爆発は表面から試算するだけで内部方向へ向かうことはない。

 ダメージを与えるには大量の爆薬が必要だ。


「ああ、だが、一点に爆圧を向ける成形炸薬弾頭なら話は別だ」


 成形炸薬とは爆薬に円錐状の窪みを付けて、爆風が一点に集まるように作られた爆薬だ。

 通常より威力が高く、岩盤に穴を穿つのに使われる。

 武器でも戦車の装甲に穴を開けるなどの使い道があるのだ。

 その中には、歩兵が放つ対戦車手榴弾さえ開発されていた。


「こういうときのために購入しておいて良かった」


 こうした珍兵器好きの人間がいて作っている。

 ネタだったが、異世界と門が繋がりモンスターと対戦する事になって活用出来る場が出来たのは皮肉だった。


「さて、残りのモンスターをかたづけるとするか」

「はい」


 ダイナとカリナンは通路を出ると残ったモンスターに向かって小銃射撃を浴びせた。

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