復讐を目論むドラゴン
グオオオオッッッッッ
夜明けと正午の中間頃、ドラゴンの咆哮が大地に木霊する。
ようやく傷が癒えたことをドラゴンは喜んだ。
これで自分を傷つけたこしゃくな人間共を食い尽くすことが出来る。
そう思えば、雄叫びの一つも上げたくなる。
傷つけた人間共をブレスで丸焼きにするのも良いが、喰らい尽くして自分の血肉にしたかった。
だが、あの火を放ち固い鉄を放ってくる鉄の塊や勇者による攻撃に警戒しなければならない。
アレは最強の自分でさえ一撃で葬る強敵だ。
だが、幸い空を飛ぶことは出来ないようだ。
昨日片割れを一つ燃やし尽くしたように、遙かなる高みからブレスを放ち焼き尽くせば良い。
ドラゴンは早速ねぐらから飛び立つと、自分を傷つけた人間共の場所へ向かった。
鉄のトゲ付き紐で囲まれた場所に籠もっているが、堅い鱗を貫くほどではないし、上空からブレスを浴びせれば問題ない。
勇者とかいう力を持ったのもこの高さまでやってくることは出来ない。
悠然と空を飛び、見下すように接近すると、ドラゴンである自分を指差し、右往左往している。
自分の姿を見て慌てふためいているようだ。
その中に、あの鉄の塊や、勇者とおぼしき人影もいたが、手出し出来ないでいる。
剣を振り降りてくるよう叫んでいるようだが、届かない。
鉄の塊が、あの堅く速い弾を撃ち出してきたが、当然命中しない。
ドラゴンは悠然とブレスを二発ほど放ち、落としてやると鉄の塊は逃げ始めた。
勇者も、剣を振っていたが、人間に抱えられて馬のいない馬車に乗せられ、逃げていった。
グオオオオッッッッッ
前回の雪辱が果たせてドラゴンは歓喜した。
やはり、自分は最強なのだと確認した。
確かに堅い鱗も貫かれることはあるが、空を飛びブレスを放てる自分は、最強なのだと思う。
あとは戦利品を、連中が残していった、あの美味い食料を思う存分喰らって勝利をかみしめようとした。
……
だが、その甘美な思いの前に、フツフツと前回の屈辱、傷つけられた身体とプライドの痛みをドラゴンは思い出す。
連中を焼き尽くさなければ、この思いは晴れない。やはり当初の予定通り、連中を食い尽くそうとドラゴンは決めた。
ドラゴンは逃げていく、鉄の塊や馬のいない馬車を追いかけた。
彼らの前方にブレスを吐き、移動を邪魔する。
しかし、連中は巧みに回避し、ブレスの直撃を避ける。
このままいたぶるのも良いが、避けられるのは苛立つ。
それにブレスの回数も有限だ。
しかも前の方には森もある。
森の中に入り込んだら、上空から見つけ出すのは難しい。森の木々は燃えにくいのだ。
ブレスを放つだけ損だ。
ドラゴンは森に逃げ込む前に勝負を決めようと考えた。
森の入り口周辺にブレスを吐き、連中が逃げ込めないようにする。
針路をずらし、平原を逃げ回る連中に向かい上空から低空へ急降下して接近する。
幾ら、鉄の塊も攻撃力があってもこのスピードに追いつけないし、狙いを定めることも出来ない。
勇者の跳躍が脅威だが、奴の乗った馬のいない馬車を避けたり、遠巻きに攻撃すれば良い。
勇者の乗ったトラックを見つけ、追いかける。
狙いを定めブレスを吐く。
しかし、命中寸前で曲がり回避した。
勇者の攻撃を避けるべく一旦上空へ上昇し、馬車の位置を確認するともう一度狙いを定め急降下して接近し攻撃する。
だが、また急に曲がって外した。
右に左に逃げ、自分のブレスを避ける馬車に苛立ちドラゴンは更に接近し、至近距離からブレスを放って仕留めようと考える。
しかも都合が良い事に、地面から少し盛り上がった瘤があり、動きを制限出来そうな場所を見つけた。
そこに追い込んで左右に逃げられないところを攻撃すれば良い。
ドラゴンは小さなブレスを二発、瘤の手前側、馬車の横あたりに放った。
最後に特大の奴を瘤の前の方に放つためだ。
だが、小さいブレスが着弾したとき想定外の事が起きた。
爆発で起きた風で瘤から網が外れ、鉄の塊に似た物体が現れた。いや、瘤に偽装していたのだ。
攻撃して破壊しても良いが嫌な予感がして、ドラゴンは逃げようと上空へ急上昇する。
しかし、遅かった。
現れた二台の上空を通過するとき、その二台はそれぞれドラゴンへ向かって、二本のロープを打ちだた。
四本のロープが通過して上昇していくドラゴンの翼に絡み付く。
急旋回で振りほどこうとしたとき、そのロープが爆発した。
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