ドラゴン飛来
「なんだ!」
突如起きた爆発音に田村二尉は叫ぶ。
「爆発事故か!」
「いや、事故にしては様子が変だ」
警備隊が忙しく回っているし、爆発音も違う場所で続いている。
ぐおおおおっっっっ
大概の魔物なら仕留められるが帰ってきたのは、大地を震えさせるような大音響、咆哮が物資集積場から響いた。
集められた食料を食べていた下手人が威嚇のために吠えたのだ。
鋭い爪に巨大な翼、堅い鱗に覆われた胴体。
「ドラゴンか!」
巨大なドラゴンが餌、前線への食料を狙ってやって来たようだ。
「警備隊構え! 撃て!」
警備隊がやって来て小銃を構え発砲する。
「よせ! 止めろ!」
ダイナは叫ぶが警備隊は小銃を放つ。
大概のモンスターは小銃で撃ち抜ける。だが、堅い鱗を持つドラゴンでは鱗の表面を滑るだけだ。
ドラゴンは食事の邪魔をされた事で起こり翼を振り風を巻き起こして、警備隊をなぎ倒した。
「うわああっっ」
風に煽られ、彼らは転げ回った。
「離れていろ!」
一〇式に乗り込んだ戦車小隊が出てきた。
ドラゴンに主砲を向け、狙いを定める。
「撃てっ」
三両の戦車が一斉に発砲した。
だが、不穏な気配を感じ取ったドラゴンは素早く射線から逃れる。
砲弾の一部がドラゴンの身体をかすめ、一二〇ミリ砲弾の衝撃波が肉体を削り取ったが、ドラゴンは飛べた。
翼を広げ、上空へ行く。
逃げたかと思ったが違った。
自分を傷つけた戦車に向かい、首を向けると口を開き、ブレスを吐いた。
世界最高レベルの防御、炭素繊維とセラミックをも組み込んだ一〇戦車の装甲はドラゴンのブレスにも耐えた。
だが、高温の炎は容赦なく弱点へ襲いかかる。
主砲の中の砲弾が加熱され暴発、衝撃で射撃不能となる。同軸機銃の弾薬も熱せられて暴発。弾倉にも熱が伝わり爆発して乗員を負傷させた。
これで戦車一両が沈黙。更に一両が炎を受けるも避けて無事だった。
だがドラゴンは戦車の攻撃を避け上空へ逃れ、ブレスをはき続ける。
一〇式戦車は何とか機動力を生かして逃れるが、上空を逃げるドラゴンを捕捉出来ない。
戦車や地上目標を目標に作られたため飛行目標を狙うようには出来ていない。
「喰らえ!」
戦車に乗せられていた91式携帯対地誘導弾を乗員が持ち出しドラゴンに向かって放った。
誘導弾は、ブレスを放った口に反応し追尾しドラゴンの至近で炸裂する。
「やった」
命中したことに歓声を上げる。だがドラゴンは悠々と空を飛んでいた。
対戦車ミサイルさえ時に打ち抜けないドラゴンを装甲のない航空機を破壊するためのミサイルでは威力不足だった。
更に二発を放つが、ドラゴンを捕らえることは出来なかった。
ジェットエンジンの排気熱を標的にする赤外線誘導では、翼で飛ぶドラゴンを見つけ出すことが出来ない。一応カメラによる画像処理で追尾出来るが、ドラゴンのデータは入っていなかった。
ドラゴンは自衛隊が反撃出来ない距離をとると次々にブレスを上空から駐屯地に放った。
集積された物資が、建物が次々と燃やされている。
ドラゴンは巨体を見せつけるように旋回すると、ダイナのいる建物に向かって突進してきた。
「拙い! 逃げろ!」
ダイナは小銃とジャケットと靴を持ち出すと窓から外に逃げた。
アイリも田村二尉も逃げ出す。
ライリーも最初の攻撃で気が付き起きて自分の剣を持ち出した。
「ブレスだ!」
外に出た途端、ドラゴンの口が開き、喉の奥から炎が生み出されるのが見えた。
ドラゴンはそのままダイナに向かって炎を吐いた。
高温の炎がダイナに向かって伸びる。
だが、ブレスが命中する前にライリーが間に割り込んだ。
「はあああああっっっっっ」
裂帛の気合いと共に剣を振り抜くとブレスは二つに裂かれ左右に広がり、ダイナへの直撃は避けられた。
「はっ」
ブレスを断ち切ったライリーは迫ってくるドラゴンに向かって跳躍した。
だが、気が付いたドラゴンは、身体を捻りライリーの攻撃を避ける。
「浅いっ」
間一髪のところで避けられ、ドラゴンの胴体の一部、右の腹部を少し切り裂かれただけでドラゴンは上空へ逃れる。
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