威力偵察 上官にはサプライズ
夜明け近くはゴブリンにとって夕方に近い。
夕飯を食べたくなる時間だ。
そんな時、美味しそうな匂いがすればフラフラとやってくる。
美味しい朝食を作っていれば、やってくるのは必然だ。
ダイナは、そこを狙って銃撃を加えたのだ。
「戦闘! ゴブリン多数接近!」
ダイナとアイリは小銃を取り町からやってくるゴブリンに向かって銃撃を加えていく。
遅れて、田村二尉も小銃を手に取り銃撃を加えていった。
「ダイナ! これも作戦の内か!」
「ええ」
済まなそうにダイナは言った。
「ゴブリンとやり合うなんて聞いてないぞ」
まして少人数で戦うなど戦術としては最低だ。
幾ら最強戦力がいるとはいえ無謀すぎる。
「作戦は偵察と誘導だけのハズ……」
そこまで言って田村二尉は気が付いた。
「……ひょっとしてキャンプ前の準備体操か」
「そうです」
マガジンを交換しながら御代ブートキャンプの事前体操だとダイナは認めた。
「またしても何も聞かされていないのかよ」
刑執行を告げられた死刑囚の様な気分に田村は二尉はなった。
全てダイナと御代隊長が、いや御代が決めたことだろう。
何も知らせずに、行動させるのは何時もの事だ。
「こんなのまだ序の口ですよ」
ブートキャンプの内容を思い出して、生暖かい笑みを浮かべたダイナは言った。
その間にも平原からやってくるゴブリンに対して的確に銃弾を浴びせ仕留めていく。
人数が少なく、弾数も少ない。
弾薬を節約するために、三人は狙撃するように銃撃していく。
全員射撃の腕は良く、的確にヘッドショットを決めてゴブリンを倒して行く。
「ダイナ! ここは危険だ! 後退して、連中を撒こう」
田村二尉にダイナは言った。
ゴブリンは数が多い。
一匹一匹は対処できても囲まれたらお終いだ。
街から次々とゴブリンが現れており、数が多く、このままだと押し切られる。最悪囲まれて前後左右から攻撃される。
囲まれる前にまだ姿が見えない森の中に入りこみゴブリンの追撃から脱出しようとした。
これはゴブリン相手の特別な戦術ではなく、通常の戦術のセオリーだ。
「ダメです」
だがダイナは却下した。
ダイナも数に押し潰される危険を分かっているが、出来ない理由があった。
「あの町の中にゴブリン王がいるかどうか確認が取れていません。確認するようにというのが御代隊長の命令です。連中に損害を強要し、ゴブリン王をおびき出しましょう」
「威力偵察か」
「そうです」
相手の出方を、迎撃方法を見るために実際に攻撃して反応を見て観察するのが威力偵察だ。
「無茶な、威力偵察は対処できる兵力で攻撃するのが基本だろう」
威力偵察は実際に攻撃し、相手が反撃するため、敵の反撃に対処できるだけの兵力が必要になる。
少数で偵察するとはいえ、あまりにも少なすぎると、敵の反撃を受け、大損害、下手をしたら全滅の危険もある。
「こんなの戦争中にはしょっちゅうでしたよ」
「なんちゅう指揮官だ」
「そんな奴ですよ」
ゴブリン相手に、少人数、それも数人で攻撃して連中の反応を見るのは日常茶飯事だった。
時にはダイナ一人で対応させられた事もあった。
頭にくるが、こなしてしまったので更に後々やらされる事となる。
「町のゴブリンが続々と出てきているな」
ある程度撃退する事に成功したが、町の中にいたゴブリンが騒ぎを聞きつけ、続々と出てきた。
「数が多いな。このままだと囲まれるぞ」
「まだゴブリン王が出てきていません。ホブゴブリンとかは出てきていますが」
「いや、結構拙いだろう」
上位種が出てきてしまっては、弾が効かない。
熊やイノシシ並みに耐久力が小銃弾を食らっても突撃してくる事がある。
そのうちの一体が突進してきた。
「クソッ」
田村二尉が銃撃を浴びせるが、腕を盾にして銃弾を受け止め突進してくる。
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