寝る前のお話

「今日はここに泊まる」


 自衛隊の中継地となっている駐屯地にダイナは降りた。

 異世界でも広大な領域を移動する部隊の補給や移動のために各所に駐屯地が設けられている。

 ダイナ達が降りたの駐屯地もその一つで門と前線を繋ぐ役目を果たしている。

 駐屯地内は前線へ輸送する物資を満載したトラックが一杯で活発だったが、部隊は少なかった。

 精々、小隊程度の警備隊と後方へ下がる戦車小隊、それに前線方面へ向かう施設科部隊、復興援助のために派遣された部隊だけだ。

 おかげで基地内は余裕があり三人は広い部屋をあてがって貰えた。


「うわあ広いっ」


 ライリーは大はしゃぎだ。

 流石に男女同室は問題なのでダイナは別の部屋に泊まろうとしたが


「ダイナも一緒に泊まって!」


 と言ってライリーが激しく嫌がった。

 仕方なく、ダイナもライリーと一晩を共にすることになる。

 念のためアイリと田村二尉も一緒に泊まって貰う。

 アイリは戦争中、一緒に行動していたこともあるし、互いにバディだった事もあり、今更気兼ねする必要などない。

 しかし、田村二尉は困るだろう。

 男女同権の名の下、女性が進出している自衛隊でも同じ屋根の下で眠るなど早々ない。

 野戦ならともかく駐屯地で眠るなど、非常識に思えた。

 だが、ダイナとライリーそしてアイリに問題が出ると責任を問われるので指揮官として監視のために同室することになった。

 アイリとライリーは納得し受け入れた。

 むしろライリーは遊び相手が増えたと喜んでいる。

 それでも居心地の悪さ、邪魔者なのではという思いが田村二尉には強く、ダイナに済まないと目で何度も謝る。

 一方のダイナも、こんな困った状況にしてしまって済みません、と目で謝った。


「わはあっ」


 無邪気に笑うライリーはダイナとアイリが用意――自衛隊敷きにきっちりとベッドメイキングしたベッドの上でゴロゴロしている。

 流石に霧吹きがないし乾かす時間もないので、張りはイマイチだが、四隅の皺も規定内の数に収める完璧なメイキングだ。

 それを一秒で崩されてもダイナとアイリは苦笑いするだけだ。


「ねえねえ、一杯お話ししようよ」

「疲れているだろう。明日も早いんだし、早く寝なよ」

「えーやだよ」


 ダイナは早く眠るように言うが一緒に泊まれることが嬉しくてライリーはて興奮していた。


「しょうがないな。じゃあ少しだけだよ」

「やったーっ!」


 ここで無理矢理寝かせても興奮と不満で寝付けないだろうとダイナは判断し、尽きアことにした。

 アイリにライリーを抱き寄せて寝て貰い、その脇にダイナがライリーを挟むように寝転がる。

 そうやって、話を始め。

 話の内容は、三人の最近の話だ。

 互いにバラバラに活動している事もあり、互いの近況に興味津々だ。


「えーっ ゴブリンのいる迷宮を一人で攻略したの!」


 ダイナが最近、攻略した迷宮の話をすると、ライリーは興奮気味に食いついた。


「それだけの腕があるなら一緒に組んでよ」

「レベルの差がありすぎる」


 確かにライリーは一人でも迷宮を攻略できるだろう。

 しかし、ドラゴンのいる迷宮とゴブリンのみの迷宮では攻略難易度が違いすぎる。

 ダイナがライリーと一緒について行ったら、ダイナが潰されるのは目に見えている。


「約束通り今度一緒に冒険に行こうよ」

「でもな」


 ダイナは断ろうとするがライリーが見つめてくる。


「……今度な」

「やったーっ……」


 万歳した途端、ライリーは静かになり寝息を立てた。

 よほど疲れていたのだろう。ダイナの承諾を得ると安堵して眠ってしまった。


「本当に嬉しいようね」


 アイリが手を放し寝かせようとする。

 だが、ライリーが服の袖を掴んでいたためベッドから離れられず、同じ事になっているダイナとそのまま見つめ合う。

 良い雰囲気になったが、田村二尉がいる事を思い出して振り向く。


「ぐーぐー」


 田村二尉は、狸寝入りしているが明らかにこっちに聞き耳を立てている。

 雰囲気も何もないのでそのまま文字通り寝ようとしたが、突如外から爆発音が響き、たたき起こされた。

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