ゴブリン王登場
ダイナの放った銃弾が命中すると的は、一緒にくくりつけられた石の重しと共に落ちて、紐で結ばれた手榴弾の安全ピンを引き抜いた。
枝にくくりつけられた安全バーから外れた手榴弾本体は落下するが地上に落ちない。
丁度、ゴブリンの頭の位置でぶら下がるよう、長さを調節した糸がつけられているからだ。
蓑虫のように落ちてきた手榴弾を見たゴブリンは慌てて、周囲に伏せるが、数カ所で手榴弾が落下したため広い範囲がキルゾーンとなっていた。
しかも地上と違い空中で炸裂したため、通常よりキルゾーンが広く、物陰に隠れても、複数の手榴弾が死角をカバーするためゴブリンは逃れる事が出来なかった。
四方八方から手榴弾の破片を喰らい、三十匹近いゴブリンが一度に全滅した。
「一丁上がり」
ゴブリンを殲滅したのは拠点を作っていたときダイナが仕掛けておいた空中地雷だ。
文字通り空中で爆発するよう、紐で吊されるよう仕掛けた手榴弾だ。
通常は、トラップのように中心部のトリガーに引っかかると一斉に落ちるのだが、今回はタイミングを見計らうためにダイナが狙撃で落とせるように仕掛けていた。
互いに死角をカバーする複数個の手榴弾が一斉爆発するので、伏せても背中に破片を喰らう。
地面に伏せようが物陰に隠れようが逃げることは出来ない。
「さて、連中はどう出てくるかな」
ダイナはそう言って、グレネードを放った。放物線を描いたグレネードは、森から爆煙が上がったのを見て唖然としているホブゴブリンの身体に命中した。
32gの炸薬しか充填されていないがホブゴブリンの上半身を完全に吹き飛ばし、広がった弾片は周囲にいたゴブリンをなぎ払った。
「ビンゴッ!」
久方ぶりにグレネードを爆発させ倒せたことにダイナはご満悦だ。
訳があったとは言え、至近距離で殴打武器のかわりにグレネードを叩き付けてばかりだったから尚更嬉しい。
「連中の動きが止まったな」
田村二尉はミニミを構えながら言う。
予想外のダイナ達の攻撃を前にゴブリン達は攻めあぐねている。
上位種さえ吹き飛ばされているのだ。
下手に接近しすれば、銃撃を受けて全滅するのは分かっているからだ。
「だが、ずっとこのままでいるのも保たないわよ」
銃を構えながらアイリが言った。
数はゴブリンが多いし、弾数も無限にあるわけではない。
攻め込まれたらお終いだ。
「ぐおおおおおっっっっ」
「な、なんだ」
突如響いた大音量に田村二尉が驚く。
ダイナ達は、多少身体を硬直させるが、待ち望んでいたものが来て喜んだ。
「本命のご登場ですよ」
遙か遠く、町の崩れた城壁からゴブリンが、いや、二階建ての家ぐらいの背丈がある巨大なゴブリンが現れた。
「あれがゴブリン王です」
痩せているゴブリンに対してゴブリン王は横幅が広く、相撲取りのような巨体だ。
それでいて動きは滑らかだ。
とても重量があるようには見えず大股でどんどんとこちらに迫ってくる。
「おりゃっ」
田村二尉はミニミを構えて放った。
だが、ゴブリン王は十数発の銃弾を受けてもびくともしなかった。
「何故だ! 腹部に当たったんだぞ」
「フィジカルボディーアーマーです」
「何」
「腹部に付いた分厚い脂肪の層で弾を受け止めているんですよ」
「メタボを銃弾が撃ち抜けないのか」
「脂肪の塊が厚すぎるんですよっ」
いくら小銃弾でも打ち抜ける厚みの限界はある。
脂肪に潜った瞬間、エネルギーを奪われて行き、内臓に到達する前に運動エネルギーが尽きてしまうのだ。
頭部なども分厚い頭蓋骨に阻まれて破壊できない。
だから、慣れている者は、ダイナは、眼球を、分厚い脂肪も骨もなく、奥に脳髄などの神経中枢があり一撃で戦闘不能出来る可能性がある目を狙って攻撃を行う。
だが、ダイナが放った銃弾は、ゴブリン王が持っていた棍棒いや、丸太のようにぶっとい棒を構えて受け止めてしまった。
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