アイリの指示
「って言ったけど、よかったのかしら」
ダイナの事は、好ましく思っている。
戦争の時、共に戦い、行動したのにお互いをに悪いとは思っていない。
「軽すぎたかしら」
なのにキス程度で済ませて良かったのかアイリは不安だ。
もう少し上を狙ったほうが効果があったように思える。
ダイナにかけた言葉が正しかったのかどうか、悩んで悶々としているとドラゴンがブレスを放つ音が聞こえてきた。
「来たわ、準備して」
地雷処理車の隊員に伝えた。
ドラゴンを待ち伏せするためアイリは、地雷処理車と共に予め駐屯地から離れた場所、決めておいた場所に布陣し、偽装網を被せて潜んでいた。
操作は処理車の隊員に任せ、アイリは全体の指揮とタイミングの指示を行う。
そのためアイリはドラゴンの動きに神経を尖らせていた。
「結構派手に燃やしているわね」
ドラゴンが駐屯地にブレスを放っているのが見えた。
昨夜の反撃に苛立っているのだろう。
前回より攻撃に勢いがあった。
「早く来なさいよ」
アイリは待ち伏せを続ける。
その時、囮になるダイナ達が飛び出してきた。
ドラゴンがおびき寄せられ攻撃を仕掛ける。
「って、引きつけすぎよ!」
ダイナが運転するトラックの動きと近くに着弾したブレスを見て思わずアイリ声を出す。
無茶をするな、と言ったのに、ダイナはドラゴンの攻撃を自分に引き寄せている。
しかも煽るようにトラックを蛇行させて走らせ、引きつけておいて寸前で回避する動きだ。
あんな動きをされたらドラゴンでなくても苛立って攻撃するだろう。
その分、ドラゴンに狙われやすい。
実際、ドラゴンは大きな戦車ではなく、小バエのように動き回るダイナのトラックを狙っている。
囮としては良いがやり過ぎだ。見ているアイリの方がハラハラする。
「こっちに来なさいよ」
ドラゴンの攻撃を避けまくっていて全然アイリの方向へ来ない。
ダイナとしては囮役として十分に引きつけるため、ドラゴンを苛立たせているように運転してるのだがアイリもその動きを見て苛立っている。
その点で成功だが、焦れったく感じるアイリだ。
「! 来たわ! 発射用意! 偽装網解除準備!」
ダイナのトラックが向かってきているのを見てアイリは隊員に命じる。
地雷処理車を見えないように隠している偽装網がロケット弾に絡まないよう外させる。
だが、アイリが偽装網を外そうとしたとき、ドラゴンが彼女に向かってブレスを放ってきた。
「きゃあっ」
幸いドラゴンが牽制の為に手前側にブレスを落としたために直撃は避けられた。
だが、ブレスの爆風がアイリ達を襲う。
留め金を外した直後だったため、偽装網は爆風に煽られ、後ろに吹き飛んだ。
「凄いわね」
激しい爆風のため一瞬で偽装網が外れる。
だがお陰で外す手間が省けた。
振り返るとドラゴンが迫ってくる。
アイリ達地雷処理車、いや予想外の異物が現れた事で急上昇しようとしている。
此方への攻撃の心配はない。
ただ近づいてくるトラックでハンドルを握りダイナは、偽装網が吹き飛ぶところを見て不安で顔を歪めている。
あれだけの爆風で勢いよく煽られたら偽装網でも凶器となる。
ダイナはアイリにケガがないか心配していた。
アイリもそれを理解し、ダイナに笑みを浮かべ安心させる。
そして、命じた。
「発射用意!」
アイリの命令で地雷処理車のランチャーが上昇する。
ランチャーが斜め上空へ向けられると、アイリはドラゴンの動きを見定め、タイミングを計った。
「発射!」
ロケットが発射された。
決められたとおりタイミングをずらして日本の爆索を引っ張るロケット弾が空へ放たれる。
四本打ち上げられて、内二本がドラゴンの身体に巻き付いた。
「点火!」
すぐさまアイリは点火を命令する。
一本二六個、合計五二個の爆薬が一斉点火しドラゴンの身体を爆圧で痛めつける。
上昇するため翼を広げていたこともあり、膜で出来たドラゴンの翼には大きな穴が空き揚力を失い地面に落ちていった。
「やった!」
地面に墜落し、派手な土煙を上げたのを見てアイリ、そして地雷処理車の面々は歓声を上げた。
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