被害とこれから
「ああっ避けられた!」
渾身の一撃を、絶好の機会を外されてライリーは悔しがり上空へ逃げるドラゴンを睨み付けた。
「ライリーとは相性が悪すぎるんだよな」
ライリーが悔しがるのを見てダイナは、顔をしかめながら言う。
勇者であるがライリーは飛べない。
物語なら飛行魔法とか使えるのだろうが、残念ながらライリーは使えない。
そのため空を飛ぶモンスター相手には相性が悪い。
「降りてこい! 卑怯者!」
上空高く飛ぶドラゴンにライリーは文句を言うが勿論ドラゴンが聞くわけがない。
それどころかライリーが飛べないことを悟るや、反撃されない上空からドラゴンブレスをばらまいた。
「逃げろ!」
ダイナはドラゴンに文句を言うライリーを抱え上げ、コンクリート製の待避壕へ逃げる。
炎の熱気が出入り口から入ってくるが、直撃は避けられ、二人は無事だった。
更に数発ブレスを吐き出した後、ドラゴンは去って行った。
「どうしたんだろう」
「怪我しただろう。治すために引き返したんだ」
ドラゴンクラスになると自己再生能力、リジェネを持っているようなモンスターも出てくる。
再生能力は限られ時間はかかるが、腹を割かれた程度なら正午までには治るだろう。
「それにブレスの燃料がなくなったんだろう」
いくら巨大なドラゴンでも無尽蔵に燃料を吐き出せるわけではない。
燃料袋の燃料がなくなればブレスを吐き出せない。
再び充填するため、身体の脂肪を燃料に変えたりして溜めるための時間を作るために逃げたのだ。
「また来るだろうな」
準備が整えばドラゴンは再び、やってくるだろう。
集積地にある食料の味を知ってしまったのだ。
餌にあり付こうと、また襲ってくるはずだ。
襲撃が収まると、ダイナは靴を履き、燃やされた衣服の代わりとして予備の方をもらい受け着込むと駐屯地の負傷者の手当に当たった。
アイリも手伝い負傷者を助け出す。
「僕も手伝うよ」
「休んでいろ」
ライリーが言うがダイナは止めさせた。
「でも」
ドラゴンを倒せず、ドラゴンの攻撃で被害者が出てしまったことを勇者として防げなかった罪悪感を感じているようだ。
確かに瓦礫の下などから被害者を助け出すとき、ライリーの力は役に立つ。
だがダイナは許さなかった。
「ドラゴンに対抗出来るのはライリーしかいない。やって来た時、万全の状態で戦ってくれ」
「でも」
「ドラゴンと戦うときライリーだけが頼りなんだ。何とか方法は考えるよ」
「……分かった」
飛んだドラゴン相手に無力だっただけに何とか力になろうと必死だった。
真面目なライリーらしい考えだが、ドラゴンに対抗出来るのはライリーしかいない。
またドラゴンがやって来た時、仕留められる可能性があるのはライリーだけだ。だからライリーには安いんで万全の状態で臨んで貰いたい。
「しかしどうしたものかな」
負傷者の手当をしながらダイナは考え込んだ。
いくら自分でも空飛ぶドラゴンを何とか出来る訳ではない。
「困った事になったな」
夜明け頃、駐屯地の幹部と話していた田村二尉が戻ってきた。
「被害はどうでした?」
「警備隊の半数がやられ戦車もブレスが直撃した一両が完全破壊された」
装甲は無事だったが主砲が暴発し射撃不能。エンジンも炎が吸気口から入り損傷しているため戦えない。
残り二両だが、対抗策がなければ、二の舞だ。
「後方だったんで防御武器も少ない。何よりどう対応して良いのか」
後方だったのでドラゴンのような大型モンスターを相手にした人間がいないのだろう。
この状況にどう対応して良いのか分からないようだ。
「ダイナ、済まないが作戦会議に参加してくれ」
「自分で良ければ」
現役でないことから会議への参加は控えていたが、呼ばれれば引き受けるしかない。
早速、会議に加わるが、全員顔色が悪かった。
「それで、現状は? 援軍の見込みはありますか?」
「昼過ぎに地上部隊が来るそうだ」
ゴブリンの残党退治で主力が前線に張りついているため到着が遅れているようだ。
ヘリ部隊が一番早いだろうが、搭載量はたかがしれている。
攻撃ヘリが来ても、ドラゴン相手に空中戦を出来るかどうか。
良くて分の良い賭けぐらいにしかならない。
「空自のファントム部隊は?」
「連日の出撃で整備が必要で、こちらもやってこれるのは昼過ぎだそうだ」
ファントムが飛び立てる見込みが立つまで進出を遅らせる気だった。
妥当な判断と言えた。
空を飛ぶドラゴン相手に地上部隊は分が悪すぎる。
しかも戦車並みの防御力を持っている。
「ダイナ、ドラゴンはいつ来ると思う?」
田村二尉の言葉にダイナは慎重に推測し、言葉を選んで答えた。
「ドラゴンの回復によりますが……早ければ、正午前には来るでしょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます